「ディミトリ ~曙光に散る、紫の花~」「JAGUAR BEAT」

感想をちゃんと書こうと思って、Blu-rayを見返しました。
Blu-rayは大劇場バージョンなので、東京の舞台の記憶とは少し違っている部分もありますが、礼真琴さんの歌声を初めて聴いたときの感動は変わらず甦ってきました。
劇場全体をふわっと包みこんでから降り注いでくるあの感じ。常に聴き足りなくて、次の曲が始まると幸福感が押し寄せてくる。まことに尊いトップスターさんなのだなと思いました。可能ならもう一度、劇場で聴いてみたいな。

「ディミトリ」はダンナを連れて行ったのですが、宝塚に深い興味はないダンナが「普通に面白かった」と言っていた。多様な背景をもつ人々が出会い、切ないすれ違いの末に別れていく群像劇に、自分も最後まで引き込まれました。馴染みの薄い中央アジアの歴史と風俗、エキゾチックだけど懐かしさも感じる音楽と舞踊の再現も素晴らしかったです。

ーーーー以下ネタバレありーーーーー

先王を喪いやむなく女王となったルスダンは、周囲から「女こども」と侮られ、夫のディミトリも出自を疎んじられ、孤立した二人は閉じた関係のまま時を過ごす。もし彼らの周りに頼れる大人がひとりでもいれば、その後の展開は避けられたはずでした。
やがて国政から外されたディミトリは、窮地に陥ったルスダンを救いたいあまりに、父が派遣した間者に接触してしまう。

Blu-rayを見返して思ったのですが。
ディミトリって、ルスダンに無断で父の間者に接触した時点で、やっぱり王であるルスダンを裏切っているんですよね。ポジションとしては王であるルスダンの方が上なわけだし。またプライベートでも、得体の知れない蛮族の王に妻を売り渡すという計画に他ならない。
結婚してから常にふたりきりの世界で、ディミトリだけを見て生きてきて、ディミトリもまたそうだろうと信じていたルスダンにとって、これは紛れもなく二重三重の裏切りでありましょう。そんな仕打ちを受けた直後に、金髪の極美慎さんからピュアな愛を捧げられたら、まあああなっても仕方がないかなと。

ルスダンとミヘイルの不貞シーンには賛否両論あるようですが、私個人的には不可欠と思います。あれがあるから、ディミトリもまた裏切られたと感じ、お互いに「自分が先に裏切られた」という埋め難い溝となっていくんですよね。だから、再会が叶って互いの愛を確認できても、もはや相容れることはないと知る。切ないですが、複雑に織り込まれた人間の機微が美しい場面でもあって好きです。

この物語の中で唯一の大人であるジャラルッディーンを演じた瀬央ゆりあさん、目力が異常に強い美丈夫。のそり、と現れた時の存在感が凄くて、あっという間にまた沼に落ちました。お芝居が醸し出す空間も広い。瀬央さんの周囲に広大な草原と小高い丘が確かに見えた。
アン・ナサウィーの天華えまさんも良かった。ああいうキャラクター好きです。

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「JAGUAR BEAT」何度見てもいいなあ。好きだなあ。大好きです。

エモーショナルな宙組さんばかり観てきたせいかもしれませんが、星組さんってどことなく浮世離れした雰囲気があるように思います。礼真琴さんと舞空瞳さんのコンビは妖精さんのような空気感を共有しているし、暁千星さんは宙を舞っているし、瀬央ゆりあさんは岩をも砕きそうだし。(あんな目で、私こそクリスタルファンタジー!って歌われたらもうひれ伏すしかない。)
また独特の若さと瑞々しさと、疾走感もある。そんな星組さんの雰囲気がこの激しく荘厳でファンタジックなショーにぴったりで、「この世界はマジック」という歌詞に納得しました。

自分的には、ディスコ調のカードバトルのシーンとキラキラな中詰が好き。中詰の曲調は、NHK放送時にゲストの井上芳雄さんが「テーマパークっぽい」と仰ってましたが本当にそう。
そして驚きの、「ファイティングジャガー」からのジャガーメドレー。まさか宝塚でジャガー横田さんの歌を聴けるとは予想だにしてなくて、ヒデキ感激。続く群舞も圧巻で、礼真琴さんってギターが似合うなーと思いました。「パリの散歩道」の礼さんバージョンとか観てみたい。







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