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「そらにかえる」栞にまつわる六つの話

五月に「そらにかえる」の本を販売させて頂いておりました。
本をご購入頂いた方には栞を一つおまけでお付けしておりまして、六種類のうちどれかが届く。という形でした。

本がこの度ありがたいことに完売となりました。
ということで、栞に載せていた小さな物語を掲載させて頂きます。

「そらにかえる」は、小説家になろうにて掲載していた作品です。note
でも裏話をいくつか書かせて頂いたので、良ければお読みいただければなと思います。
命の終わりが近づくと体が透明になっていって最期には消えてしまう世界に生きる人たちの物語です。

「そらにかえる」 (小説家になろうのページに飛びます)
「そらにかえる」の話 (noteで書いた、裏話的なもの)
私らしい作品とは (シリーズの「そのせんのむこうがわに」があまりに私らしい作品過ぎたので勢いで書いたnoteの記事)

前書きが長すぎました。


栞にまつわる六つの話
(以下それぞれ載せています)

「そんな解決方法ってある⁉」
 ツツメの言葉にササメは笑って頷く。二人は楽しそうに物語の感想を言い合った。
「次はどのページの話にする?」
「そうだね、じゃあ――」
 続きを読まない物語に、栞は必要ない。

栞①(ツツメとササメ)

「それで、どうなると思いますか?」
 ウキの言葉に首を傾げて、ヤスラはううんと考える。
「もしかすると、何もしない、のかもしれません」
「そうかもしれませんね。では、続きを読みますね――」
 すぐに再開する物語に、栞の出番はない。

栞②(ウキとヤスラ)

 ぱたんと閉じた本を、紙束の一番上に乗せてくくる。アキは立ち上がって、紐を掴むと、そのままゴミ捨て場に向かった。
 もう読まれない本に、栞はいらない。

 紙束の一番上に乗った本に、男の手がかけられる。そのままするりと抜き取られた本は、そっと鞄に仕舞われた。

栞③(アキとナギ)

 勇者は傷だらけになりながら、自分の体の何倍も大きな竜と戦います。聖なる剣がきらめいて、勇者は腕を振り上げ――。
「おや」
 小さな寝息に微笑んで、おばあちゃんは孫の小さな頭を撫でた。
 次はどこから話してあげよう。夜の物語に栞はいらない。

栞④(おばあちゃんとぼく)

 帰ってきた家の中で、二人の兄弟はようやく安心して、ぐっすり眠ることができたのでした――。
「めでたし、めでたし」
 ぱたんと少年が本を閉じ、上手に読めたねとおばあちゃんがその頭を撫でる。少年は嬉しそうに笑った。
 読み終えた物語に、栞は使わない。

栞⑤(おばあちゃんとぼく)

 輪っかを無くした天使は、翼を出せずに困って泣き出しました。そこに小さな女の子がやってきて――。
 小さな手に手を掴まれて、男は目を丸くする。幼い子供は本の挿絵に指を押し付けながら、楽しそうに笑った。
 読み続ける物語に、まだ栞の出番はない。

栞⑥(???)

お読みいただきありがとうございました。
どなたにどの話が届いたんでしょうかね。私も何一つ記録してないのでドキドキしてます。

実は栞⑥だけは、本のために書き下ろした物語の関連作品なので、誰のことなのか、本を読んだ方にしか分からないようになっています。
誰なのか、どんな物語なのか、気になる方はBOOTHの販売ページ(https://sakusakudou.booth.pm/items/5044926)から「入荷お知らせメールを受け取る」をクリックしておいて頂けると、再版されるかもしれません。と最後にしれっとセールストークをしておきます(笑)

(あととてもどうでもいいことなのですが、今回の六作品が全て「栞を使わない」なのは、これの前に限定で販売させて頂いた「花粉症の彼女」シリーズの本につけさせて頂いた栞が「栞を使う」話だったからです。こちらは希望者にご連絡頂いて販売させて頂くというとても面倒な手順を取らせていただいた本で、再販予定も公開予定もありません)

現在(2023年12月3日)また新しい本を販売させて頂いたりしておりまして、それもご購入下さってる方がいらっしゃいまして(その流れで既刊の「そらにかえる」も完売した)、何というか本当に、私の本を受け取って下さる方がいるんだなぁと胸がいっぱいです。私の「好き」だけしか詰まっていない物語を、誰かと共有できることは、この上ない幸福です。
もちろん、普段放り投げている作品たちもそう。
なんだけど、一冊の本という形あるものが、誰かの手に物理的に触れられていると考えるともう、奇跡かな???って思っちゃいますね。九州の片田舎()で作ってる本が、色んな所に・・・。奇跡かな???
誰か一人にでも好きだと思ってもらえたらな、と思って色んなものをぽいぽい放り投げています。それが目に見える形で現れる幸福をかみしめる毎日です。
いつも本当にありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。