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藍坊主ミズカネ〜みなぎるシルバー〜
藍坊主の2010年にリリースされた5thアルバム「ミズカネ」のリバイバルライブツアー、aobozu TOUR 2024 OTOMOTO 〜みなぎるシルバー〜のツアーファイナルにお邪魔してきた。10本のツアーのファイナルとあって、演奏の完成度、熟成度、メンバーの熱量も、ファンの方の藍坊主愛もMAXな感じ。
彼らとはインディーズデビューの頃から制作を手伝い、2006年メジャーデビューの時からガッツリ制作を一緒にやるようになり、この「ミズカネ」はプリプロからスタジオにこもり、アレンジもとことん詰めた思い出があり、個人的にもとても思い入れのあるアルバム。メジャーデビューの「ヒロシゲブルー」ももちろん記憶に残るアルバムだが、この「ミズカネ」のころには、hozzyと藤森という2人のソングライターの技量が熟成してきた頃でもあり、なおかつ良い意味で同じベクトルを向き、メロディにしても歌詞にしても、あの時代の中での藍坊主というバンドの方向性を明確にした、そんなアルバムだと思う。
ビートルズで言うところの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Banda」という感じか。蒼く勢いのあるものから、より内省的で深く掘り下げていくような。楽曲も歌詞もサウンドもしかり。
アレンジも楽曲ごとに、ユウイチや前ドラマーの拓郎などが個性を発揮してより複雑で音楽的なアンサンブルによるアプローチが増えた、そんな頃のアルバム。もちろん、その後にリリースした楽曲も多くの名曲があるが、メジャーデビューから6年目のバンドとして脂の乗った時期でファンの方にとっても大切な思い出深いアルバムなのは容易に想像できる。
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そして、このアルバムの凄いところは、曲のバランスもあるのではないか。Lo-Fiな質感で、ブリティッシュな重いサウンドの「低迷宮の月」から始まり「オレンジテトラポット」「伝言」「名前のない色」など藤森の作曲による藍坊主ならではのメロディアスなアッパーや、hozzyによる「マザー」や「沈黙」のような歴史に残る名バラードもあれば、「いわし雲」「おいしいパン食べたい」など、力が抜けているけど心に響く名曲、そして藍坊主らしい(hozzyらしい)「氷に似た感応」「想像的進化」などの実験的な変態曲。(愛を持ってそう呼ばせてもらいます)。これらのバランスが絶妙で、これらの振り幅こそが、アルバムの完成度を高めて藍坊主と言うバンドたらしめている。そんな一つの完成形を見たアルバムなんじゃないかなと思う。2人のソングライターが織りなすタペストリーが鮮やかに輝いている。手前味噌だが、藤森が歌詞に迷っていた藤森の曲にhozzyが作詞してみたらどうかと進言したのは確か僕で、「オレンジテトラポット」のメロディアスで切ない藤森のメロディと、風景と心情が見事にシンクロして感覚に訴えるhozzyの歌詞の一大抒情詩が出来上がったのもこのアルバムでの大きな功績だろう。後の2人の共作には本当に名作が多い。
確か、まだアルバムのレコーディングが始まる前に藤森からストリングスのアレンジを手伝って欲しいと「伝言」のデモを聞かされた時に、メロディはもちろん、デモの時点でのその完成度の高さに驚いて、アルバムのレコーディングまで、ワクワクしていたのを覚えている。
ライブの話のはずが、当時のことを思いだして、アルバム制作時の話ばかりになってしまった。
ライブは本当に素晴らしかった。ツアーで育ったのももちろんあるだろうし、これはライブ後に、ユウイチとも話したのだが、14年の時を経たからこそ、表現できるものがあったと思う。当時のツアーや、野音も、もちろん素晴らしいライブだったけど、作ってすぐに演奏したライブはいっぱいいっぱいなところもあったが、今14年の月日を経ったからこそ、作品と向き合えて経験値が増えた今の力で表現できた。また、ファンの方のアルバムに対する思いも受け止めながら演奏できた。それがこのツアーファイナルの素晴らしさに、繋がったのではないか。そんな感想だった。もちろん、ずっと支えてくれてるキィボート・ツタくん、拓郎のドラムを完コピして臨んでくれたHAZEの2人のサポートメンバーの素晴らしい演奏有りきではあります。素晴らしい演奏を本当にありがとう!
終演後、楽屋に押しかけて興奮のあまり全員とツーショット写真を撮らせてもらったので載せます。ツーショットなので、毎度、僕の顔が写っていて申し訳ないですが。
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そして、いつも藍坊主のライブを観て思うのは、本当に良いバンドで、本当に良いファンの方が付いてるなと。メンバーもファンもみんなが藍坊主の楽曲を大好きで、それは時代に流されない揺るぎない絶対的な価値観の上に成り立っている。その心の奥に秘めた宝物のようなものを持ち寄って、この場所でみんなで分かち合っている。そんな感覚とでも言えるのが彼らのライブだなと思う。彼らの人柄によるものも多いが、圧倒的に彼らの作品が、聞く人の心の奥の感性を動かすからだと思う。歪んだ心のカタチを元に戻してくれるとも言えるかも知れない。
彼らとは長きに渡り一緒に作品作りをやれていることに感謝です。
そしてこれからも、彼らの作品作りのお手伝いをしていければ嬉しいと改めて思った夜でした。
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