【連載】ちろうのAKB体験記 第8回 ■初めてのコンサート、日本青年館

■初めてのコンサート、日本青年館

AKB48が「会いたかった」で念願のメジャーデビューを果たすと、すぐに次のイベントはやってきた。初めての劇場外でのコンサート、「日本青年館コンサート」が2006年11月に行われたのである(その後、数々のアイドルグループがライブを行ってきた日本青年館ホールは2017年7月31日、閉館の日を迎えた)。この頃すでに劇場公演は常に満員、キャパシティ不足である感じが否めなかったから、1000人規模の会場でコンサートをやることは必然であったと思う(この頃ですでにこうなのだから、2019年の現在に至るまで同じ劇場を使っているというのは驚きだ)。とにかくこの頃のAKB48が打ち出すイベントには参加しないという手はなかった。AKB48がついに秋葉原の劇場を飛び出すという触れ込みで、当時はAKBヲタであればこの日本青年館のチケットを取ることは必須であった。

公演のタイトルは「会いたかった~柱はないぜっ!」。1曲目は「Partyが始まるよ」からスタート。幕が開くと、劇場の2本の柱を模した巨大なセットがステージ上に置かれている。それによって、ステージ全体が見わたすことができず邪魔である。しかし、メンバーがステージ両サイドに柱を押し出すような格好を取ると、その2本の巨大な柱がステージ横に押し出され、ステージ全体が見渡せるようになるのだ。「この場所には邪魔な柱はない」というメッセージだった。劇場常連にはよく意味の伝わる、うまい演出だと思った。

このコンサートは2日間にわたって行われ、1日目は通常のチームの公演、そして2日目はチームAの楽曲をチームKが、チームKの楽曲をチームAが歌うというシャッフル公演だった。これはとても興奮させられた。いつも見ている公演とは違う、まったく別のものを見ているような気がしたからだ。特に小林香菜が歌う「投げキッスで撃ち落とせ」「ガラスのI Love You」は最高だった(そこに抜擢されていることも含めて!)。チームAが「転がる石になれ」で歌詞を「We are the TEAM A」と改変して歌っているのも印象的だった。もちろん現場では、チームK以外に歌わせるべきではないという意見もあり、イントロが流れた瞬間に「やっちゃったよ」という空気もあった。しかしそんなことを言っているのも一部のKヲタだけであった。AKBにおいて、普段の劇場公演では見られないユニット構成でパフォーマンスを見られるというのは、今では重要な楽しみとなっている。

また有名な話だが、メンバーたちにとってもお互いのチームの曲を演じるのは初めての経験で、この時にチームの枠を超えた絆が生まれたというのである。これまでなんとなく敵対チームとして認識していたメンバーと、お互いの曲の振り付けを教え合うことによって初めて仲間意識が芽生えて、AKB48としての団結が深まったという。

ぼくはこのとき、自作のTシャツを着てコンサートに臨んでいたのだった。それは胸の部分に「香菜しか見えない」と文字で書いただけのシンプルなものだ。百円均一で買った無地のTシャツに、文字を切り抜いた紙をあて、その上から黒のスプレーを吹きかけて作ったシンプルなもの。総制作費200円である。劇場公演で着るのは恥ずかしいが、この初めての劇場外でのコンサートに向けて何かアピールしなければならないと思い、満を持して投入したオリジナル応援グッズである。

後に判明するのだが、小林香菜がこれを認識していたのである。ぼくはおそらく15列目前後でコンサートを見ていたと思う。スケッチブックに名前を書いて掲げるなどして反応をもらっては楽しんではいたのだが、まさか胸の部分に書かれていた文字まで認識しているとは驚いた。何といってもAKBの魅力はこの距離感だと思う。舞台に立っているメンバーに認識されていて、着用している応援グッズまで把握され、それについての反応を直接聞くことができる。

この公演の最後には、戸賀崎氏からサプライズで「ゆり組」「ばら組」の新チームにシャッフルすることが発表された。これにはファンも驚いたが、それ以上にメンバーが突然の発表に驚いていた。これまでのチームがバラバラになることが突如発表され、泣き出す者もいた。そしてその発表後に幕を閉じ、騒然とした空気でコンサートが終わったのだ(AKBのコンサートでは最後にサプライズ発表をするのがこのときから通例となったが、必ずしも会場が一体となって喜べるものではないことも多い。組閣であったり移籍発表や卒業発表などは、やはりインパクトが大きい。どんよりとした気分で幕を閉じることも多い。しかしそのように観客もメンバーさえもそのドラマに巻き込んで、AKB48は今日まで成長してきたのだ)。しかしこのチームシャッフルは結局行われないまま、後に「期間限定」ということでアンダー制を敷いた「ひまわり組」が結成されることになる。これは明らかに、当初想定していた1軍・2軍制を取り入れたチーム編成だった(またその後、2011年シングル「風は吹いている」のカップリングという形でアンダーガールズゆり組・ばら組が誕生する)。

(次回に続きます)

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