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足摺岬

足摺岬 とはずがたり
 この岬には、堂がひとつあった。この堂では、補陀落渡海を願い、修行する僧が、小僧と共に暮らしていた。
 ある時、小法師が岬を訪れた。小僧は小法師に食事を分けて与えた。僧はそれを咎めた。
 翌日、小僧は小法師に師である僧に止められたので、これが最後に分けてあげる食事だと話した。小法師は今までのお礼にと小僧を自分の住処へと招いた。
 連れだって歩く二人を追う影があった。二人を不審がって追う僧であった。二人は岬にいくと、一艘の舟に乗り、南に帆先を向けた。

「どこにいくのだ?」と僧が問うと小法師は
「補陀落渡海へまかりぬ」と答えた。
 僧は小僧の足に縋りついた。  いつの間にか小僧と小法師、ふたりとも菩薩に身を変えていた。  
 舟は僧を残し、不思議な力で消えていった。

 僧は小僧に縋りついた。小僧と小法師、ふたりとも菩薩に身を変えていた。
 しかし、舟は不思議な力で消えていった。
 それから僧はこの話を伝え、誰にでも堂に迎えるようになった。そして岬は足摺岬と呼ばれるようになった。
 

 

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