【連載】ちろうのAKB体験記 第26回 ■初めての握手、さっしー編

■初めての握手、さっしー編

2008年7月29日、池袋リブロで行われた握手会は、BLTの各地方版を全部セットで購入すると参加できるものだった。余談だがBTLはそれぞれの地域のテレビ番組表を掲載している雑誌だから、各地方版を全て購入するという意味はあまりない(笑)。まあ握手券が付けば何でもいいのだ。フロア内の通路に設けられた特設ブースで、数人のグループに分けられたメンバーと握手できる。その時のメンバーは前田敦子、指原莉乃、川崎希、駒谷仁美という順だった。不思議なメンバー構成である(笑)。もちろんこのグループに行くのは指原莉乃がいるためで、ぼくはこのグループの握手券を3枚持っていた。

聞きたいことはただ一つである。君はあのときの女の子なの?いよいよ念願の指原莉乃と握手ができるわけだが、その前に前田敦子と対峙しなければならない。この時の前田敦子との会話レポをまずは紹介したいと思う。

1周目:
ち「初めまして。」
前「・・・違いますよね?」

「初めましてプレイ」である。まるでメンバーを試すかのように「初めまして」と語りかける行為はなかなか難易度が高い。しかし少なくない回数劇場公演を見ているだけあって、さすがに顔は認識してくれていたみたいだ!

ち「顔覚えててくれたんだ、うれしいな。」
前「もちろん覚えてますよ」
ち「そうか~、僕たちもう5回くらい握手してるもんね」
前「(えっそうなんですかっ!という表情)」
ち「そうだ、僕ちろうっていうんで名前も覚えてくださいよ」
前「チロ?ちろうさんですね、わかりました^^」

2周目:
ち「こんにちは。名前は??」
前「あっ、アレ?アレ?もう一回お願いします。」
ち「ちろうだよ。」
前「あー、ちろうさん」
ち「たのむよー」

3周目:
ち「・・・(無言で)」
前「あっっ、アレ?アレ?名前・・」
ち「ちろうだよ」
前「ちろうさん!」
ち「全然覚える気ないだろ(泣笑)」
前「名前覚えるの苦手なんですよ(笑)」

結局最後まで名前を覚えてもらうことはできませんでした。とはいえ顔だけでも認識してもらえていた事実は素直に嬉しいものだった!
それはさておき、指原莉乃である。その時の会話レポが以下である。

ち「こんにちは」
指「(目を大きくして嬉しそうな表情)」

ち「むかし劇場で君に由加理ちゃんの写真あげたっけ??」
指「もらいました!覚えてますよ!」
ち「うそー!」

指「研究生公演のときに見つけてアーッ、あのときの人だって思いました」
ち「えー!その段階で気づいててくれたんだ、うれしいな」
指「青い写真ですよね??」
ち「う~ん、そうだった?(どんな写真だっただろうか?記憶が曖昧)」
指「運命の再会ですね」

ち「君に運命感じちゃったからこれからファンになってもいい??」
指「はい!お願いします」

指原莉乃はやはり、かつて劇場ロビーで会話をした中学生の女ヲタに他ならなかった!しかも、ぼくがプレゼントした写真のことまで覚えていてくれたのだ。認知されていることが発覚する瞬間とはたまらなく嬉しいものだが、こんな形で訪れるとは思いもしなかった。そしてその明るく元気な雰囲気と、親しみやすさ、可愛らしさにより一層惹かれてしまった。

指原について語られる言説の中で、この頃の握手会のことを強調するヲタも多い。舞台に立ち始めたばかりの研究生ならば、先輩メンバーに遠慮したり、これまでの人生で接してこなかったおじさんアイドルヲタとの握手対応のやり方など知らなくても当然で、その初々しさを楽しむというのもまたアイドルヲタクの作法である。しかし、歴戦の現場系アイドルヲタクの中で、まるで呼吸をするかのように普通にヲタと接して生きてきた指原に、そんな初々しさはなかった(笑)。例えばこの握手会であれば、AKBの最初期から所属している1期メンバーの中にあって(しかも隣にはあの前田敦子である)、まったくもって堂々としているというか、まるでヲタ仲間と会話しているかのようなノリなのだ。そしてやたらと早口である。

また劇場公演の中でも、まだこの時点では指原の本性が完全には明かされていなかったという事情もある。さすがの指原とは言え、まだ劇場公演のMCでは遠慮して大人しくしていたのだ。ビジュアルや歌唱力に自信のない彼女にとってみれば当然のことである。先輩メンバーに話を振られなければ、特にMCで目立つこともなく過ぎ去ることも当然あった。だからこそ「こんなに話しやすく、友だちみたいなノリで応対する子なのか!」と、そのギャップに打ちのめされるヲタが続出したのだ。もちろんぼくもそんな親しみやすさにヤラれたヲタの一人である。しかも一回目の握手から認知されていた。もはや推さない理由を探すほうが困難というものだ。

その意味でここで声を大にして言いたいのは、彼女はヲタとの向き合い方という点では、デビュー当時から驚くほど変わっていないということだ。変わったのは環境である。何せ全く無名の研究生であった時代から、破竹の勢いで選抜総選挙の順位を上げ、今では福岡と東京を往復するお茶の間の顔になってしまった。同じものさしで語ることのほうが不可能である。彼女はことあるごとに、「指原は変わってしまった、と言われるのが悲しい」と語ってきた。そして自分は昔から何も変わっていないということを訴えてきた(例えば2011年の生誕公演などでも、涙ながらにそう語っている。選抜総選挙で9位に入り、選抜メンバーの地位を確立しつつあった時期である)。しかしぼくに言わせれば、彼女ほど目の前の活動に真摯に向き合う姿勢を変えてこなかったメンバーはいない。その不変ぶりに驚くばかりである。いつまでも先輩を敬い、後輩を可愛がり、謙虚に振る舞い、いつでもファンの側に立って物事を考える。優しい子なのだ。HKT48へ移籍してからは特にその傾向が強くなり、周りを生かすことに全力を注いでいるように見える。先ごろHKT48劇場の支配人に抜擢されたのも、そういう姿勢を評価されてのことなのだと思う。

さて、指原莉乃に調子よく推し宣言をしてしまったわけだが、アイドルヲタがメンバーに対して「一推しだよ」とか「ファンになるね」とかいうのは常套句である。ぼくだって過去いろいろなメンバーに対して言ってきた。「アンチ」というものの反対で「DD的な振る舞い」であり、通常の恋愛であったら浮気と言って断罪されかねないものであるが、アイドルにおいてはこれが認められてしまう(そこがアイドル現場の魅力でもある)。だからメンバー本人もそこまで本気で受け止めたりはしないだろう。しかしこの時のぼくは本気(マジ)だった。

これを単なる「DD的な振る舞い」と「マジ」であることを分かつのは何か。やはり行動で示すしかない。ポラを撮るというのがいろんな意味において推していることを端的に示す行為であったが、当時研究生であった指原とポラを撮るというのは並大抵のコストでは済まないことが予想された(ガチャの景品である指定ポラを引き当てるしかなかった。人から譲り受けるということになれば6~8万といった金額が必要である)。ではどうやって再び彼女に言葉をかければいいのだろう。次の握手会を待つしかないのか。

そんな時、ふとある考えが閃いたのである。ぼくにはとっておきの「ウルトラC」があるではないか。推しメン不在で宙に浮いてしまっていた権利「200MVP」である。ぼくの公演観覧回数は、その時ちょうど200回に達していた。

(次回に続きます)

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