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柘枝伝

 昔、味稲という男が吉野川で魚をとっていた。
 あるとき柘の枝が流れてきた。枝にはあわい黄色の花が咲いており、美しかったので持ち帰った。
 すると枝は美女の姿に変わって、柘枝仙媛と名のった。

 ふたりはいつしか愛しあうようになり、共に過ごすようになっていった。

あられふる吉志美が岳を険しみと草とりはなち妹が手を取る
 味稲が草を取ろうとしたら山が険しいので、思わず柘枝の手を取ってしまった。

 いつしかふたりは消えてしまった。
 其の話が伝わると、あるものはふたりは天をかけるのをみたといい、神仙の宮殿に飛んでいったのだろうという話になった。

 また、味稲が取り残されたという話もあるという。


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