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【MODE CHANGE 2024】基調講演「AI-driven IoT - 社会実装を加速する」 ~実例紹介~

MODE, Inc. CEO/Co-founder の上田 学による基調講演「AI-driven IoT - 社会実装を加速する -」では、生成AIとIoTを組み合わせが実社会へ与えるインパクトについて解説が行われました。自身のシリコンバレーでの体験をもとにした生成AI活用の解説の他、西松建設株式会社 執行役員 DX戦略室長 坪井 広美氏による生成AI活用の事例が紹介されました。

こちらの記事では、坪井氏による西松建設様の事例紹介をお伝えします。
上田による基調講演についてはこちらをご覧ください。

西松建設におけるDX推進の取り組み

坪井氏自己紹介

坪井:皆さん、こんにちは。さっそくですが、西松建設の取り組みをご案内いたします。

西松建設株式会社 執行役員 DX戦略室長 坪井広美氏プロフィール

私は昭和63年に西松建設に入社しました。最初は土木部門に所属、20代は技術研究所におりました。当時、さまざまなアイデアを出しながら、自由に取り組ませてもらったことが、その後の会社人生に相当プラスになっています。30歳頃に土木のシールドトンネルの業務に従事しました。全国のシールドトンネル現場を回り、上下水道や道路トンネル、地下鉄といったインフラ工事の現場にどっぷり浸かっていたのですが、2年半程前にDX戦略室というのができ、いきなり落下傘のごとく室長となり、現在に至っております。

西松建設のDXビジョンとロードマップ

西松建設のDXビジョンと現場改革について簡潔に説明しますDXビジョンには3つの柱があります。DXビジョンの中心には、建設業で最も重要な現場におけるスマート現場を据えています。左側の柱はワークスタイルで、生成AIの導入やバックオフィス改革など、働き方の改善を目指しています。右側の柱はエコシステムを活用し、新しいビジネスを開拓することを示しています。

西松DXビジョン(ビジョンマップ)

スマート現場のロードマップもご紹介させていただきます。

西松建設「現場力がシンカしたスマート現場」ロードマップ

縦軸の上は未来を示していて、ロードマップは右上に向かって進んでいきます。建設業は設計・計画というフェーズがあるのですが、これらはBIM/CIMの高度化によって提案型フロントローディングにシフトしていきます。
次に我々の業務のほとんどを占める施工管理についてです。ナレッジの暗黙知を形式知化することもこの領域に入りますし、コストや安全などさまざまな要素があります。これらのデジタル化、遠隔化が進んでいます。

最後に、施工そのもののDXについても、現場の遠隔化・自動化が進んでいます。そして大事なことは、建設業もファブ化し生産性を上げるという流れがあることです(ファブ化:製造業のように建設プロセスを工業化・標準化し、モジュール化を進めること)。これは非常に大きな流れで、右上に向かって進んでいくことを図は示しています。これらの実現により、スマート現場1.0から最終的には3.0ぐらいまでのロードマップを描いています

浸透度合いについても、KPIとしてDXエンゲージメントを設定しています。これは独自の調査を社員に対して行い、各フェーズでどれだけ浸透が進んだかを測定しているものです。

「BizStack」活用事例

次に「BizStack」の活用事例として、水中ポンプの稼働状態監視をご紹介します。

「BizStack」活用事例「水中ポンプ稼動監視システム」

知らないうちに水中ポンプが止まって排水ができなくなっている状態が発生すると、色々なトラブルに繋がります。異常を自動で通知してくれる事例です。他には、トンネルや現場での濁水処理設備でも「BizStack」を活用しています。特に山間部のトンネルでは、処理した水を川に放流する際の環境面の配慮が重要です。少しでも不適切な水を流すと大変な問題になるため、薬剤で水質調整する仕組みの自動化を進めています。

土木現場での省人化チャレンジ

最後に、土木現場での省人化へのチャレンジについてお話しします。DXを推進していくと、生産性向上や効率化といった言葉が出てきますが、実行するには漠然としています。そこで僕らが最近考えているのは、DX推進でダイレクトに人を減らすということです。先ほどGakuさんのお話でもあったように、生産年齢人口は減りますよね。間違いなく生産年齢人口は減るのに、先送りして、漠然としたことだけしているように見えてならないのです。

造成現場全景例

造成現場で見える範囲全体はこのように広く、大抵職員4人ぐらいが必要なのが当たり前なのですが、これを2人でやると決めてしまって、そのためには何が必要なのかと考えながら現場の職員とともに考えて、DXを推進しています。

西松建設における遠隔施工管理の様子

必要な情報として、私たちがたどり着いたのは映像です。右上の写真では、セーフィーのクラウドカメラを利用して、掘削機械のオペレーターの目線と同じ映像を活用しています。また、左上の写真の通り、位置情報も必要不可欠です。広いヤード内で機械がどのように配置され、どこで作業しているかを管理しています。最後に音声情報も外すことはできません。下半分の写真では、BONXの次世代トランシーバーを使って、ハンズフリーで作業員と会話する遠隔施工管理を行うことで、たった2人で品質・工程すべてをしっかりと守っています。もちろん残業はありません。

西松建設では、MODEさんをはじめ今日登壇される皆さんとともに、こうしたDX実現の取り組みを進めてきました。DXはわかりにくい言葉ですが、とにかく人が減るんだから、少ない人でやろうという考えに至りました。

これは作業員の方々も同じです。鉄筋を組む人が10人必要だとしたら、8人でやる。そのためにはどうするのかを考えています。

コミュニケーションを通じた新しい現場への期待

上田:ありがとうございました。これまでも、技術を現場に持ち込むPoCはたくさん行われてきたと思いますが、今回のように多くの要素を統合し、一気に投入することで生まれる化学反応のようなものがあったのではないかと感じました。これまでの手応えや、今後このような省人化された現場を作っていきたいというお考えを、一言お聞かせいただけますでしょうか?

坪井:一般的にコミュニケーションといえば人と人とのつながりを指しますが、モノとモノ、モノと人といった、これまで繋がらなかったものが繋がるということもコミュニケーションだと考えています。そういった広い意味での繋がりが全てだと思っています。

具体的には、人同士のコミュニケーションでも、さまざまな障害があります。また、モノと人についてもコミュニケーションの障害はあるのですが、現場に行かないと物が見えない、というのは過去の話です。今はカメラがあるのでもう違います。さらに、作業員と音声で会話するにしても、以前は現場に行かないとできなかった会話がハンズフリーで可能になりました。
ご紹介の事例では様々なソリューションを活用していますが、手応えを感じているところは、現場の職員が自ら「これとこれを組み合わせると、こうなるんじゃないか」と考えていることです

例えば「2人で作業していて、もう1人いたら助かる。でもいないので、これとこれとこれを繋げてくれませんか」と、私たち本社のDXメンバーに現場から相談に来るんです。そこで私たちが座組を作るという流れで進めています。

しかし、それを実装まで持っていくのは、やはり現場の職員なんです。モノとモノの繋がりや、さまざまな技術のつながり、すべての「繋がり」のイメージを膨らませることができる人が、今の時代とても大事だと思っています。多くの技術やテクノロジーがありますが、何と何とを結びつけるか、といったところにものすごく期待しています

上田:ありがとうございます。人と人のコミュニケーション、人とモノのコミュニケーション、これが現場に全て集まって新しい現場が実現できるということですね。
坪井さん、どうもありがとうございました。