お姫様にはなりたくない

ディズニープリンセスの中だったら誰が好き?
幼稚園の頃、小学生の頃、何回訊かれたかわからないくらい、女の子たちの間では定番の話題だったなあと思う。わたしはいつも困ってしまって、うーん決められないなあ、と曖昧に答えていたな。

キャラクターを好きになる時、いわゆるツボは人それぞれだと思うのだけど、わたしの場合は昔からずっと、「こうなりたい」「こうでありたい」と思えるキャラにどハマりする傾向がある。(推しメンもそうだな)
ディズニープリンセス、微妙……というわけでは断じて無く、むしろ生粋のDオタなのですが。
幼きわたしにぶっ刺さったディズニー作品は、「不思議の国のアリス」だった。健気に王子様を待つプリンセス像よりも、わけのわからん世界にいきなり飛ばされて(ラノベか?)「きちがいだわ!」(原文ママ)と言いながら強くたくましく歩いていくアリスに、わたしはシビれた。原作を日本語と英語で読み、アニメを擦り切れるほど鑑賞し、ティムバートンの実写版を観に映画館に通った。(アヴリルの主題歌がまた良くて……)

「アリス」の作者が論理学者だったことを知って、俄然論理に興味を持った。幸いにも、わたしの選んだ大学には論理を教えてくれる先生がいて、彼のおかげで論理学の基礎から意味論まで勉強することができた。
わたしは論理学のことを、曖昧な存在を確かにそこにあると証明し得る学問だと思っていて、ある意味数学的で頭が痛くなることもあるけれど、きちんとしていることが好きな人にはとても向いているんじゃないかなあ、とも感じている。形ないものの存在の確かさを自分の手で確かめて、安心できるという意味で。

賢くて芯の強い人間になりたいと思っていたわたしとって、いわゆる「昔のディズニープリンセス像」は、憧れるには儚すぎたのかもしれない。と、思っていたのだけども。

この間バイト先の社員(25歳男性)に、「お姫様っぽいよね」と言われて、めちゃくちゃショックを受けた。いろんな感情がごちゃまぜになって、アハハ……?みたいなリアクションしかできなくて、「こいつ……俺の冗談を真に受けてやがる」と思われたかもしれない。ウワーッ すまん
その時わたしは、一見褒められているようなことを言われたのに(お姫様なんて言われること、わたしの人生ではきっと数えるほどしかないでしょう)どうして自分がショックを受けているのかよくわからなくて、家に帰って悶々と考えた。
彼はきっと、深い意味はなく本当になんとなく言ったんだと思うので(とつぜんバイトに「可愛いよ」とか平気で言うような男……)そこまで悩む必要もきっとないのだろうけれど、「頼られるというよりは助けてもらうのを待っている」「そこにいるだけで許されるんだろうな……みたいな空気感」という自分の中のお姫様像と、自分のなりたい理想があまりにかけ離れていて、すこしショックだったんだろうなと思う。
その少し前にも、「君のお母さんって白の女王?」という伝わりづらさの極みみたいな冗談を言われたことがあって、(もしかしてアリスインワンダーランドをご覧になりましたか?)彼にとってきっとわたしはそういうふうに見えているんだろうなと思った。白の女王も、自我があんまり無いような儚げフワフワタイプなので……(好きですけどね)

インターネットを、「なりたい自分」でいられる場所と形容することが正しいかどうかわからないけれど、見てくれる人が増えるにつれて、「こう在りたい」と思う理想の堅牢度が高くなったように思う。
人を好きになるのは得意。自分にあんまり自信のないわたしの、数少ない得意なこと。
だから、わたしのことを好きだと言ってくれる人(本当にありがたいよ……)のことは一瞬で一生大切にします……と思うし、できれば全員とお話したいけど常にそうするのは難しいので、なるべくいろんな形で見てくれている人と関われるように工夫してきた、つもり。
ツイッターで言えば、鍵付きのアカウントでフォローしてくれている人がけっこうたくさんいることもわかっていたので、匿名の箱を置いてみたり。(当初はいわゆる焼きマロにめちゃくちゃ怯えていた……)

「あなたに憧れていて、持ってるものを勝手にお揃いにしちゃったり、口調を意識してしまってるんですけど、真似されるのって嫌ですか?」というメッセージを貰ったとき、ガツンと頭を殴られたような感じがしたこと、よく覚えてる。
それまでわたしにとってインターネットって、恥ずかしがり屋でびびりで引っ込み思案なわたしが、自分の好きなことを細々とやっている小さな箱庭、くらいの感覚でいたのだけど、わたしに「憧れ」という感情を向けてくれている人がいるんだ……!と知って、とっても衝撃だった。し、恥ずかしくないように生きなければと背中を叩かれた気持ちになった。
真似されるのって嫌ですか?の部分に関しては、わたしなんかになろうとするのではなくて、これから色々なものを見て知識や教養を身につけて、あなただけの経験をして、わたしよりずっと素敵な存在になってね、あなたの希望で在れたならなにより嬉しいです、と思った 今でもこの方にありがとうと言いたいよ うまく伝わったかなあ……(お揃いで物を買ってくれたりすることはもちろんめちゃくちゃ嬉しくて幸せになった)

こういう類のメッセージを頂くたびに、わたしはガツンガツンと鈍器で頭を殴られたみたいに何度も新鮮にくらくらしていた。
わたしは全然有名なわけではないし、昔からのフォロワーのほうが、例えばにじさ…じとお仕事していたりなんやかんやすごい人ばかりなので誇りに思っているのだけども、他でもないわたしのことをなんの見返りもなく見守ってくれている人たちがいる限りは、がんばろうと誓ったのだ。
画面の向こうのあなたの希望の星でありたいです。冗談みたいと笑ってもらって構わないし、なんなら自分でも笑っちゃうけれど、そんなふうに思う。
落ち込むこともあるし、なんなら泣いてばかりのわたしだけど、好いてくれている人が寂しくてたまらなくなったとき、ふと思い出してもらえるような存在でありたいな〜とすごく考えていて。わたしはいつでもここにいるので、って、しつこいくらいに言っている気がする。そのために、強くなりたくて。

アイドルのことが好きなのは、ステージの上の笑顔の裏に計り知れない努力と涙があったことを知っているから。「ドリョクは見せず ミリョクで魅せたい」と大槻唯先生も言うてます。生き様の話をしとるんですよ。(誰?)辛いことも、泣いちゃうことも、なかったことにするわけじゃないけれど、画面の向こうでくらい君の憧れの存在でいさせてほしいな、もう少しだけ。というのが、わたしがインターネットにいる理由かなと思います。
無理しなくていいのに、とか、弱いところを見せても嫌われないよ、とか、きっとそう言ってくれる人もいると思う。でもわたしは無理してるわけではなくて、そうしないという選択肢をちゃんと選んでいて。周りに報いるために、背筋を伸ばしていられるのです。

強くなりたいっていつも言っているんだけど、好いてくれている人、支えてくれている人に対して恥ずかしくないように、強くて優しい人間になりたいなということだな〜と再認識したな。
待ってるだけのお姫様じゃなくて、力尽くで全員幸せにするお姫様になりたい……かもしれない。
このままだと、自分のことをお姫様呼ばわりするきちがい女になってしまうので眠ります。
おわり

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