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封印された一書

封印された一書 古道神髄


 宮地水位先生には少年時代に友がいた。その友は左伝にはまり気が狂ってしまった。
 そのうち体が崩れるような病にかかってしまい、それでも左伝を唱え続けていた。

 友の祖母にあたる人は先生に向かい
「お札や様々な薬を使ってもこの病は一向になおらない。また、この子の兄も同じ年で同じ病でなくなった。これは前世の因果というものでしょうか。私の身を替えたいほどですがそうもいかず。しかし、この子が亡くなったら私も命を絶つつもりです」
 祖母は一つの箱を取り出した。
「これは大穴持命の秘伝で病の時に頭にのせれば病が癒えたものといいます。しかし、ここで家が絶たれれば、消えるものなのでお見せしたい」

 先生は箱を受け取った。箱は二十重に封印されたされており、開くと一巻の書物だった。
 それは出雲の古代文字で書かれており、すぐに読めるものではなかった。
 そのことを話すと祖母は自分が書いたうつしを先生に手渡した。
 
 先生は自宅に戻りすぐに訳すと、それはまさに友の病のための秘事であった。
 数回唱えると嘘のように病は癒えていった。
 
 

※宮地水位先生は、幕末の土佐で潮江天満宮の社家に生まれ、後に同社の神官となった人物である。古神道に対する学識が深く、「宮地神仙道」を開いた。
「異境備忘録」など著作を残し、多くの宗教家や神秘家に影響を残した。

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