「萩生田光一元政調会長・世耕弘成元参院幹事長ら不起訴」の見方

「そらそうなるよ」

って話でしかない。


当該産経記事

東京地検特捜部は2日、政治資金規正法違反罪で告発されていた自民党の萩生田光一元政調会長と自民党を離党した世耕弘成元参院幹事長らについて、いずれも不起訴処分とした。自民党の派閥パーティー不記載事件の関連とみられる。

上掲産経新聞記事より引用

記事自体が短く、事実関係をただ示しているに過ぎないので、全文を引用させてもらった。

【裏金は「扱い」だけの問題】

※以下は上リンクのnote記事内容の一部抜粋、及び追加解説になります。

裏金問題は贈収賄でもなければ、脱税の話でも無い。
入りは政治資金パーティのパーティ券由来で、政治資金として使う為に個人、団体から受け取った浄財だ。
その私的流用が疑われれば、それこそ今頃脱税で立件されてて当然。
そうなってないって事は、私的流用の証拠無し。

つまり、カネの出は検察の調査でも確認出来なかったと言う事。
 「カネの入りもカネの出も問題無かったが、政治資金報告書に正しく記載が無かった事が問題だ」
と言う政治資金規正法の違反事例。
これは運転免許不携帯と同様の形式犯でしかない。

それ自体が法益侵害の危険はないが、規定に反した行動を取っているのでアウト、と言うだけの話。
巨悪が裏でうごめくような話じゃない。


大疑獄事件かのような印象操作に騙されてはならない

政治家の金銭問題として最も重大なものは、「贈収賄」だろう。
 政治を歪める目的で金銭を渡す行為(贈賄)

 金銭を受け取って政治を歪める行為(収賄)
も民主主義を脅かすとんでもない行為だ。

今回のケースはどうなのか?
収入源は政治資金パーティのパーティ券の代金だ。
 「(パーティの実費を除き、残金は)政治資金として使ってください」
との意図で政治家側、政治団体等に渡されているお金であって、ここに違法性は無い。

浄財である事に変わりは無いのだ。


「裏金化したのならば、個人的収入として申告すべきだった」との暴論

一見、真っ当な主張に見えるが、よく考えれば不当な行為に他ならない。

政治資金を提供したパーティ券購入者の意思をまるで無視した行為となるからだ。

購入者はあくまで政治資金とすべくパーティ券を買ったのであって、
 「政治家個人の収入にしてくれ」
との前提でお金を渡した訳では無い。
全ての購入者がどちらでも良いと表明していない限り、購入者と政治家との間では「政治資金として使うべき」だとの共通認識が大前提となる。

一有権者の視点として、
 「裏金化したお金は私的流用されても気付けないではないか」
と憤る事自体には理解を示す。
だが、その憤りを越えて
 「裏金は私的流用された前提で税務処理すべきだ」
と言い出すのは、パーティ券購入者の思いを全く無視している事になる。

また、この税務処理を肯定すると
 「パーティ券代金として受け取ったお金について、税務申告すれば個人収入として扱っても良い」
との先例になってしまう。
このような行為に走る政治家がいるとするならば、その人格を疑わざるを得ないし、政治家の資質を欠いていると思う。

「脱税だ!」と騒いでいる人達は、
 「当該自民党議員たちを糾弾する事を最優先に考え、『彼らは私腹を肥やしたのだ』と糾弾する」
事を通じて、
 「本来、政治家個人の収入になってはならないお金を、政治家個人の財布にねじ込もうとしている」
のだ。

ハッキリ言って、意味が分からない。
批判する事を優先する余り、自分達が何を要求しているのか、その本質的意味を正しく把握する事が出来ていない事になっている。

問題の本質的なサイズ感、悪質性について正しく把握しようとする気があったならば、このおかしな理屈は採用できないはずだ。
逆に言うと、このおかしな理屈を振り回し、脱税云々を続けている人達は冷静さを失い、問題の本質に目が向かなくなっていると言う事だ。


裏金が作られた背景を正しく知る

「規定に従え」と言うのはその通りだが、派閥からのパーティ券販売ノルマに不安を抱える議員が来年度以降の保険として財布を厚くしておきたい、との動機はそこまで責められる話じゃない。

キックバック分をしっかり報告書に記載してしまうと、派閥から課された販売ノルマ未達分を自身の政治資金から穴埋めした場合、自身の政治団体から派閥への支出金として記載するしか無くなるし、同額受領を派閥団体も記載しないと辻褄が合わなくなる。

この会計処理をした時点で、当該議員のノルマ未達を派閥へ報告するしかなくなり、
 「自分の財布で穴埋めしたからセーフ」
とはならない。
これが未記載なら、
 「いつ誰に売った分のパーティ券売り上げか?」
がふわっとしたまま、つまり議員が当年にノルマ達成したように見せ掛ける事が可能になる。
その為だけの不法行為だったのだ。

新人議員はパーティ券の売り先を十分に確保できず、派閥から課せられたノルマ未達分について、私費で贖う事は少なくないと言う。
特別、太い支持者を持っている訳でないならば、ノルマ超過分をキックバックとして受け取ったとしても、安心して使える政治資金と見做すのは難しいだろう。

派閥からの議員当たりノルマも変わる可能性はあるし、役職の重さによってノルマも重くなるシステムになっていた。
有力議員になるほど未記載額が大きくなりやすいのは、顔が売れてパーティ券が捌きやすい事もあるだろうが、有力議員になった自覚があればこそ役職に就いた時のノルマ増加に耐えられるだけより多く捌こうとの意思が働く環境が影響している。


別に「政治資金規正法違反を許容しろ」とは言ってない

私は自民党の党員でもないし、個人献金する程、自民党に心酔してる訳でも無い。
また、明るみになった政治資金規正法違反について、目を瞑れだなんて主張をしたい訳でも無い。

私が言いたいのは、
 「問題の大きさに見合った”問題視の程度”があるだろう」
と言う話だ。
贈収賄でもなく、脱税行為でもなく、形式犯の政治資金収支報告書の不記載、虚偽記載と言う問題。
その問題のサイズに合わせた問題視を行えないメディア、野党、そしてそれら主張に踊らされる国民の姿にうんざりしているだけなのだ。


まとめ

自民党議員があたかも私腹を肥やしたかのようなイメージを持ってる国民は少なくないだろう。
事実関係なんかどうでも良くて、「悪辣な自民党」とのフレームアップさえ出来れば万々歳のマスコミ、反対野党による大勝利だ。

検察があたかも自民党に忖度したかのような言説がX上で盛んに拡散されている。
だが、検察は政治家案件をやりたくて堪らない組織だ。
特に特捜部は政治家案件でより大きな成果を挙げようと躍起になる。

そういう検察が早々に政治家個人の立件は到底無理とさじを投げたのは、事実、政治家を脱税で挙げたり、政治資金収支報告書虚偽記載の実行犯、共同正犯と見做せるような話は幾ら探しても出て来なかったと言う事に他ならない。

 「悪辣な自民党議員」
との確証バイアスに苛まれていると、
 「何故、自民党議員が立件されないのか?」
との疑問を抱き、その認知不協和を解消する為に
 「立件しない検察もまた、歪んだ存在だからに違いない」
と証拠も無しに疑うようになる。
完全に陰謀論的発想だ。

「モリカケ桜」の頃から、日本人の政治リテラシーはまるで変ってない
政治リテラシーを社会的に涵養するシステムが存在しないのだから、当然と言えば当然の話ではあるのだが。

ほんっっっっっっっっっっっっっとうっにくだらない!!

<了>

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