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ミディクロリアンを育てる人たち

父がスター・ウォーズが好きだったので
小さい頃からスターウォーズは繰り返し見ていた。

見たことある人は知っているけれど
作中には指先から出る「フォース」という技術があって
それで人やものを持ち上げたり、危険を先に察知したりできる。

そしてこのフォースの能力は体内にある
ミディクロリアンという微生物の数が多いほど
高くなる傾向がある。

これといった宗教観もなかったけれど、
小さい頃はフォースを信じていた。
きっと高いはずの自分のミディクロリアン数値を
マスターに確かめてほしかった。

May the Force be with you.
(フォースと共にあらんことを。)


大人になった今、
もうフォースは信じていないけれど、
だけどフォース的な何かが足りていない。
そうだ武道をやってみよう。

そしていろいろ考えた結果、
合気道の道場をたずねることにした。

調べてみると合気道の道場はいたるところにあった。
私の最寄り道場は家から歩いて10分の中学校だった。


合気道の道着は、
白い柔道着の上に有段者は紺色の袴を着る。

これはメリハリがあって、
他の武道にはないかっこよさがある。

ちょっとジェダイみたい

合気道には試合がない。
稽古は、先生が前に出て、
一人生徒を呼び出し、技のデモンストレーションを行う。
これを見たあとに同じ技を生徒同士で掛け合って練習する。

初めて合気道の技を受けると
気づいたら身動きが取れなくなっている。
あまりに簡単に投げられるから思わず笑ってしまう。

「合気道は触らないで倒しているの?」
と聞かれるけれどそういう訳ではない。
体の関節が固まる方向に、そっとぶん投げられる


技の名前は
一教、二教、三教や
四方投げ、入身投げ、天地返しなど
アニメに出てきそうでかっこいい。

そしてこれらの技を一通り練習をしたあと
最後に練習するのが「呼吸法」である。

これがおもしろい。

二人正座で座って、
相手に両腕を握られた状態から
相手をひっくり返す技である。

もうシチュエーションは無理ゲーである。
両腕を握られているのだ。

だけれども合気道の達人たちは
こちらが本気で掴んでもひっくり返してくる。
これはびっくりする。

まるでフォースで持ち上げられたように
ぶん投げられてしまうのだ。

この相手を自在に投げ飛ばす力を「呼吸力」という。
この「呼吸力」を合気道家は何年もかけて磨くのだそうだ。

これを聞いたとき、日常生活からかけ離れた
深い武道の世界に触れた気がして
急に先生がジェダイに見えてきた。

先生がジェダイだとしたら、
「呼吸力」はフォースである。

自らのフォースに目覚め、フォースを磨く。
今日もジェダイたちに混じって、
へっぽこパダワンである私も練習する。

May the Breath be with you.