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災い転じて福となす

諺には非合理的と思えるものも多い。急がば回れ、灯台元暗しとか。何で?って思うことも。見えるものしか知らない短絡的な態度から、人生経験を経るうちに、ようやく諺の真意を知る。

インドに来たばかりの頃の経験は、より広くて深い知恵の旅の始まりだったと思う。

見るもの出会うもの、なんとなく臭い汚い怖い。3Kじゃん!と。でもネガティブ経験は後々になって、何が何処へどう繋がっているかを知るきっかけになる。実は全てのものは繋がっている。だから自分だけ無関係でも無関心でもいられない。そう思えるきっかけになった。

一見嫌だと思う出来事も、後に思わぬ恩恵を感じさせてくれる。

そろそろ宿の対応やクラスメイトのサンディヤには呆れ始めていた。しかもサンディヤが旦那さんと旅行に行ってしまったら、私はまた1人ぼっち。

そんな時に現れたのがアメリカ人のリン。ボヘミアンなファッションの20代。どこか中性的で、誰からも好かれるタイプだった。

「先生、やっと腕の怪我が治ったの。また戻って来れて嬉しい!」と。何でも数ヶ月前にコースを受講した際に腕を骨折。休養がてらインドの各地を旅していたけれど、修了資格を取るためにまた戻って来たのだそうだ。

リンは朝から出席する日もあれば、夕方まで顔を出さない日もあった。以前習った部分は飛ばしてるの?と聞くと、「友だちと夜更かししたら朝起きられなくて」と。彼女は二軒隣の別のゲストハウスに滞在していた。

「友だちを紹介するからおいでよ」と誘われ、訪ねてみることに。リンのゲストハウスでは中長期の欧米からの滞在者ばかり。見た目は若いけど30代から40代。地元の伝統的な一家が増築した部屋は小さいけれど落ち着いている。

建物の中心には中庭があり、バルコニーからはゲストも管理人一家も分け隔てなく和やかに集う。自然体のホームステイの様だった。

「私と一緒に部屋をシェアしない?」

そう話しかけて来たのはドイツ人のルヴァナ。長期滞在しながらヨガやメディテーションをしていて、ちょうどルームメイトが帰国してしまったとか。いきなり言われて驚いたけど、金髪でお洒落な彼女とはすぐに打ち解けられた。

朝ドロップインクラスに来ていたジェームスもここの住人らしい。クラスでは寡黙なイギリス青年、リンとは兄妹のように仲良く話す。その隣の部屋には黒髪に青い目が印象的なノラ。彼女も長期の旅人で、パワーストーンでアクセサリーを作っていた。

個性的で多分訳あり、色々ありそうな人々を和やかに包み込む不思議な安心感のある場所だった。

その後サンディヤは旅行に出かけ、リンは毎朝クラスに来るように。学生時代アメリカに3年住んだ私、ヨガに対するリンの考え方に共感できた。ヨガに出会ったのもアメリカ。翌週にはさらに先生の奥さんのサンジタがコースに加わり、やる気の増したスタジオには再びいい気が流れ始めた。

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マクロードカンジのカフェからの眺め。季節は雨季真っ只中だった。

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