34. 災禍・スリーデイズオフ日記。

 3連休である。が、2020年3月。天気予報でも3日とも暖かく、晴れ。仕事においては、年度末の発注した物品が、年度内に届かなくなる原因でも有る、春分の日を含んではいるが、仕事のことを忘れて、どこかにパーッと出かけたい。

しかし、世間的にはそうも言っていられない。ご存知の新型肺炎ウイルスである。空気感染ではなく飛沫感染だ、などと世間では騒がしいが、感染する側にとっては同じようなものだ。とにかく、普通に街を歩いているだけで、伝染る可能性がある。学校はとうに休みになっているし、幼稚園は通常通りに春休みに入った。いっつも休みやお金をもらう世代とずれるんだよなあ、というのは、まあおいておく。

つまり、休みだからといって、出かけないのである。妻と子供は。
私?出かけますよ、それはもう、毎日。仕事に行かなくて良い天気のいい日中、もったいないじゃないか。幸い、家にはタイミングよく手に入れたWiiがあり、妻も子供も熱中している。世間に遅れること12年、『どうぶつの森Wii』を始めると、寝食を忘れて、タイ釣りヒラメ釣りである。「またおまえかー」はスズキだ。他には、『プリキュアオールスターズ』や『ジャストダンスWii』で、体も動かしているようだ。『Wii Fit』のフラフープやパレードもいい運動になる。ついでに、『どうぶつの森』をやるために、連休の1週間前には、中古でニンテンドーDSも買ってしまった。本体とソフトで800円であった。奥さんと子供がそれぞれの『どうぶつの森』を進めている。

さて、そんな中の外出であるが、密閉された換気の悪いところがダメなのだ。2週ほど前に、やはり一人で大型ショッピングモールを覗きに行ったところ、ガラガラであった。一方で、スーパーマーケットはどこも満員である。買いだめなのか、心理的な影響なのか。

そう、心理的影響というものがある。簡単に言うと"安全地帯"という考え方だ。いつも通っているスーパー、いつも帰りに寄るコンビニやドラッグストアは大丈夫だろう、なぜならこれまで大丈夫だったから、安全地帯のはずだ。そう考える人が多いのだ。また、換気の良い外や、自家用車の中も、当然ながら安全地帯である。

それを言えば、我々にとっては、通勤に使う電車と職場は安全地帯である。朝晩ぎっしりと詰め込まれる電車。隣の人の顔が30cmほどに近いが、マスクのおかげか、幸い発症はしていない。また、職場で顔を合わす20人程度は、大丈夫なはずである。一方で、休日の昼間ともなれば、電車はガラガラで、出かけるにはぴったりである。

そうなると、日中家にいる主婦や子供に比べ、仕事に出ている人にとっては、安全地帯が広い。電車で2時間通勤でもしようものなら、ほぼどこに行っても安全だ。こういう、一度通ったところを安全と考える考え方を、個人的に"RPG脳"とよんでいる。RPG脳なので、いつも出勤で使っている路線と、外なら安全であろう。その代わり、途中で寄る店などは、滞在時間を減らす。基本的には歩くのだ。

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1日目。日差しは温かいが、風が強い。軽い昼食を取って、妻と子供を残して家を出る。家を出たからと言って、目的など無い。目的がない場合の行き先は、ハードオフとブックオフである。先週までの週末でも、すでにあちこち行きまくっているので、かなり行けるところは少ない。片道200円ほど払って、一日目から安全地帯の外に進出する。

東武線の上り電車、O駅からの下り電車ともにガラガラである。ベンチシートに1人ずつしか座っていない。こんなもん、家にいるよりも安全なんじゃないのか。K駅で降りた後、まずはハードオフに向かう。

流石にガラガラの店内。楽器類は昨年買いまくったので、ポケットに入る大きさまでしか買えない。軽く流して見て、めぼしいものがないことを確認し、慣れないゲームコーナーへ移動する。ハードオフのゲームコーナーは、店舗によってかなり異なっている。この店の場合、棚の下にWiiの100円ゲーム、CDケースにDSのパッケージ無しソフトが入れられているようである。そこから、Wiiの「リモコンバラエティー」なる、チュートリアル系のソフトを1本購入することにする。ニンテンドーDSiが「不具合あり」だけ書かれて500円。うーむ、どういう不具合なんだろう。先週購入したものより、状態が良さそうだ。また、おもちゃの中から、初代のプリキュア2人の指人形が出てきたので、子供へのお土産代わりに購入。1つ50円。上着を着てきたのが仇となり、図らずも店内では汗だくとなったので、退散することとする。

次に、駅前のスーパーの2階にあるダイソー。家の近所のスーパー同様、やたらと人がいる。この地域の人たちの安全地帯なのであろう。イナカなのでまだ大丈夫かと思っていたが、東京近くで感染した人が、K駅の近所の住んでいるという。JRで北上してるのか。

スーパーの隣のゲームセンターは、係員以外は誰もいない。係員がいて、電源が入っているのだから、営業はしているのであろう。先程通ったドン・キホーテ前や、スーパーのセルフ飲食コーナーには中高生がたむろしていたので、ゲームセンターは禁止されていて、ゲームをやる中高生は真面目で、きちんと約束を守っているんだろうか。それとも学校の先生が、常時見張っているのか。それだと、何のための休校かわかったもんじゃない。いつの時代も、教師はそういうことやるよね。

続いて、駅からほど近いブックオフへ。服を中心としたブックオフなので、本の品揃えは悪い。流石に知らんおじさんやおばさんたちと近づきたくないので、超高速で背表紙を移動しながら流しチェックする。続いて、ゲームコーナー。WiiもDSも多い。DSのパッケージ無しソフトは、またCDのケースに入っている。この当りでは、そういうのが流行っているんだろうか。『Yesプリキュア5』のパッケージ無しが264円の3割引…えーと、いくらだ?…200円くらい?とざっくり試算し、レジへ。5%割引も加えて、192円になった。レジに並びながらスマホで調べたが、5歳児にできそうな内容ではないのが気には掛かる。小さなSDカードのようなDSカセットを袋に入れ、店を出る。

そこから西へ約2km。もう一つブックオフを覗き、文庫本を2冊購入。やはりこのブックオフは、本については硬派を貫いていて好感を持てる。ゲームは棚卸し中なのもあり、いまいちである。せいぜい5kmくらいしか歩いていないがそこで帰宅。家の近所の桜が結構咲いている。あれ?1週間早くない?

しかし帰宅後、ブックオフで購入した『Yesプリキュア5』のカセットが、かばんをひっくり返しても出てこない。紛失したのである。たかが200円、されど200円と落ち込む。風呂に入りながら、おそらく購入した店で落としたのだろうなどと考えるが、後の祭りである。問合せて、店に仮に有ったとしても、電車賃のほうが高く付く。今後、小さいソフトを購入した際に、落とさないように筆箱のようなものを持ち歩こうと思う。

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連休2日目。朝から暑い。
子供は10時過ぎまで寝ているが、こちらは朝から時間を無駄にしないよう、一度職場に行って仕事の仕込みをした上で、外出することにする。外出の頭で家を出たもんだから、電車内で読む本の内容が頭に入ってこない。有川浩なら大丈夫だと思ったんだが、どうでもいい17歳女子が鬱陶しいだけで、どんどん読み飛ばしてしまう。職場に着き、スマホを充電しつつ仕込みに向かうが、週末前に用意していたサンプルはダメになっていた。幸先悪いな。

気を取り直して、いつも行かないハードオフに向かってみる。駅からの距離は2kmほど。途中には、コンビニの1軒もない。田舎だー。車がビュンビュン走るのを横目に、ひたすら歩く。暑い。内に着ていたセーターを脱いでみるが、それでも暑い。上着も脱いでシャツだけで歩くが、それでも暑く、3月だというのに腕まくりをした。

田舎とはいえ、電車や大型幹線道路に近いため、店はないが、面白い会社や工場がある。こういうところもテレワークとかやってるのかね?工場は無理か?ちなみに自分の職場は、テレワークと無縁なようで、営業の人達はずっと文句を言っている。病院などには入れてもらえないことがあるようだ。

どう見ても元スキー用品店でタイヤを売っている店のところを曲がって、暫く行くとハードオフだ。実に2年ぶりの再来店である。周りに工場などが多いためか、工具などが大量に売られている。こういう工具を工場の人が買うんだろうか?いやいや、廃棄の時にハードオフに売りに来るんだろうか?廃棄業者が横流ししている説が有力だ。

店内に入ってびっくりするのは、田舎にも関わらず、ゲーム類が多い。どうせ、現行機種、人気ソフトなどは眼中にないので、とっととジャンク品売り場に移動。楽器は安物ブランド、家電はミニコンポが多い。ゲーム機本体も多い。これは、工場で就職するために上京し、あまりにも暇な定時後を、通販ギターやゲームで潰していたのだろうとプロファイリング。

安ギターをこんなところで買うのはなんなので、ゲームソフトジャンクコーナーへ。こちらもメチャクチャに数が多い。ファミコンからスーパーファミコン、何か知らんのもたくさん。私の目的はWiiとDSなので覗くと、『Wii Fit』が300円、『Wii Sports Resort』が1000円。高すぎる。先程のプロファイリングは撤回。単に値段が高くて、売れないから品数が多いのだ。

がっかりしつつ、駅に戻るのをやめ、別のルートで違うブックオフを目指すことにする。Google Mapsで確認すると、約5km。1分80mの計算で、1時間ちょっとの計算だ。ちなみにこの1分80mというのは、不動産業界の単位らしく、ハイヒールをはいた女性の速度から換算しているというのはウソかマコトか。

途中の学校や川沿いの桜は、もうすでに7~8割咲いてしまっており、入学式はおろか、来週末までも持たないだろう。テレビでは花見も自粛すべきと言っているが、歩いて通るくらいは、屋外のオープンスペースだから良いだろう。明日にでも歩き花見をするべきだ。

S県は、都内から道路が伸びているため、南北は放射状、東西は緩やかな曲線、全体には扇形に道が走っている。つまり、単純に南北や東西に移動しようとすると、間違った方向に進みがちだ。住宅地の中を突っ切って南下すると、大縄跳びをしている家族がいる。わざわざあのために大縄を購入しているのか。我が家も、子供の幼稚園でのイベントごとのために、買わなくて良いものを買ったりはするが、大縄は買わないだろう。

小さい子供が家の前や車庫で遊んでいるのが目立つ。気持ちはわかる。わかるんだけど、自家用車だって安全地帯なんだから、車通りが減っているわけではなく、むしろ住宅地を飛ばす車が多いように感じるので、家の中で遊んだほうが良いのではないか。我が家の子供は、4歳で立派に花粉症になったので、全然でてこないけれども。

途中のスーパーは人だらけだ。50人以上集まらせないこと、なんて言っていても、安全地帯であるスーパーは別物だと思われている。家にこもるために、食べ物の買いだめをしているのだろうか。それにしては人手が多い。また、昨日もだったが、ファミレスに人が多い。特に高校生くらいの若者が、入り口付近にワサワサいる。あまりに暇になったので、食べ放題やソフトドリンク飲み放題に集まってくるようだ。この辺の客層は、元々ゲームセンターなどには行かず、ファミレスでつるむのであろう。、ファミレスは家族でもしばらく行かないほうが良さそうだぞ。

ところで、電車は安全だと強がってはいるが、実のところ、私ももう罹っているのではないかと思うことがある。おそらく罹っても発熱はしないであろう。これまでもインフルエンザの発症をしたことがない。でもおそらく罹っていた。今回も、罹って早々に直ったという方に賭けたい。そう思いながら歩いていると、胸のあたりが痛いような気がしてくる。

大きな道路を渡り、ようやくいつもの巨大ブックオフだ。電車では5分もかからないが、歩くと1時間ちょっと。外を歩くのは、電車よりも安全だと信じて歩くしか無い。まだ10kmも歩いていないが、大物を買う気力は失せているので、楽器コーナーは横目で見る程度である。480円のベースアンプは、2ヶ月以上売れなかったのに無くなっていた。ふむふむ。

ゲームコーナーでは、何やら思案している親子。ゲームハードを買うものはないのだが、充電器などを覗いていたところ、その親子の前にあったプレステ3を別の家族が持っていった。思案していた家族は「あっ…」。中古品はな、目にした時にまず手に取って、そこから悩まないと、スルーしたら二度と手に入らないもんなんだよ、と心のなかでつぶやきつつ、その場をあとにする。

ゲームソフトのコーナーでは、ニンテンドーDS『どうぶつの森』のパッケージ無しが100円。先週パッケージ付きで300円だったけど、説明書いらないからそれでよかった。『絵心教室DS』という、フリーに絵が描けるDSソフトを100円で購入して店を出る。ペンのあるデバイスで、なにか作れないかと思っていたところだったので丁度いい。たかがゲーム機であっても、受け身のゲームだけでなく、創作という入力ができてほしいのである。まあ、妻と子供に占領されているため、ほとんど使わないだろうけれども。

帰宅すると、住んでいるK市で、社内感染で3人の感染者が出たとのこと。その内1人は1週間前に感染がわかっていたということ。まあそらいますよね。1時間以内で都内に出られる土地なので、都市の規模にふさわしくない人口と、1日の人の出入りの多さが存在している。「社内で濃厚接触」って、なんか、いやらしいな。

*

連休3日目。天気も良く、相変わらず暑い。
流石にデブ性、ではなく出不精な子供と妻を連れ出し、コンビニでおにぎりと弁当を買って駅へ。妻と子供は幼稚園とスーパーと家で1ヶ月過ごしたわけだ。ピアノ教室も休みになっているし、近所の塾の迎えも最近見ない。学校も塾も休みだと、この世代の学力低下は、後々効いてくるかもしれない。

電車は案の定空いている。シートに1人ということはないが、せいぜい3人だ。一人ずつ空けて座れるので、みんな荷物を座席に置いている。普段なら怒られる座り方だが、感染予防という意味では、正しい座り方のように見える。

そういえば、連休前、所長に「こんな時期、電車なんか乗りたくないよねー」「4月に学校再開になったら、一発で感染するよー」なんていうことを言われたが、こっちは毎日、満員電車で通っとんじゃ。行きも帰りも前後の人と密着なんじゃ。たぶん罹っても症状が出ないから、真っ先に伝染るのは所長じゃと思いつつ聞き流した。

一駅乗り、徒歩5分の河原では、ソメイヨシノが8割方咲いている。4月に残っているのは枝垂れ桜くらいになりそうである。例年ならみっしりと花見客がいる河原のベンチも、2つに1つは空いている。広めのベンチで弁当を広げ、子供はおにぎりにかぶりつく。弁当にはシナシナの唐揚げ。別に買うべきだったか。子供がボロボロと落としたご飯粒に、待ってましたとばかりに1cmくらいのヤマアリの仲間が食らいつく。早々に食べ終わって、アリが体の数倍はあるごはん粒の塊を運んでいるのを、家族で眺める。子供は「アリサイズの弁当ができるね」などと言っている。

隣のベンチには、別の家族が座った。わざわざレジャーシートをベンチの上に敷いて、お菓子を取り出した。なぜかカラムーチョなどの辛いスナックばっかりである。子供におばあさんと、酒を飲むわけでも無さそうだし、感染予防に辛いものが良いとかいうデマが流れているんだろうか?そういえば、酒を飲んでいる人がほとんどいない。

食べ終わったら、早々に歩きながらの花見である。花見とはいうが、要は子供の写真を撮るイベントだ。この時期のサービスなのか、子供の手の届く高さまで枝が残されているので、桜の枝を引き寄せて写真が撮れる、ちょっとした撮影の穴場なのである。

周りを見回しても、小型犬やウサギを抱いて、乳児を抱き上げて、入学式の恰好でランドセルを背負ってなど、様々な人が撮影をしている。コスプレの人たちがいなくてよかった。

子供は案の定、すぐに桜には飽きて、ジュースを片手に「モンキチョウ、黄色くてキュート!」「モンシロいたー」などと、『どうぶつの森』のセリフで盛り上がっている。「アゲハいないの?」と言われましてもね。『どうぶつの森』で、生き物の名前を覚える子供って多そうだ。川沿いを南下していると、カモの大群やユリカモメとともに、60cmはありそうなコイがゆうゆうと泳いでいる。「コイをつりあげた…なんだっけ?」しらないよ。「ニゴイならわかるのにー。これは、コイじゃない!」そのコイは恋と掛けたダジャレだと気づくまで、何年かかるかな?

南下した目的は、何を隠そう、ハードオフである。2階建てで服中心のオフハウスとの併設だが、骨董品から楽器、オーディオ、サバイバルゲームグッズ、腕時計など、ハードオフの中でもカオスな店だ。

まずはおもちゃの2階から。子供が狙っているプリキュアの人形は、残念ながら無い。品揃えは男の子向けなんだろうな。しかし、レジの下から、パッケージ無しのDS、3DSなどのソフトがザクザク出てきた。軽く見ただけでも、『どうぶつの森DS』が10個以上、100円で出てきてめまいがする。家族の人数分買ったろうかいな。

2階は諦め、1階に移動すると、こちらにもゲームソフトが売っていた。DSの『ハートキャッチプリキュア』と『ジャストダンス2 Wii』をそれぞれ100円で見つけたので購入。買うものがあってよかった。家族連れだと、遠回りまでさせ、手ぶらで帰るのはなかなかつらいものである。

駅に戻る途中、マクドナルドでソフトクリームを食べる。最初は空いていたのに、あっという間に、あとから入ってきた高校生ですべての席が埋まってしまった。子供は、というか我々もだが、人生初の外でDS。12年前の機種だ。マクドナルドで『どうぶつの森』で海釣り、川釣り。たぬきちに「あす23日はかいそうのためお休みさせていただきます」と言われる。コンビニ化だ。

これから、外出時にはDSを持っていかなければならないのだろう。5インチスマホを3台分。何かいいケースを買わないといけないな。

明日から仕事かあ…。