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表現の自由をめぐる議論について。

私ははてなブックマークをこの10年以上毎日のようにチェックしているのですが、時々見るのが嫌になるときがあります。今がまさにその時なのですが、見たくなくなる時というのは、だいたいいわゆる「表現の自由戦士」が登場する時です。

「表現の自由」というのは、憲法にも謳われている重要な概念の一つであることは間違いないのですが、ネット上で声の大きい人が言う「表現の自由」というのは、主にアニメやゲームの世界において、自分の好きなものを誰にも邪魔されたくないことを主張するときによく用いられる概念で、それを邪魔する相手として標的になるのが、いわゆる「フェミニスト」といわれる人たちです。はてなブックマークは主として「表現の自由戦士」側に立って、フェミニストを攻撃する立場の人が多いと思われます。

個人的には、これらをめぐる議論にはかかわりたくないので、以下の記事

でも読んでおとなしくしてほしいのですが。というかはてなブックマークにキーワードのミュート機能ってないの?

そもそも大の大人がアニメの表現ぐらいのことで逆上するのって、恥ずかしくないの?というのが私の一貫した主張です。趣味として楽しむ分には全然いいと思います。ただ社会人として、大人として、一線は超えてほしくないと思います。子供の頃からアニメやゲームには一切関心を示さなかったという私の生い立ちがあるから、こういうことが言えるのかもしれません。

最近のトレンドは、いわゆるオープンレター問題です。これに関しても長々と説明したくないし、説明できる能力もないので、これも以下の記事を参考にしてください。例によって最初の方は二次元キャラが出てきます。まぁそういう人なので仕方ないですし、そもそもこういう問題を完全にフラットな立場で解説できる人は1人もいないと思うので、ある程度はバイアスがかかっているものとしてみたほうがいいと思います。

こういうところに出てくる人達というのは、人文・社会系の研究者であることが多いです。私も人文系の学部を卒業しているので、その気持ちはよくわかります。理系の世界は肌に合わないし、資本主義社会で生きていける自信がなかったので、人文の世界に身を置いたものの、それでは食べていけないというのは、この界隈の人がよく直面する問題です。人文・社会系の研究者として食べていくのは、おそらく芸能人とかプロスポーツ選手として食べていくより難しいと思います。大学を卒業するときに、ある程度諦めをつけて、資本主義社会で生きていく覚悟を決めた人ならそれでいいんだけど、(私もその一人だけど、結局公務員という抜け道を経由して今に至る)諦めのつかない人はこうやってずるずると人生を浪費してしまうのです。しかし今回の発端となった人物は、ある程度ポストが確約された人物だったようで、そんな人でもこのようなところに手を染めてしまうというのは、なかなか業が深いものがあります。

そうやってリスクが高い世界にあえて飛び込んだ人は、収入の問題とともに、やはり承認欲求が出てしまうのでしょうね。それである程度議論が集中しやすい表現の自由界隈の問題に首を突っ込んでしまうのでしょう。これを職業として選んでしまった以上仕方のない話ではあります。こういうカネになって注目を集めそうなジャンルを無視して、カネにならないジャンルに注力したところで、長期的なライフプランは描けない。だからといって研究者の道を諦めて、普通に就職しようにも、職歴がないから就活戦線で苦戦し、結局意に反する仕事で糊口をしのがざるを得なくなり、「なんのために生きているんだろう」という気持ちになる。それぐらいだったら、炎上する火の海に身を投じざるを得なくなるということなんでしょうかね。

昭和とか平成の初め頃なら、表現の自由界隈の判例は検索すればいくらでも出てくるのですが、私の観測範囲では最近あまり出てきません。誰かこのアニメの表現問題とか、フェミニズムの問題界隈で訴訟を起こして、和解にも一切応じずに最高裁まで持っていってくれませんかね。それで判例集にでも記録が残れば、ネット上だけでイキっているのではなく、正式に判例として判断が下された正当なものとして認めることもできるのですが。

こういう議論はTwitter上で主に展開されることが多いように思いますが、そもそもTwitterという140字しか書けない制約のある中で言い争いをするのって、学術的にどうなんだろうという疑問は起きないんだろうか。研究者としての矜持はそれで保たれるんだろうかと不思議に思います。研究者なら一時の感情で発言するのではなく、きちんと典拠を示して、「こういう根拠があるから、このように私は考える」と発言するべきであり、その手段としてTwitterは明らかに不適切であると言わざるをえません。研究者に限らず、時々Twitterで言い争いをしている人がいますが、Twitterを議論の道具として使うというのはあまり適切な使い方ではないと思うし、それで勝った負けたを判断するのはあまり健全ではないのではないかと思います。

あとはてなブックマークの読者って、東京在住でIT関係の仕事をしている人が多いらしくて、その関係で地方在住で、IT以外の仕事(特に文系の仕事)をしている人を下に見る傾向があるので、それを何とかしてほしいところだけど、これははてながなんとかできる話ではないからなぁ…


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