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めをと人形

めをと人形 横手郷土史
 いつの頃か。夫婦の六部が横手にやってきた。
 妻は美しく、その容貌に心奪われた武士がいた。夫を殺し、妻にすり寄った。
 しかし、妻はいかなる甘言にも、脅しにも、宝にも靡くことも屈することもなかった。
 その怒りにより、妻は惨たらしく責め殺され、夫ともども塵芥の中に投げ捨てられた。

 それから屋敷では、病人や狂人が止まることなく、奇妙なことが起こるようになった。
 そこで、家を取り返ることになった。
 荷物をまとめ、いざ引っ越そうと思った時、先立つように二つの影がたった。それは六部にほかならなかった。
 祟りは続いた。

 そこで、ふたりの姿を美しい人形に彫り、冥福を祈った。

 この人形は人の手を伝わり、今ではある寺に納められている。


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