【連載】ちろうのAKB体験記 ■第7回 メジャーデビュー、初めての握手会

■メジャーデビュー、初めての握手会

新曲発売イベントはAKB48劇場があるドンキホーテの裏にある、秋葉原UDXで行われた。デビューシングルである「会いたかった」のCDをその場で買うと、CD1枚につき握手券が1枚もらえるというものだった。握手できるのは1枚につき、好きなメンバー1人だけ。

その時の緊張と興奮は今でも忘れられない。アイドル現場というもの自体初めての経験で、初めての握手会。相手は小林香菜だ。ぼくが初めてAKB48劇場に訪れてから「会いたかった」発売イベントまでの時期は、インディーズシングル「スカートひらり」の発売イベントが一通り終わった時期で、握手会のなかった時期であった。だからぼくも初めてAKBにハマった7月末から、この10月25日まで実に3ヶ月の間、握手会を経験することができなかったのだ。いずれやってくるとは思っていたが、ついにこの時がやって来てしまった!という気持ちだった。

公演では前述のようにはっきりとそれとわかるようなレスをもらい、この時すでに毎公演後に必ず手紙を書いてインフォメーションに提出するということをやっていた。しかし話したことはただの一度もない。果たして彼女はぼくのことをどの程度認識しているのだろうか?

握手会が始まり、しばらく様子を伺っていた。当然の如く、ファンがたくさん並んでいるメンバーもいればそうでないメンバーもいる。初めは賑わっていた握手列も次第にまばらになり、小林香菜の列は列が出来たり途切れたり、ということを繰り返す程度になった。いよいよ決心を決めて、列に並ぶ。ついに順番が回ってきた。ぼくは高なる鼓動を抑えながら、小林香菜に初めて対峙した。手には手紙を持っていった。それは過去に4回ほどインフォメーションを通して送った手紙と同じ封筒で、キディランドで買った「アポロチョコ」のイラストがあしらわれた封筒だった。

ちろう「は、初めまして。いつもこの封筒で手紙を送っているんだけど・・・」

そういうと小林香菜は、間をおかずに「あっ、読んでますよ!」と明るく答え、ぼくの目を見ながら「いつも応援してくれていますよね??」と語りかけてきたのだった!

それを受けて「はっ、はい!」と答えた後には、ぼくは何を喋ったかまったく覚えていない。思えばその時すでに、公演ではほぼ毎公演、小林香菜目当てで下手側の客席に陣取り、無地のキャップにスポーツショップで「小林香菜」という刺繍を入れてもらって公演中に着用し、さらにはチームKメンバーがアンコールで着用するTシャツと同じものを恵比寿にあるPalms&Labskieというブランドショップで購入して着用して公演に臨むという有様だった。そのTシャツというのはメンバーごとに色とデザインが異なっており、小林香菜が着用する黄色のものは何故かショップにレディースのSしかなく、それをピチピチの状態で着ていたのだった。Tシャツはその握手会にも着用していた。傍目には純度100%の香菜ヲタ然としていたと思う。

とりあえずいつも応援していること、頑張ってくださいという言葉をかけたのみだったと思う。そのたった一回の握手で、ぼくがいつも応援していることに小林香菜が気づいていたこと、そして過去に出していた手紙を読まれていたこと、そしてそこに書いていた名前とぼくの存在がおそらく一致したであろうことが分かった。これは認知されてしまったと言っても良いのでは!? 自然と涙が出て来てしまった。握手を終えてその握手会場から出ると、これからの劇場公演は正しく「会いにいく」という表現をしても良いのではないか。それは天にも昇る気持ちだった。

ぼくはおそらく握手において、この初めての握手の感動を超えることはないだろうと思った。だからこの時はCDを買い足してもう一度握手に行こうとは思わなかった。その感動を噛みしめようと思った。

その時、何かのイベントで握手会場の外でアニメグッズを売っているブースがあり、思わずそこのスタッフに感動を伝えてしまったことを覚えている。「今その中で握手会やっているんですけど、メンバーがぼくのこと覚えててくれたんですよ!」
苦笑いされるのみだった。。。

そしてその日の夜、AKB48劇場で行われた公演に入り、メンバーと共にメジャーデビューを祝うのであった。それは小林香菜のいないチームAの公演だった。ついさっきまで初めての推しメンとの握手を語っておきながら、直後にはちゃっかり別グループの公演に入っているのである。単推し諸氏の皆様におかれましては浮気者の誹りを免れないだろう。しかし当時のAKB48を取り巻く、ある種のお祭りのような環境がそうさせたのだということで、許してほしい。

(次回に続きます)

ながらくチロウショウジとして同人誌を発行してきました。これからはnoteでも積極的に発信していきます!よろしくお願いします。良かったらサポートしてください。