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【イベントレポート】仕事と遊びの境目はどんどんなくす /SUSONOテーマ「働く」糸井 重里×佐々木 俊尚

4月。始まりの月。

新しく働き始める方や、何となく今の自分を見つめなおす方も多いのではないでしょうか。

会社員やフリーランス…最近では「副業」が増えてきたり、「複業」というスタイルも認められてきたりと、様々な考えが認められつつあるこのごろ。


今のままでよいのだろうか。

今のままやっていけるのだろうか。

そもそも「働く」とはなんなんだろうか。

共創コミュニティ「SUSONO」は毎月のテーマに沿って様々なゲストを呼び、トークイベントを行っています。

今月のテーマは「働く」

テーマに沿って今回お話を聞かせてくれるのは株式会社ほぼ日代表取締役/「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰の糸井 重里さんです。

働きたくない!と泣いた小学生時代

社長もされているし、「はたらきたい。」というタイトルの本ですら出版されたこともある糸井さんですが、小学生のときは「就職したくない!」と布団のなかで泣いたこともあったそうです。

今でも働くのはすきじゃないです。だから、大当たりを狙っているのであれば役には立てないですよ、とにっこりとトークをスタートされました。

「たださぼれなかったから」と働き始めてから、来年50周年を迎えるという糸井さん。

コピーライターとして、知らない方はいないのではというくらい駆け抜けている印象のある糸井さんですが、持続することって大変ではないですか?と尋ねられると、

「持続を目標にしているわけではないけれど、働き続けてると、何度か糸井はもう終わりだ、と言われることがあるんですよ。知らない人に勝手に終わらせられるところにいつもいて、それが嫌だなと思うんです。悔しいというよりも嫌だなという気持ちが、頑張らせる動機にちょっとなっているのかな。」

「『自分の良さは誰にも分かんない。俺にだってわかんないんだから』と勝手に決めつけられてしまうことに対する糸井さんの名言もありますもんね」と佐々木さんからも相槌が打たれました。

「自信があったわけではなく。その都度の問題に対して、出来るような気がすると思っているのだと思うんですよね。例えばこういうトークイベントのような場に出るときに『緊張します』という人がいるけど意味がないと思うんです。意味が分かんない。必要がないですよね。
もっとうまく出来るんじゃないかと、自分で自分に思うことで緊張しちゃうのかな。」


一緒に仕事をするということは一緒に山を登るということ

だけど、一緒に仕事しようってなると緊張してしまうこともあるのではないですか、と聞かれると

比べっこしているわけではなく、ふたりで一緒に同じ山に登ろうとしているだけだから、疲れたねってときには言ってもいいのに。」

失敗してバカにしてくる人がいるから緊張しちゃうって人もいますよね

「それはね。バカにしてくる人はその人がバカなんですよ。あと、自分の言いたいことだけをただ言ってくるくる人とは一緒に仕事ができないんですよね。つまり、ひきだしのものをただただ順番に出すだけの人ってたくさんいるんですね。そういう人とは一緒に探しに行けないじゃないですか。キャッチボールにならないから」


できることから、と思えば目標は低くなるもの

ただ言われたことはばんばんとやっていくのではなくて、ふたりで山を登ったりしていくようなスタイルでいるのが「一緒に仕事をする」ということなのかもしれない、と改めて働く定義を見直す必要があるかもしれない、と気付きます。

ではそうなったときに次の問題が目標設定。

高い目標を掲げることが良いのでは、となってしまいがちなことについてはどう思うか聞かれると

「言うのはタダからかもしれないですよねえ。例えば、宮藤官九郎さんはいつもとても目標が低くていいんですよ。人から見たらクドカンがやっていることっては憧れになるけれど、彼は目の前のことひとつひとつきちんとこなしただけなんですよね。
高く目標を掲げている人を見るとね、つい、オヤジ性がでてしまうんですよ。あなた、いろんなこと言っているけどできないでしょって思っちゃう。できることから、って思えば目標は低くなるんです。」


企業はついつい高いノルマを掲げがちでは

では、対個人ではなく、企業はどうなのか。ついつい高いノルマをあげがちになるのは実際に「ほぼ日」をされていてどうですか?

「株主がいると自由にできない感じがしますよね。実際にいろいろ言ってくる人もいたけど、うちはそういうのやってないんでって言っちゃいますね。いやなら買わなければいいだけなので。」

ほぼ日は実際に個人株主の方ばっかりなんだとか。先までみて結局大きくなったね、となりたいから、目先の数字をみても意味がないし、わかってくれる人だけでやっていくというスタイルでいる、と話す糸井さん。


「いいこと」に対してちゃんとトライして、汗をかいたのか

実は見守りたい、という人たちがかたちとして見えにくいだけでたくさんいるのではないかと話が進み、それはクラウドファンディングに似ているのかもしれないと佐々木さんが言います。

しかし、糸井さんはクラウドファンディングにちょっと批判的なんだとか。

「もうちょっと汗かいてからやれよと思ってしまう。人はいいこと考えた人を手伝いたくなってしまうよね。だけど、いいこと考えた人はそれってほんとにいいことなのかトライする時間が必要じゃないかなって思うんです。」


倉庫にためるためだけに生産してないですか?

「自己啓発本などが流行り、なんだかふわふわと夢を語りがちだけど、現実ではなかなかギャップを埋められないで苦しんでいる人が多いですが、ほぼ日はそうではないのはなぜですか?」

「『働く』ということを思い込んでるのではないでしょうか。時間をかければ生産量が上がると考えがちなのかもしれませんよね。人月スタイルが価値というような感じで。売れる分だけ作ればいいのに、倉庫にためるために作っている感じがする。

何が売れるかわからないのに、必要なアイデアのプレゼンテーションにコストをかけすぎているのが問題なんですよね。(そうじゃないですか?とふると、みんなめっちゃ手を挙げる)」


ほんとのクリエイティブってなんなんだろう

では、最近よく聞く「ワークライフバランス」についてはどう思いますか?フリーの人なんかは常にワーク、ですよね。

「大賛成ですね。楽しく仕事しているときというのは時間もお金も関係ないですよね。ほぼ日では労働時間はとても減らすようにしているんです。でもやりたい!のスイッチが入ったときはどうしようって受け止めてあげる方法をいま考えています」

本気でやったら集中力って3~4時間しか続かないんだと糸井さんが言うと、佐々木さんも大いに頷きます。真剣な3時間を確保するために3時間があるような、アウトプットとインプットのバランスがとても大事だそう。

たとえば、執筆の合間にさんぽとか読書とか入れて、それでなんとか出来ているのに空いているならって打ち合わせ入れてくる人がいるけど、それは違うんですよ、と。

なんでもインプットになると思えば、それが仕事だし、でもわくわくするなら遊びとも言える。もう「しそび」って言葉があってもいいですよね、と話します。


いいと悪いと繰り返して、なんとなくうまくやっていく

商品開発を、例えば、いまここでみんなでやろう!ってなっても、きっとひとつしか売れない。でも、それがきっと食ってくことになるんだと糸井さんは言います。

なんでもいいから手をだして、いいと悪いを繰り返してなんとなくうまくいくものでやってきたような気がします、と佐々木さんも振り返ります。

「全部当てようとして、全部プレゼンテーションして、『マーケティングが足りない』『根性が足りない』と議論になって、今度はマーケティングにお金を出してみたりして。でもそれで出来たものは結局ふつう、という」

「日本社会は減点主義にしがちなのは、努力が計測しやすいところに自分を置きがちだからなんですよねえ。たまたま当たったやつのことをまぐれだとか『ビジネスタイプとかでいうとあれだよね』とか言うけど、じゃあやれよ。それで食わしてもらってるのに。」

当たるかもな、となったときに本気出す人が凄いんですよ。いろんな失敗を経て、たまたまのまぐれであたったやつに本気出す、でいいと思うんです。」


人がぎゅうぎゅうに集まっていることがここちよい

「そもそも、いまってそんなにお金ない?」って思ってしまうんです、と糸井さん。

「次の世代の自分はどうありたいかというのを考えたほうが良いと思います。貯めてから考えようって思ったりとか、病気になったらどうしようとかの漠然とした安心に対する経費が高すぎるんですよね。」

そうすると、では経費もかからないしゆっくりとすごせてアイデアもたくさん出るし田舎に行けばよいのでは?となってしまうけど、都会ならではの良さももあるんだとか。それは人がぎゅうぎゅうと集まること。

「東京はたくさんの人がいてぎゅうぎゅう密集しているから、たのしいんですよ。人が集まる近さに快感があるのかもしれない。イベントなんか席と席の間の間隔が広すぎると「つまんない」って言われてしまうことが多いんですよね」

東京においての誰しもが思うデメリット「人が多すぎる」は、実はメリットでもあったのかと衝撃。

だからきっと小さな都会がある地方が強いと思う、と続きます。


新しいローカルコミュニティがもっとできたらいい

「オリジナルや名物がある地方は強いんです。(たとえばフィリピンは語学が名物。それで食べていける人が出来てくる。といったような)そのためには本当に競争力があるものを作らないといけない。そのためにはブランディングとは何かを突き詰めて考えないといけない」

日本酒の『獺祭』とかは良い成功例なんだとか。獺祭は社員だけでつくるってきめて、通常は年に一回しか生産しないところを年に二回つくって世界中で人気。ブランド化に成功するっていうのはどういうことかっていうのがどういうことなのか。クラウドファンディングにすっといこうとするひとにはわかんないと思います。

今は若い人も地方に出ていくけど、まだまだ小さいので、新しいローカルコミュニティがどんどんできていくといいと、地方の新しい経済はあるけど、じゃあこれからどうしたらいいか、つい考えてしまいました。


すべての人が何かのプロである

では、このあと若い人たちはどうあるのがいいと思いますか、という問いに対して、

「自分がいまやってることがどういうものなのか、ちゃんと見れていないかもしれないですよね。自分では大した事ないって思ってることだけど、人から見たら羨ましいことが絶対にある。きっとだれもがインタビューされたら面白いはずだって、それにちゃんと気づけてる?って思いますね。もっと自分にインタビューしてみたら?と。」

「自分の強みとはなんなのか。ないな、と思ってからが面白いはず。そこからスタートして本当の自分が見えてくるはず。」

「そこから自分の仕事の方向性が見えてくるはず。それは結局主観の話で。楽しそうにやれば人も仕事も集まってくるものだから。」と締めくくり、トークが終了しました。

その後も、たっぷりの質問コーナーに懇親会と続きます。

目からうろこがぼろぼろでてくるような話をたくさん聞くことができて、とても充実感のある時間でした。

生きていくうえで「働く」ことはしなくてはいけないことだけど、もっと「したい」と主導的に考えられる「しそび」に変えていけることが理想だと思いました。

ゆるやかにつながっていけることがとても魅力的なコミュニティ「SUSONO」

これからもとても楽しみです。




もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。