【連載】ちろうのAKB体験記 第18回 ■初めての私信

■初めての私信

私信とは読んで字のごとく、自分に向けての何かしらのメッセージということである。アイドルとヲタが連絡を取り合うことは事実上禁止されているので(その禁を破って罰則を受けたメンバーも少なくない)、通常はメンバーからメールや電話を通して私信をもらうことはない。しかし、メンバーがブログやモバメ(モバイルメール)、現在であればぐぐたすなどで発信したメッセージを、「これはもしかして自分宛のメッセージなのでは!?」と勝手に解釈し「私信」だとするネタ的コミュニケーションが存在するのである。

わかりやすいのは、メンバーにプレゼントしたものがブログで画像付きで紹介されるなどである。「ファンの方にもらいました!」ということもあれば、あえてそういうことを言わないで画像を上げるだけの場合もある。また、自分がプレゼントした服を着ている画像、またプレゼント等がたまたま背景に写りこんでいる場合などもある。そのような時、ヲタは高らかに「私信キターーー!」と宣言しなければならない。そしてヲタ同士で、その私信を受け取った回数を競うのだ。これは立派にゲームとして成立していた。

この小林香菜の生誕公演から1週間ほど経ったとき、ぼくは初めての私信をもらうことになった。それは柱の会(ファンクラブ)限定のブログで、ぼくが生誕公演の時にプレゼントした「香菜しか見えないTシャツ」を自慢するエントリだった。

「これは香菜しか見えないTシャツなんです。かわぃぃ」

そのTシャツは去る2006年11月に日本青年館コンサートでぼくが着用したものと同じデザインだった。その時は手作りだったが、今回の場合はデザインをTシャツ制作会社に送り、17歳の誕生日のお祝いメッセージも入れた特製のTシャツである。しかし生地の質がそれほど良いわけでもなく、値段も大してかかっていない。それでもTシャツであればレッスン着にすることもできる。こんな変わったTシャツを作る人は他にいないと思ったから、そのような反応をもらえることを予想していたとは言え、やはりブログで私信をもらうのはすごく嬉しいことだった。「このTシャツをプレゼントしたのは、俺だぜ!!」と自慢したくなった。しかもそのTシャツはしばらく着用した後は部屋の壁に飾られていて、自撮り画像がブログにUPされるたびにチラチラ写りこんでいた(笑)。(ただこのTシャツに関しては手放しで喜べない事情もあった。まさにこの「香菜しか見えない」というフレーズはぼくが作ったフレーズでもなければ、皆の共有物でもなかったからだ。特定のとあるヲタが発信したものだったから、それをパクったとも言えるのだ。そのようなことを少なくないヲタから言われ反省するとともに、ヲタクの世界は奥が深いなと思ったものだった。)

その後もぼくはハロウィンの時にキーホルダーを送ったり、地元に帰った時に「飛騨のさるぼぼ人形」を買ってきて贈ったりして私信をもらった(こんなところで自慢するのも恥ずかしい話だが!)。いずれも特にお金のかからないネタグッズだったので、逆にこちらがビックリするほどだった。ぼくはこの程度だが、難易度が上がるとネックレスや(中高生が好みそうな)ブランド物のバッグ、財布、服などを贈る人もいた。「最近あの子が着ている服、全部俺があげたやつだよ~」と自慢している人もいた。思えば小林香菜が度々ブログに上げて自慢していたハロプロや他のアイドルのCDやDVDは全て他のとあるヲタへの私信だったのだ!驚いたのは、当時BLTという雑誌でAKB劇場特別版が発行されていて、誕生月ということで表紙を飾った小林香菜が、知り合いのヲタがプレゼントした服を着ていたことだった。私服がそのまま使われるというだけのことで驚くことでもないのだが(笑)、これがもし自分がプレゼントした服だったらとても嬉しいだろうなと思ったものだった。

ちなみに現在、AKBグループでは手紙を除いて一切のプレゼントが禁止されている。ある程度、事務所の規模が大きい多くのアイドルグループにおいてもこのルールがとられている。プレゼントが自由な現場でも、優先的に禁止されるのは、メンバーに対して一切の食べ物と肌に直接触れるもの(シャンプー類、香水、ボディクリーム等)だ。プレゼントを考えているヲタ諸氏は気を付けよう。またあまりにサイズの大きなものや高価なものも禁止されることが多い(かつては20万円もするノートパソコンや、小型の冷蔵庫をプレゼントしているヲタもいた)。

この遊びはAKB48以降のアイドルグループの現場に遊びに行った際にも行った。認知された頃合いで、手紙と一緒に(←これ重要)気の利いたプレゼントを贈れば簡単に私信を受け取ることができるので、アイドルヲタクの楽しみ方として皆さんも挑戦してみてほしい。自分がプレゼントしたものをブログにUPしてもらうのは、自分にしか分からないメッセージを送られているようで、他では味わえない快感である。AKB48登場以降の現場系アイドルヲタクは、認知されて、私信をもらって初めて推していると言えるのだ!(現実的にあまりにも人気がありすぎて難しいメンバーがいることも事実だが。もう少しファンの規模が小さい地下アイドルであれば簡単である。)

(次回に続きます)

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