夜隠れ


カーテンの隙間から差した光で目を覚ます。
時計の針は正午と少し前を指している。ひどく重く感じる身体をゆっくりと起こしコップに水を注ぐ。口の中にねっとりとこびりつく唾液を洗い流し再びベッドに腰を掛けた。昨日の夜から何も口にしていない。お腹は正直なことに小さく音を立てた。乱雑に跳ねた髪の毛を少し指でなぞり真っ黒な帽子を深くかぶった。鉛のように重たい腰をゆっくりと持ち上げる。台所には昨夜使ったままの食器が溜まっているが気にせずに玄関の戸を開け外の世界に出た。
空は私の心とは裏腹に清々しいほど晴れ渡っていて雲ひとつない、まさにピクニック日和というものだ。あまりに眩しくて、針のような目をさらに細めた。早朝ににわか雨でも降ったのだろう。近くの駐車場には車の形に沿って薄黒く染まった跡がある。

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