【ネタ365days day213 わたし】

自分というものがなければいけないんだと思っていた。

「あなたはどういう人？」
「なにが好き？嫌い？」
「なにができる？」
「どういうことをしてきた？」

学校で、面接で、仕事場で尋ねられるこの問い。

本当はひとつも興味ないのに、答えなければと頭を抱えていたし、はっきりと私を主張できない自分はダメだと思ったりした。

どうにか私を定義してもスカスカな気がした。嘘はついていないはずなのに、作り物で嘘つきの気がした。
これは誰だろう？

それに我が強くなってきた気がした。損してはいけない、負けてはいけない、悔しがらなくてはいけない、みんなが思っているように思わなくてはいけない気がして、私を探すほどに私がわからなくなった。

そうして前へ前へ出ようとして声を大きくするものの、得意な人には叶わない。力を尽くしても追いつけない。

もういいや。

前へ出るのはやめよう。あっていないし、わたしはもっと後ろが好きだ。
それで失敗して生きていけないのならそれまでの人生だ。

下がって下がって下がっていくと、エネルギーが湧いてきた。視野が開ける、静けさが戻る、こころが安定し、振るうべき力がわかる。

こここそ私の居場所、地盤、本質がわたしの得意分野。

あ、わたしがどういう人かわかってきた。

おかえり、わたし。

ただいま、わたし。

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