ビキニアーマーの存在理由についてちょっと真面目に考察

ことの発端は、こんなまとめ記事を見つけたことだった。

今や、アニメ、マンガ、ゲームにおいて、当たり前に登場するこの通称『ビキニアーマー』

本来、戦闘時において、身体の保護を担うはずのアーマーがなぜビキニなのか? 

⓪メタ的な理由

・男が好きだから

これに尽きる。
ビキニアーマーを要素分解すると『美少女』『肌の露出』『戦い』となる。
美少女×戦艦=艦これ(アズレン)
美少女×競馬×スポ根=ウマ娘
など、擬人化文化に見られる「男の好きなもの掛け合わせれば好きでしょ」が、ここでも通じる。

ちなみに、一口にビキニアーマー好きといっても、
「戦闘によるダメージで結果的にビキニアーマーっぽくなるのが良い」
「初めは着込んでいて、後々脱いだ方が喜びが大きい」
「恥ずかしがりながらも、必然的な理由があり、仕方なく着ているのが興奮する」

等の意見もある。

次からいよいよ、ビキニアーマー、その理由について、なるべく体系立てて考えていく。

①合理的な理由なし

a文化的理由説

神話、伝承、伝説(例えばかつてそのような英雄がいて、その加護にあやかるため)、伝統、形見など。

bデザイナーの趣味、デファクトスタンダード説

最初に作った、あるいは使った人物の功績がデカすぎて、そのまま使われているなど。

c様式美説

直江兼続の『愛』に代表されるような、兜の角と同じような理由で、自己顕示などのため。

dその世界におけるステレオタイプ説

その世界では誰も疑問に思わない、それが常識になっているという説。
日本の就活生の画一的な黒髪黒スーツも、他国から見れば珍妙に映るだろう。

そもそも、魔法や魔物が当たり前に存在するようなファンタジー世界で、現代の社会常識の延長線上にある、たかがビキニアーマー程度に疑問を抱く方がナンセンスなのかも知れない。

②合理的理由あり

a.機動力の重視説

この手の議論で出てくる中で、最も、もっともらしい理由である。
武士の大鎧で25kg、騎士のプレートアーマーでも同じくらいの重さがある。体重75キロの屈強な男性であれば、体重の三分の一だが、体重50キロの女性の場合、体重の半分にもなる。これを着て動き回るのはかなり辛いだろう。
それにファンタジー世界であれば、敵が人間だけとは限らない。空飛ぶドラゴンや、俊敏な四足獣が相手の場合も大いにありうる。
そんな時に鈍重な鎧をで身を固めても、恰好の餌食になるだろう。

大鎧
フルプレートアーマー

b.敵の攻撃力が高すぎて意味がない説

これもあるあるである。人間の物理攻撃にしても、鎧ごと叩き切られたり、叩き折られたり、叩き潰されたりするのに、ましてや、ファンタジー世界では、巨大な敵に潰されたり、あるいは魔法を受けたりと、鎧の信用度は低いと言わざるをえない。
なら、後述するように、魔法などでの防御が主流となり、物理的な防御性能は二の次になるのかも知れない。
ではなぜ破廉恥な格好をする必要があるのか? これは追って説明する

c.資源不足説

鎧に使う金属が貴重なため。
じゃあそれは頭とか胴体とかの急所に使って、肌は布とかで普通に隠せ、という指摘はごもっともである。

d.資金不足説

古代ギリシャのように兵役が義務であるが、お金がなく、最低限の装備しか買えない。あるいはそういう市民のために、悪徳業者が用意した説。

e.一番基本の装備説

つまり、なんのトッピングもない素うどんの状態ということ。
戦場や敵に合わせて装備を換装することを目的としているのかも知れない。

f.シールド発生装置説

SF的解釈。あるいは魔法でも良い。例えるならプロジェクターのようなもので、被弾を減らすためには小さい方がいい。
この説の場合、視界に入りやすく、人体の急所と同じ正中線に配置するのは理にかなっている…のかも知れない。(背中などだと不意打ちで破壊されかねないため)

g.生存者バイアス説

生還した兵士が最もよく損傷していた場所に、装甲を配置したという説。有名なバイアスである。(致命傷を受けた兵士は生還できない)
なるほど、そう考えればビキニアーマーは、頭部、内臓のある腹部、そして太い血管の走る首、大腿部、手首、足首など、人体の急所をちょうど守っていない。

生還した戦闘機の被弾箇所、ここ以外に被弾した戦闘機は戻って来れないだろう

③合理的理由あり(+なぜ肌を晒すか?)

a.味方の指揮を上げるため

詰まるところ、その世界の男のため説。視界に映るだけでもアドレナリンが出るのかも知れない(最も、戦闘自体から十分興奮は得られると思うが)
あるいはより踏み込んで、慰安目的。ただし、敗北した場合、その特権は敵に渡ることになる。

b.相手の動揺や油断を誘うため

現代的な感覚な装備に身を包んだ軍隊の中に、ビキニ美女が混じっていたら、確かに動揺するかも知れない。
ただし戦時中のアメリカ軍では、兵士の射撃に対する抵抗感をなくすため、動く的が見えたら反射的に撃つ、という訓練をしていたそうなので、問答無用で殺される可能性もある。
そもそも相手が人外の場合、意味はないかも知れない。

c.すぐに治療できるように

競輪選手がすね毛を剃るのと同じ理由である。前述の通り、敵が強すぎる場合、生半可な防御はむしろ危険(鎧の破片が体に刺さったり、フレームが歪んで動けなくなったり)である。なので、回避・治療に専念する、そういうコンセプトの可能性が考えられる。

d.何かしらのバフ説

ファンタジー的な理由で、肌を晒し、光や風を得ることが、強化に繋がるのかも知れない。
あるいは、②aで指摘したのと同時に、敏感な肌を出すことで回避力を高めるのに役に立っているのかも知れない。

e.背水の陣を引くため

防御に頼らない、覚悟の証説。これも前述の通り、敵の攻撃が強すぎる場合に説得力が増す。

f.生かされやすくするため

ただし、敵が野蛮な場合、もっと酷い目に遭うのと、もっと野蛮な場合、問答無用で倒される可能性が高い。

g.非戦闘目的説

・パフォーマンス説
戦闘が既に、ある種のイベント化している場合。ビキニアーマーとは、派手なレスラー衣装、マスク的なコスプレに過ぎないのかもしれない。
あるいは、お飾りとして配置されている説。

・アピール説
セレブの露出の多い衣装のように、それ自体がステータスとなる。露出の高さが地位の高さを意味するとか。

・玉の輿狙い説
健康、勇敢、肉体美を見せ、究極的に上流階級への参加を目論んでいる

・コロシアムなどでの盛り上げ説
挑発的な格好でオッズを上げるため、あるいは、挑戦的な格好をすることでイベント自体を盛り上げ、賭け金を増やすため。つまりスポンサーの意向。現代におけるガチャ集金と近しいものを感じる。

・兵士の人質説
敵前逃亡を防ぐため、連れてこられている説。ビキニアーマーを着る意味は、特にない。

まとめ

ビキニアーマーのメリットを、現代の価値観で、合理的に考えるならば、やはり軽量であることから、機動力、回避力、回復力を高める目的と考えるのが自然である。
しかし、結局のところ、魔法もなんでもありの世界の場合、その世界観、歴史的、文化的背景に依存するところも大きい。
創作に用いる場合は、すこし理性を働かせて、なぜと問うてみることが、その破廉恥な装備に、新たな価値を見出すことに繋がるかも知れない。


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