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【読書】のマガジン

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2020年4月の記事一覧

「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている」

■アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ』 アガサ・クリスティの魅力の一つである「物語性」が素晴らしく発揮されていました。とても面白かった。 殺人事件が起きる瞬間を「ゼロ時間」とし、そこに向かって収斂していくストーリーを描く。普通の推理小説ならまず事件が起きて、聞き取り調査をして証拠品を集めて、推理して……となるが、それはおかしい!という著者の信念が感じられる。 その考えは、これまでクリスティ作品を読む中でもたびたび感じてきたものだった。例えば『ナイルに死す』では事件が起こる

若さと才能

■ラティゲ『肉体の悪魔』 このタイトルが必要以上に肉欲の権化(すごい言葉だな)的なイメージを抱かせてしまう……と訳者の人が書いていたけれど、たしかにタイトルのせいで官能小説のような印象になってしまっている。実際にはあまりその期待(?)に沿う内容ではありません。 高校一年生の男子が年上の人妻と不倫する、というごくごくシンプルな恋愛もの。もちろん悪魔に取り憑かれた肉体的行い(?)も出てくるのだけど、まあ付き合い始めはこんなもんでしょう!程度かなぁ。笑 自分の思考回路が恋愛方面