【連載】ちろうのAKB体験記 第25回 ■研究生について

■研究生について

時代は進み、ひまわり組の制度は終わり再びチームA、チームKの体制に戻っていた。チームAは5th「恋愛禁止条例公演」、チームKは4th「最終ベルが鳴る公演」を開始させる。そのメンバー体制になるのは久しぶりのことで、メンバーにとっても古くからのヲタにとっても感慨深いものがあっただろう。しかしすでにAKBヲタの規模は大きなものになっており、またとっくに他のアイドルグループに流出してしまっていたヲタもいたため「あの頃のチーム体制が帰ってきた」といった懐かしさに浸るばかりではなかった。常にAKBは走り続けているのである。そしてまた以前の状態と違った大きな変化として、研究生の存在感が日増しに大きくなっていたという事実があった。

ご存知のとおりAKBは研究生という制度を設けており、その始まりは4期生からである(1期生=チームA、2期生=チームK、3期生=チームB)。まずはひまわり組時代に4期生である倉持明日香、出口陽、成瀬理沙、佐藤亜美菜がいち早く活躍していた。しかし研究生というものがある種のブランドを持ち始めたのは5期生の加入からではないだろうか。その要因となったのは、すでにチームBの補欠メンバーとして活躍していた藤江れいなや佐伯美香、大家志津香(以上4期生)といった面々に、5期生である石田晴香、北原里英、指原莉乃、仁藤萌乃、宮崎美穂といったメンバーが加わったことだ。特にこの5人の登場は鮮烈だった。今では想像がつかないかもしれないが、石田晴香は渡辺麻友と小野恵令奈を足して2で割ったような妹的可愛さを持ち合わせており、仁藤萌乃は柏木由紀の再来と言われた。宮崎美穂はあまりの美少女ぶりに初登場の際には劇場が騒然となったらしい。そして北原里英と指原莉乃はソックリで区別がつかなかった。

研究生は主にバックダンサーとして出演し、MCでも自己紹介程度にしかしゃべる機会がなかったので、正規メンバーに遠慮しながら緊張して舞台に立つ様子はとても微笑ましく見えた。そして何より、若くて可愛い。ヲタはいつでも新しいものが好きなのだ!それで現場ヲタの間で「研究生良いよね~」という空気が広がりつつあった。ぼくはというと、すでにさんざん述べたようにAKB48自体への興味が薄れてしまっていたのだが、それでも気の向いたときに劇場公演は見ていて、研究生を目にすることが多くなった。可愛い子もいるなと思ったが、この子たちの中から推しメンを見つけようという気にも特にならなかった。何故ならすでに他のアイドルグループや行きつけのメイド喫茶にも推しメンがいたからである(笑)

しかし気になるメンバーがいないわけではなかった。それは元々熱心なアイドルヲタで、AKBヲタでもあったと言われている指原莉乃だった。彼女が元々AKBヲタであったこととか、大分の出身であることなどは、勝手に耳に入ってきた。九州に住んでいながらAKBを好きだったとか、またその推しメンが佐藤由加理(当時チームA、後にSDN→卒業)であったこともぼくのヲタ心理をくすぐった。「そこに目をつけたか!」と言いたくなった。その情報を得てから劇場公演で見るとますます興味を持った。バックダンサーとしての出演が多く、また劇場経験も浅いので先輩メンバーと並んでステージに立つと遠慮してなかなかMCにも参加できないのだが、一度しゃべり始めるとやたらと早口でベラベラと喋る。その雰囲気が、きっと明るくて良いヤツなんだろうなと教えてくれた。そして何より可愛い!研究生の中でもちょっとしたお気に入りのメンバーになった。

そんな中、2008年5月22日、ついに初めての研究生公演が行われることになり研究生ブームは決定的なものとなった!研究生の人数が増え、また徐々に経験を積んできたこともあって、研究生だけで公演を任されるようになったのだ。演目は「A4thただいま恋愛中公演」である。このときぼくは何か神の啓示のようなものを感じた。この公演には入らなければならない。それはぼくの当時のAKB48に対する想いも影響していた。それでガチャの景品として流通していた「100発98中券」(ヲタ内での流通価格5,000円=当時)を使ってこの公演に入ったのだ。「100発98中券」というのは「98中」などとも略されるが、初日・千秋楽を除く通常公演であれば優先的に当選できるという権利である(とはいえそこでも使用制限枠が設けられているので「絶対」ではない。人気メンバーの生誕公演では、その応募が集中して外れることもある)。初日・千秋楽を除くから百発百中ではなく98中ということだ。今では推しメンの生誕公演で使うというパターンが多い(かつては「100発100中券」も存在した)。

この時の出演メンバーは、チームAに昇格したばかりだった藤江れいなに加え、石田晴香、内田真由美、瓜屋茜、大家志津香、北原里英、小原春香、指原莉乃、近野莉菜、冨田麻友、中田ちさと、中塚智実、中西優香、仁藤萌乃、畑山亜梨紗、藤本紗羅、宮崎美穂である。

その時のことは忘れもしない。下手2列目、柱外2つめの席に座った。座った場所の正確な位置など、普通は覚えていないことが大半なのだが、この時のことは強烈に意識させられたのだ。その理由は後に語るとして、この公演もとても感慨深く見たことを覚えている。センター・前田敦子のポジションはすでにチームAで活躍していた藤江れいなが務めた。厳密には藤江れいなのみ研究生ではなかったが、この新しいチームを率いる存在として本当に頼もしく見えた。この公演は、世間的に徐々に知名度を上げてきているいわゆるメディア選抜メンバーが一人もおらず、あるいはひまわり組でいうところの裏メンばかりの公演でもない、新しいAKBが誕生している瞬間を目の当たりにしているようで、とてもワクワクした。そして客席も大いに盛り上がっていた。

それと同時に、この公演を見てますますある確信を深めることとなった。ダンスはあまり上手いとは言えず動きはぎこちなく、身体は線のように細く、MC中は何故か手を鼻の位置に当てて照れ笑いするという癖のある少女。大分出身で、佐藤由加理推しで、佐藤由加理とは未だに緊張して喋れないと言い、秋葉原の劇場にも来たことがあるという指原莉乃という少女が、どこか記憶の片隅にいる女の子と似ているのである。その女の子というのは、かつて一度だけ劇場のロビーでしゃべった子で、AKBが大好きで、推しメンは佐藤由加理で、福岡から来ていると言っていたあの子だ。スペックがそっくりではないか。もしその2人が同一人物だったとしたら……。福岡と記憶しているのは実は大分の間違いだったのではないだろうか。しかしそんな偶然があるだろうか・・。興味は増すばかりだった。

一度あの指原莉乃という少女と握手をしてみたいと思い始めていた。そして実際に握手することになるのはその約2ヶ月後。7月の終わりに池袋リブロで行われた握手会だった。

(次回に続きます)

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