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20231124

ひょんなことから、TOKYO ART BOOK FAIR 2023に参加することになった
2019年に古巣を退職して以来、4年ぶりのカムバック

今回の関わりはブース出展者としてでも、来場者としてでもなく、ちょっと不思議な立ち位置だった
そのミッションとは、アイスランドを拠点とするアーティスト・Ásta Fanney Sigurðardóttir(アスタ・ファニー・シグルザルドッティル)のパフォーマンスに際して、当人が手がけた詩を自身で朗読する際に、日本語訳を読み上げるというもの

7年前に長いおやすみをもらって出かけた欧州周遊
特にアイスランドを訪れたことは、わたしの人生にとってものすごくおおきく大切な出来事として、心のまんなかにしまってある
(当時のことをTumblrに綴っていたので、興味のある方はどうぞあわせておお読みください)
こうした個人的な思い入れがあるものだから、アイスランドに関われるのなならばほんとうにうれしい

この日記をお読みくださる方ならよくご存知なとおり、わたしは書くことをなりわいとして生きている
詩の創作こそ経験が乏しいものの、ふだんことばを紡ぐときには似通った感覚をもとに為しているように感じている
そして、詩というその端正なことばの表現が純粋にすきでもある

加えて、独立してはじめての冬に、友人のお店にあるスペースをお借りして朗読会を開催していたことも思い出された
開催前その後に所感を綴っていたので、こちらもあわせてどうぞ)

いったい何が言いたいのかというと…
要するに、このご依頼は、これまでの歩んできた道のかけら、すなわち【アイスランド】・【詩(ことばの表現)】・【朗読】の重なるところにあったのだった
縁の重なりに感銘を受け、よろこんでお引き受けすることにした

当日の本番前に、アーティスト・事務局担当者と顔合わせに打ち合わせ
控室に足を踏み入れた瞬間に、白く、ひときわ輝くうつくしい女性と目があった
それがアスタだった
笑顔であいさつし、日本語訳と英語訳の原稿を渡してもらう
担当者も揃い、さっそく打ち合わせに入る

細かな部分の擦り合わせののち、一度読み合わせることにした
パフォーマンスは、アイスランド語の原文と日本語訳を一行ずつ読み交わしていくスタイルで進めることにした
アスタの声が止むのを合図に、日本語で読み上げる
わたしの第一声をきいた彼女が「Beautiful!」と声をあげてくれた
この好意的なリアクションのおかげでうれしくなり、”これでだいじょうぶだ”と安心して臨むことができた
読み合わせのおかげで微調整もでき、息も合って士気も高まった

ほんのすこしの小休止
友人のデザイナーがアイスランドウールでつくったという帽子をかぶった姿があまりにチャーミングで、つい写真を撮ってしまった
それを送信したりするうちに、ほんの束の間のおしゃべりに興じることとなった

詩作や朗読以外にも、音や言葉を用いたパフォーマンス、作詞作曲など多岐にわたる彼女
このブックフェアでは朗読のパフォーマンスに限らず、当会場には1点ものの紙媒体の作品展示、あすは中庭でライブを予定しているのだという
首都・レイキャビクを拠点にしていると聞き、話題は自然と件のアイスランド来訪のことにも及んだ
「いつか再訪したい」と話すと、「ぜひ!来るときは知らせてね」と言ってくれた
Instagramのアカウントを交換すると、来週からはアイスランド大使館で展覧会をするらしく、インビテーションを送るからとメールアドレスをも訊ねてくれた
パフォーマンスとは異なる作品とも出逢えそうでワクワクする

そうこうしているうちに上演時間となった
会場は舞台や部屋ではなく、出展者ブースのあるエリアの一角
「ゲリラ的にはじめましょう、あなたのタイミングでどうぞ」
という担当者の声かけに応じた彼女は、突然、動物のような声をあげた
その鳴き声を皮切りに、はじまりはじまり
彼女の息遣いを感じながら、呼応するようにして、日本語であらわされた詩世界のことばの断片を声に載せて返していった

マイクなしの肉声でのパフォーマンスは、生身の人間がひとつの自然であることを思い起こされるようなエネルギッシュなものだった

いい意味で人間離れした、まるで妖精のような、不思議な魅力を携えていた
彼女のいる場所だけその場とは異なる空気が漂うような、森のなかに迷い込んだような錯覚に陥りかねなかった
すごいなぁ、空気を一変させるなんて
さすがだなぁ

そんなすばらしい表現者と、こうしたかたちで協業できたこと
思いがけず、とびきりの機会をいただけたこと
ほんとうにうれしくありがたい
これぞ一期一会ですね

そして、久方ぶりにお会いする方々も多く、ごあいさつしたり、ちょっと立ち話したりが叶った
安否を気にしてくれていたひとたちとも、元気な姿でお会いできてよかったな
こうしたかたちでふたたびお目にかかれる機会に恵まれたこともまた、おおきなよろこびだ

会場近くまで同行し、木場公園を散策しながら待ってくれていた母と息子にもありがとう
我が家の場合、わたしの仕事のスタイルもまた、家族総出のチーム戦ですね



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