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【読書】のマガジン

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2020年7月の記事一覧

「歳月も習慣も、どうやら僕の才能を腐らせる力はなかったらしいね」

■アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの帰還』 久しぶりに読んだホームズ! ただ純粋に、面白いなぁ、ワクワクするなぁと、胸を躍らせながら読み終えた。ミステリーがどうの、謎解きがどうの……という理屈の入り込む余地はそこになかった。 ホームズとワトスンの再会にはじまり、なぜか一緒に暮らしている風の(妻はどうした?)二人に懐かしみを覚え、毎回起きる事件がひとつひとつほんとうに面白かった。心境の変化なのかわからないけれど、今までのホームズシリーズの中では一番面白く読

「迷宮入り事件」

■アガサ・クリスティー『火曜クラブ』 「迷宮入り事件」  レイモンド・ウェストは満足そうに一座を見まわした。 初めてのマープルシリーズ。原題は”The Thirteen Problems”、訳すなら『十三の事件』といったところかな。原題もかっこいいのですが『火曜クラブ』という邦訳もなかなかイカすなと思う。 ミス・マープルはポアロにひけをとらない人気らしい。いわゆる「安楽椅子探偵」で、小さな田舎町に住む普通の老女だが、人間を観察する眼に非常に優れていて、ぴたりと事件の真相

一番面白い本の威力

■阿刀田高『新約聖書を知っていますか』 『旧約聖書〜』と続けて読んで、思った。聖書ってやはり面白いんだな、と。 そして、特に面白いのは新約聖書なのだなと。 理由はひとえに、イエスの存在。これに尽きる。 旧約聖書もそれなりにドラマチックで面白いエピソードばかりなのだが、大袈裟なので、むかしむかし……感が拭えない。登場人物の年齢も数百歳と言われると同じ人間と思えないし、奇蹟にしても海が割れるとか……ちょっとレベルが高すぎる。 イエスの周りで起きた奇蹟も大同小異なのだけど

謎の魅力と好奇心

■夏目漱石『こゝろ』(ネタバレあり) 「あなたは私に会ってもおそらくまだ寂しい気がどこかでしているでしょう。私にはあなたのためにその寂しさを根元から引き抜いてあげるだけの力がないんだから」(P.26) ネタバレありです。国語の教科書などで、日本人なら必ずといっていいほどあらすじを知っている気がするので、気にせず書いてしまいます。 上中下とわかれているうち、上「先生と私」と下「先生と遺書」が“先生”をメインに書かれた部分。すごくざっくりとした感想をまず書くと、<上>の先生

ラフに古典を知ったっていいのかもしれない

■阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』 著者の阿刀田高さんは、最終章でこんなことを言っている。 聖書に限らず、古典というものは、思いのほか読まれていないものらしい。かなり多くの人が読みもしないで、読んだふりをしている。シェイクスピアやドストエフスキイあたりまでを含めて古典と呼ぶならば、読むべき古典は山ほどあるし、私たちの生きる時間は限られている。読書ばかりしているわけにもいかない。(P.308) としたうえで、 読書は楽しいことであり、大切なことでもあるけれど、人生に