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彼が私を嫌いになっても


日が長くなって、18時を回っても夕方の日差しが窓から差し込んでくる。
ひんやりとした風が、カーテンをゆるく踊らせる。

目を瞑るだけで何かに満たされるような中で、私は静かに本を読んでいた。
先日祖父から送られた村上春樹の小説だ。この間授業中に「色彩」という言葉を聞くと「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」を思い出す。と言うと講師が「ハルキラーですか?」と聞いてきたのを思い出した。私は「違います。」とだけ答えた。

スースーと寝息が聞こえる。ふとベッドに目をやると愛しい人がゆんわりと夢の中に入っているようだった。私は彼の腕の裏を触った。優しく閉じられた瞼を見つめ、彼の長いまつ毛を眺め、鼻から口を無風の風で撫でるようにゆっくりと見つめていった。

夕方のオレンジ色の光と、青い空。それからこの、誰をも否定しないような程よい温度の風が、「私たちはどこか遠い国にいるのではないか」と思わせてくる。

私たちは最近、お互いのことを深く考えるようになったと思う。そうすることによって、相手を疑ったり、相手を愛したり、相手を否定したり、投げやりになったり、やっぱり大好きだと認識したりしている。

私はハッキリ言って自分のしていることにすごく鈍感だ。だからこそ自分の知らないところで彼を傷つけているだろうという確信がある。情けない話だが、何をもって彼を傷つけているのか自分でも把握できていないため、謝ることもできないでいる。

ただ、私は最近思うのだ。

私は、どんな実話や嘘があろうとも、あなたのことを愛しているということだけは私自身も変化を与えようがない真実なのである。

私だって嫉妬する。
彼がある女の子と毎日話をしていたり、2人きりで話していたらそりゃ嫌だ。そんなにその子がいいならとっととそっちに行きなよ!となる。でもここで1つわかっているのは、そんな現場に出くわしても、私は彼を嫌いになれないということだ。

浮気をされたから嫌いになる。大事にされなかったから嫌いになる。傷つけられたから嫌いになる。見下されたから嫌いになる。
一度愛した人を嫌いになる理由はいくらでもあるだろう。

私は、彼に何かをされたからと言って嫌いにはならないし、嫉妬のように私が一方的に傷ついたって彼を嫌いにはならない。

彼のことで自分が嫌な思いをした時に、私自身が頷けなかった時、初めて私は彼を嫌うなり憎むなりするだろう。

だが私は今この人を愛し、ずっと一緒にいたいと思っている。できれば隣に居させて欲しいとも。

彼を傷つけてしまったことは少なくないし、これからも傷つけてしまうかもしれない。彼は私より自分自身を愛しているから、きっと私のことは簡単に嫌いになれる。(彼は私ができないような"自己理解"と"自己愛"がとてもしっかりしている。そんなところにも私は惹かれたのだが。)だからこそ、別れ話が出たら彼はすんなり頷くだろう。そしてきっと私はただの過去の人になり、すぐに気持ちを切り替えるだろう。

もっと私を信じて欲しいと彼に伝えたい。
私があなたに対して抱いている気持ちを、いつものこととして取らずに、しっかりと受け取って欲しい。大好きも 愛してるも、ずっと一緒に居たいって言葉も全部、あなたにだけ向けてる言葉。
どうか伝わって欲しい。
どんなに異性と仲良く話してたって、相手があなたじゃないのなら、私はその話し相手をただの話し相手としか見れない。

あなたじゃなかったら私は誰とも付き合いたくない。


もし仮に彼が私を振ったとして、そういう決断が彼を幸せにするという確信があるのなら、私は大きく頷くと思う。
別れた後に、彼が私を忘れても、名前を思い出せなくなってもきっと私は彼の幸せをずっとずっと願う。

彼が私を嫌いになっても、私は彼を好いたまま。
彼が私を嫌いになったからって、それが彼を嫌う理由にはならないから。ずっとずっと彼の健康と笑顔と幸せを願い続ける。


でも彼が今後私を嫌わず、好きで居てくれて、なおかつ一緒に居たいと思ってくれるんだったら、彼の幸せも、健康も、笑顔も全部隣で私が守る。


言わずもがな、私は彼を愛してやまない。


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