私はこうしてつくられたepisode01

小さな私は
母が美容院に行く時は
決まってついて行ってた

退屈なんかした事ない
美容師のお姉さんが
髪を綺麗にしてあげてる
ずっと見てるだけで
なんだか楽しかった


保育園に行く前、
学校に行く前、
休日やお正月、
七五三、
地域のお祭り
どんな時でも

母は毎日
私の髪を結い
時にはメイクもしてくれた

その時の母は
楽しそうで幸せそうにみえた

そんな母の幸せそうな姿をみるのが
私の幸せでもあった

だから朝の貴重なその時間は
私にとって
いつしか大切な時間となっていた

まだ無垢だった小さな私は

髪に触れられだけで
こんな幸せな気持ちになるんだぁ
と無意識ながら感じていた

小さな私はこの時

美容師に憧れ
大人になったら
美容師になるものだと決めた

父はというと
自営業でいつも忙しい
家を留守にする事が多かった

とはいっても
子供には理解しがたい
仕事という名の
謎の接待も多く

朝方に帰宅する事も少なくない

父が帰宅した時
当てつけの様に
「おかえり」ではなく
「久しぶり」と言った事もあった


夜遅くに時々
リビングの真っ赤な
電話が鳴る

誰からだろう

受話器を持つ
母の背中は
怒りともとれる
どこか悲しげな背中だった

小さいなりに
何かを感じとった

その瞬間

母の笑顔を守る為に
父を嫌いになる決断をした


つづく

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