吉野貴博
頭の中のトイレ:トイレには行かない方がいいんじゃないかなぁ、というお話

頭の中のトイレ:トイレには行かない方がいいんじゃないかなぁ、というお話

吉野貴博

 トイレには行かない方がいいんじゃないかって話なんですけどね、勝手に頭に浮かんでくるトイレには行かない方がいいと思うんですよ。

 話を持ってきたのはAさん学生なんですけどね、私が書いた〝入眠時心象〟を読んで話を持ってきてくれたんです。

 入眠時心象とは何か。
 布団に入って目を閉じましてね、頭ははっきりしてます、眠気はありません、眠ってません、そこで、まぶたの裏に映像が見えるんです。
 いやそれ眠ってるんじゃないの?気がついてないんじゃないの?と思う人、いるでしょう、ところがこの状態では、なんの力も入れず目を開けることができるんです、目を開けて朝になってるってこともありません、起きてるんです。
 映像に人がいることもあります、その人と話をすることもあります、ただ私の場合、まともな会話が成立しないこともありまして、面倒くさくなってリセットしようと目を開けるんです。
 この入眠時心象って私は長らく夢の一種だと思っていたんですけど、最近ネットで検索してみると、夢とはまた違うようなんですね、

 Aさん、明日実家に帰省しようって晩に、布団に入って目を閉じました。
 いつもなら皆さんもそうでしょうけど、一日何があったか反芻するとか、空想をするとかでしょう、Aさんもそうなんですが、その晩は違って、実家の映像が見えたんです。
 え?と思って目を開けます、電気が消えた部屋の中が見えて、あ、夢かと思ってまた目をつむると、また実家の映像が見えます。
 なんだこれ?と思いつつ、まぁ別に怖いことでもありませんので目をつむったまま実家を見てみますと、
 玄関のドアが全開なんです、振り返って玄関から門まで誰もいません、外の見える範囲に近所の人もいませんし通行人もいません、誰もいないんですが変な雰囲気でもない、おかしいところが何もないので玄関に入ります。
 靴が一つもなくて、家族は出かけているのか存在しないのか、とにかく誰もいないようです。
 靴を脱いで廊下を歩き、部屋を一つ一つ見ていくのですが、誰もいませんし物が変にあるとか無いとかもありません、普通に留守宅です。
 あー、明日帰るからこんな夢を見るのかなーとAさんのんびり家の中を歩きまして、トイレのドアを開けますとね、中には誰もいないんですが、窓が開いてるんです。
 Aさんが家を出てから替えていなければ、窓は磨りガラスで開けないと外が見えないんですよ、それが夢の中では窓の外に変な奴が見えて、存在しないはずの窓ガラスにおでこをガンガンぶつけているんです。
 そいつはとても気持ち悪い顔をしたというのですが、どんな顔だかは教えてくれませんでした、音楽には詳しくないAさんがヘッドバンキング?と思うくらいリズミカルに強力におでこをぶつけている、しかし音はしないんです。
 おでこをぶつける行為が楽しいのか、中に入れないことが悔しいのか全然解らない顔だったんですって、両腕で窓枠も持っているんですが、添えているだけなのか握っているのかも解らない、Aさんを認識してるのかどうかも解らず、ただひたすらにおでこをぶつけている。
 Aさん、とくに怖いとも思わずしばらく見ていたんですが、キリがないのでトイレを出まして、続きを歩いているうちに本当にトイレに行きたくなって、なんでだか律儀に全部の部屋をまわって、外に家の出てから目を開けて起き上がってトイレに行って、戻って目を閉じたらもう普通に眠りについたっていうんですけどね、

「でも、これって夢ではないんですかね?」と聞いてきたAさんに私も「うん、夢じゃないみたいですよ」と答えたんですけど、Aさん実家に行って、トイレに行ったらやっぱり磨りガラスで、別に何もなかったから、普通に夢だと思っていたっていうんです。

 これ、別な意味でヤバかったんじゃないですかね?

 あらためてネットの噂をみてみると、ちゃんと手順があるようなんですね、Aさんの歩き順は、厳密にいえば手順通りではないみたいなんですけど、いやー私にはよく解らないです。

 でもとにかく、こういうのは夢とは違うみたいです。

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吉野貴博
「トイレには行かない方がいいんじゃないかなぁ、というお話」のシリーズなんですが、A君は全員別人です。話が変わるたびにB君C君D君としていくと、アルファベットが話数みたいでキリがないなと思ってA君表記で固定したのです。