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20231112

新聞に折り込まれていたとある印刷物の表紙を飾っていたのは、うつくしい紅葉とそのなかを走るケーブルカーだった

街を往来する電車や車を見つけては目ざとく指差しするうちの坊や
やはりこの光景も目に留まったようで、もれなく反応する

これを機に、高尾山へ行くことにしたのが昨夜のこと

明くる朝、起きてみるとどんよりとした鈍色の雲が広がっている
まもなく小雨が降ってきた
これは取りやめかなぁ…と思案するも、雨雲レーダーをみてみると、現地はしばらく降らなそう
思い切って出かけることにした

新宿から、京王ライナー・Mt.TAKAO号に乗る
ほぼノンストップで高尾山口までいかれるものだからありがたい
心地よい揺れだったのか、次第に目をつむり、とうとう眠りについた子
ふたたび起きたときにはもう駅に降り立っていた

都心も昨日あたりからずいぶんと冷え込んだとはいえ、山麓とくらべたらまだまだ秋の風情だと思わずにいられない
今季はじめて、手がかじかむのを感じた
以前、八王子方面の大学に通っていた子たちが「川を越えると5℃違うよ」と言っていたことを思い知る

清滝駅からケーブルカーに乗り込み、いざ高尾山駅へ
最急勾配は31度18分、これはケーブルカーの線路でいうと日本一の急勾配だそうだ
まだ乗り鉄の芽は出ていないようで、眺めているのがたのしそうな子
乗車中のハイライトは、中間地点でのすれ違いだったみたい

ようやく中腹につくと、お腹がすいてきたのを感じた
近くにあった眺望のいい喫茶店で、甘いものとコーヒーブレイク
まさか山のなかでこんなにおいしいを味わえるとは思ってもおらず、想定外のうれしい展開にすでに満ち足りてきてしまった
半ば達成感にあふれて、ここで下山しても悔いなしのような気持ちになるも、いやいやこれは先を行こうと奮い立たせる

くだんのお店をあとにしたのち、すぐ隣で売っていた豚まんにもそそられ、すぐさまもたいらげるなど
己の底なしの食欲におどろくも、これで腹ごしらえはばっちり
幼な子を連れていても歩を進められそうだ

薬王院に向かう道すがら、ふたつにわかれる箇所があった
左手には男坂、急峻な階段が続く
右手には女坂、曲がりくねったゆるやかな坂道が連なる
ここは迷わず女坂にしておこう

このあたりでようやく、靴を履かせて立たせてみる
するととってもうれしそうな顔をして、ずんずんと進んでくちいさな子
時折道行くひとたちから励ましの声を送ってもらい、石垣のすきまからのぞくシダをはじめとする植物を愛でながら、マイペースにも着実に

それにしても、ここは空気が澄んでいる
肺のなかに、ふだんとはまったく異なる空気が流れ込むのを感じた
中腹で手を洗ったときもお水がつめたくって、そのぶん純度が高く思えたりしてね

そんなふうに一歩一歩行くと、なんと、とうとう女坂を登り切ってしまった
すごい!
はじめての登山、舗装された登り坂にもかかわらず、よくがんばったね
足腰、体力、気力ともほんとうにつよいなぁ
我が子ながらそのしなやかさに感心する

その後もうすこし進み、天狗さまにごあいさつして帰ることにした
本堂までは行かれずとも、大天狗さまと小天狗さまにはお目見えすることが叶った
お二方の像の前でごあいさつしていると、なぜだかとってもいい笑顔を浮かべている子
そうか、あなた呼ばれたのかもしれないね
お会いできてよかったね

そこから方向転換して降っていくと、次第にぐずり出してしまった
ちいさな手が指が赤くなっている
さすがに寒すぎたかしら…?
それとも、天狗さまのもとを離れがたかったかな?
名残惜しかったのかもしれないし、許容量以上に歩いて疲れ果ててしまったのかもしれない
山のおやつと持参しただいすきなバナナと甘栗を食べて一瞬回復したものの、またすぐに涙を浮かべ、しまいには大泣きしてしまった
ケーブルカーに乗るあたりでようやく落ち着き、なんとか静かに乗車することができた
ご相席したご婦人方が気持ちのいい方々でホッとした

無事登山口に戻ると、次なる好物・おいもさんが焼かれているのが目に飛び込んできた
すかさず買わせてもらい、ちょびちょびと食べることには、すっかりごきげんになっていた
食べることのすきな子でよかったよ

そして、さすがにおとなのほうもお腹がすいちゃった
みなそろってお昼ごはんを食べて小休止
絶えず動き回る、好奇心旺盛なお年頃の子と外食するのはとっても大変なことだけど、お外でもあったかいものをいっしょに食べられるようになったんだから、これも成長だと捉えることにしよう

ちょうどいい便があったのでふたたびMt.TAKAO号に乗って帰路へ
帰りの車内ではみな爆睡でした

最寄駅につくと、先ほどまでの疲れがうそのように引いて、すがすがしい心地になった
行きの自宅から最寄駅までは降られてしまったけれど、それ以降は雨に濡れることはなかった
大正解!
弾丸の小旅行、思い立って行ってみてほんとうによかったなぁ




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