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【読書】のマガジン

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2020年10月の記事一覧

「不死性は他人の記憶の中、あるいはわれわれの残した作品の中に生き続けることなのです」

■ホルヘ・ルイス・ボルヘス『語るボルヘス』 ボルヘスの書く小説は総じて難解だが、彼の講演をおさめたこの本はとても読みやすかった。小説の場合は文学的知識がないと楽しめなかったりするが(そもそも知識がないのでわからないが、たぶんそうだと思う)、講演ではもう少し丁寧に語られている。 「書物」「不死性」「エマヌエル・スウェーデンボリ」「探偵小説」「時間」という5つのテーマについて語っている。短く、読みやすい。 読みやすいのだけど、テーマについて自由に語っており結論を出しているわ

「私の作家としての絶望はここに始まる」

■ホルヘ・ルイス・ボルヘス『アレフ』 ようやく今、私はこの物語の、いわく言い難い核心に達した。私の作家としての絶望はここに始まる。あらゆる言語は、その使用が対話者たちの共有する過去を前提とした象徴のアルファベットである。私の怯懦な記憶では追いきれないこの無涯の〈アレフ〉を他の人間たちに、いかに伝えればいいか? ー 213ページ ボルヘスは、現時点で私がもっとも愛している作家だ。──ということがこの一冊で確認されてしまった。 特に表題作の「アレフ」は、筋書きとしては大した

「二人ならば一人でいるより、考えることも行為することも、いっそうよくできるものだからである」

■アリストテレス『ニコマコス倫理学(下)』 二人ならば一人でいるより、考えることも行為することも、いっそうよくできるものだからである。 ー 186ページ 善き人々は互いに自分自身のゆえに友人となることができる。なぜならかれらは、善き人であるという点で友人だからである。 ー 208ページ この『ニコマコス倫理学』は、私がこれまで「哲学」というものに対して抱いてきたイメージを変えた。 そもそも哲学書なるものをほとんど読んだことがない。苦手意識があって避けてきた。記憶にある