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【ちょうどいい】西武園ゆうえんちの雑な感想【回りきれる】

ずっとうっすら気になっていた西武園ゆうえんちにやっと行けた。
しかも大学時代の友人5人が同行してくれた。友人が5人もいて幸せだ。


レジャー施設なんだし都内から直通バスかなにか出ているだろうと思って調べたが、なんか全然なかった。所沢からしかない。電車を細かく乗り継いで向かった。

駅から出るとすぐそこがもう園の入口になっていて、地元のスーパーのレジ列くらいの量の人だけが並んでいた。混雑が大嫌いなのでとてもありがたい光景だったが、土曜の開園10分前にこれかと思うと少し心配になった。

しかしこちらのブログによればリニューアル前の園内はマジで「終わり」だったようなので、これでもかなり劇的に盛り返した状態なのだとわかる。


友人5人はみな関東出身者だったので「ここへ来たことがあるか」と尋ねると、全員がNoと答えた。うち一人は「なんでお姉ちゃんは休日にわざわざ西武園ゆうえんちなんか行くん」と言われながら家を出てきたらしい。
それで扱いはだいたい理解した。北海道でいうところのグリーンランドだ。


入ってすぐに昭和の街並みが目を引く。これまで数々の情報番組で紹介されてきたとおり、ノスタルジックが詰め込まれた箱庭だ。

当時のリアルを知らない私たち世代にとっては、
「『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』だ!!」
という感想が最も適している(タイトルは正式に言えた方が面白い)。

だからこそ、足を踏み入れたが最後、二度と出て来られなくなるような不安感がどこか付きまとう。


どうせ昼食時にまた戻ってくるし、と商店街を早々に離れ、私たちは左手のアトラクションコーナーへ向かった。

めっちゃ手塚治虫だった。アトラクションのモチーフ、グッズ売り場、フォトスポット、すべて手塚治虫作品で統一されている。そうなんだ、と思った。公式サイトを見たときは気がつかなかったな……


一つずつ順番に乗る。

  • アトムのコースター
    上下動がほぼなく、浮遊感の苦手な私でも楽勝だった。その代わりに横方向の遠心力が強調されており、外側に座っている人間が100%潰される。

  • 象が空飛ぶやつ
    オーソドックス。ファンシーな象の機体はどう考えても「名残り」だが、無理やりジャングル大帝の一部ということにされている。

  • 夕日列車
    ゆっくり進む列車で園内をぐる~~っと周る。限られたスペースの中でもストーリーを展開させていこうという気概が素晴らしいし、最後のパンジャ(レオの父親)は近すぎる。君の目で確かめろ。

  • コーヒーカップ
    制限なく自分でぶん回せるタイプで、安全性強化・回転数ナーフの現環境において貴重な存在。誰と一緒に乗るかはよく考えた方がいい。

こう書くと文句ばっかり言っているように見えるが、かなりちゃんと楽しかったことは誤解なく伝えておきたい。寒さのせいかどこも「行きゃあ乗れる」の状態で、たっぷりと面白がる余裕を持てた。

午前中のステージ前広場は本当にがらんとしていた。メロディペット用の真新しい両替機が置かれていたが、メロディペットの姿は見当たらなかった。


昼食の時間になり、商店街にある喫茶店の列に並ぶ。するとまもなく、賑やかな音楽とともに「ブギウギ祭」と称したショーが始まった。中央ではレトロな衣装に身を包んだ女性が音頭を取っている。

『東京ブギウギ』の曲に合わせた振り付けをレクチャーされ、来園者も一緒になって踊ることが推奨される。「ここでノリノリになれるかどうか、これがMBTI診断で言うところのIとEを分けているんじゃないか」という友人の言葉には、不思議と説得力があった。INFPはそれとなく左右に揺れるばかりである。


昼食を済ませ、次は「ウルトラマン・ザ・ライド」へと向かう。

これがマジめちゃめちゃめちゃめちゃスゲ~~~~~~~~~~~~ので、行った甲斐あったなと思った! 元が取れました。

劇場を模した建物に入って並ぶと、前室のようなところへ案内される。そこで色々と説明を聞き、ライドへ乗り込み、あとは映像に合わせてガックンガックンになって終了だ。これが大まかな流れ。

この劇場では1日2種類の公演があり、開園から14時くらいまではウルトラマン、15時くらいから閉園まではゴジラ、の特撮2本立てで展開される。
そのどちらも上記の流れは共通だが、前室でのプロジェクションマッピングとキャストの演技、これから空を飛ぶことへのそれっぽい理由付けによってうまく取り回しがなされている。このシステムなら今後も色々できそうだ。

足を浮かせて椅子に座るライドで、始まると同時に前へせり出て完全に足場を失うのでビビる。物理的な浮遊感は無いが、落ちる! ぶつかる! やられる! という演出がかなりリアルで、思わず目をつぶってしまうほど。
友人いわく「戦うソアリン」、ないしは「その場ハリポタ」だそうなので、そのあたりを知っている人はイメージしやすいだろうか。

内容も、かなりおもしろい。やっていることはずっと「身の危険からの逃避」だが、飛んだり走ったり持ち上げられたり、休む間もなくいろんなことが起き続ける。あとウルトラマンには2つほど爆笑したポイントがあったが、これはまあ、私たちが愉快な人間だからというせいもある。

救いのあるウルトラマンと救いのないゴジラの対比も良かったので、やはり同日に両方乗っておくべき。私たちが行ったときはゴジラの方がちょっと混んでいたが、それでもせいぜい40分待ちくらいだった。


そのほかにも空中ブランコや展望塔(ここだけ暖房が効いているので「あったか塔」呼ばわりされていた)など順に乗り、アトラクションを周りきったころには日も傾き始めていた。

さて、西武園ゆうえんち内では「せいぶえん」という独自の通貨が流通している。これが「発行日限り有効」「再換金不可」というなかなか猪口才な性質を有しており、したがって来園者たちは、このあたりの時間から、余った紙幣の使い切り方を考えなくてはいけない。

といっても、選択肢はそれほど多くない。何か食べるか、何か持って帰るかだ。私たち6人は思い思いの方角へ散った。
コロッケをほおばる者。お団子の匂いに釣られる者。残り20園で唯一買えるのは……とレトロ缶バッジを選ぶ者。残金関係なく欲しいもん買うわとさらに増額してフエキのハンドクリームを買う者。


フエキのハンドクリーム?



いいなこれ。私も買えばよかった。


頭上のイルミネーションが明滅している。商店街は夜を迎える。
街角の装置が煙入りのシャボン玉を吐く。手ごろな高さのニュートンリングに飛びつきながら、こうしていられるのもあと何年だろうと心が滲む。

今まで運の良さだけでやってきた。たまたま良い友人に恵まれ、たまたま体調を大きく崩すこともなく、たまたま地元の企業に拾ってもらえて、なぜかお金を受け取って生きている。
死ぬまで誤魔化し続けられるだろうか? そんな気は、到底しない。


みんなの顔が暖色に照らされている。
薄膜は寒風に運ばれていく。


屋根まで飛べず、手元で消えた。


お金を頂いた場合、より幸せに生きられる確率が高まります