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大学教授が”言いたいこと”を9割カットしてTikTok投稿したら、たった1年でフォロワーが30万人超になった話<重太みゆきさんインタビュー>

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※ 2021年9月15日に美有姫(重田みゆき)に改名

たとえば、現役の大学教授がTikTokクリエイターとして活躍していると聞いたら?

亜細亜大学経営学部教授の印象行動学者、重太みゆきさん(@shigetamiyuki)。

重太さんといえば、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系列)に代表されるテレビ番組に出演していることでもお馴染みですが、TikTokのフォロワー数も30万人以上と、爆発的な人気を誇っています。

主に投稿しているのは、自分の印象を高める“モテ仕草”を紹介する動画。

今すぐ真似したくなるテクニック!

コミカルな演出からは、あえて若年層を狙って動画を作っていることも伺えます。

重太さんはなぜ、TikTokでここまでの人気を獲得できたのか。

その道のりと裏側の工夫、さらにはTikTokを始めたことによる本業への影響についても聞きました。

日常を徹底的に“因数分解”する

重太さんの動画を見ていて真っ先に驚かされるのは、ニッチすぎるテーマ選び。

たとえば、「イケてるメンズのタマゴの割り方」や、「賢い少年のお菓子袋の持ち方」など、日常で気にかけたこともないワンシーンを動画に落とし込んでいます。

一瞬ネタにも思える、けれども本気にも見えるこれらの斬新な発想は、どこから生まれているのでしょうか?

「動画のネタが尽きないように、とにかく日々の行動を“細分化”しています。ご飯を作ろうと思ったときに、包丁をどうやって持ったらカッコいいんだろうとか、急いでトイレに駆け込むときも、扉をどうやって開けたら慌てているように見えないんだろうとか(笑)。あらゆる行動を細分化して捉えながら、面白くて学びにもなる切り口を探し続けています」

 日常を細かく“因数分解”し、アンテナを張り巡らせているわけですね。

 さらに重太さんは、自分だけでなく他人の行動もヒントにしていると言います。

「たとえば、エレベーターのボタンを押していた人に『顔やスタイルはモデルさんみたいだったのに、仕草は少し残念だったな』と感じたら、すぐに『今の人がカッコよく見えるためには、どうしたら良かったんだろう?』とイメージするんですよ」

「さらに、その場でいくつかのパターンを考えて、実際にボタンを押してみたりもします。こうしてネタを見つけたら、それをスマホのメモに残しておくことも忘れません。思いついたメロディをすぐに録音する音楽家の方のように、こまめにメモを取っています」

 TikTokではすっかり“モテ仕草の人”として定着している重太さんですが、本来の肩書きは印象行動学者 。

 そもそもなぜ、TikTokを始めようと考えたのでしょうか?

「TikTok自体は、2019年の元日から細々と続けていました。ただ、本格始動する転機になったのは、新型コロナウイルスが感染拡大した2020年6月頃。 それまでの私は、大学の授業や講演活動、テレビ出演などで年間スケジュールのほとんどが埋まっていたのですが、コロナ禍でそれが一気になくなってしまったんです」

 多忙な日々から一転、自分の次なる活動について頭を悩ませることになった重太さん。

どうしようかと思案していたとき、偶然目にしたニュースが心を動かしました。

「そのニュースでは、コロナ禍で笑えなくなった人が増えていると話していて。自然と『じゃあ私が少しでも笑わせなきゃ』という使命感が湧き上がってきたんです。私は“笑顔の先生”と呼ばれているんだから、自分が笑わせないで誰が笑わせるんだと」

こうして重太さんはTikTokへの注力を決意します。

それから約1年。

重太さんの動画は多くの笑顔を生み出し、アカウントは30万人以上に支持されるほどの急成長を遂げたのです。

「テレビに出られてよかったですね!」というコメントからわかること

 TikTokでのヒットは、重太さんの仕事にもさまざまな変化をもたらしていきます。

 なかでも大きく広がったのが、ファン層です。

「面白かったのはテレビに出演した際、TikTokで『テレビに出られてよかったですね!』という応援コメントをいただいたこと。テレビには10年以上前から出ているんですが(笑)、今の世代にとっては逆転しているんですよね」

「これまで私の講演会や研修に参加してくださる方は、30〜40代の婚活中の女性や、ビジネスを成功させたい男性が多かった。それが現在は中高生、さらには親のスマホで動画を見てくれた小学生まで、ファン層がさらに広がっています。近所のスーパーを歩いていると、子供に追いかけられることもありますから(笑)」

 つまり、これまで重太さんを知らなかった人がTikTokに触れて、さらに認知が広がっているのです。

 では、テレビとTikTokではコンテンツの作り方に違いはありますか?

「これまではすごく”理論”を求められていた気がしますが、TikTokではあくまでも結果重視で”おもしろさ”が大事です。なので、動画の冒頭では必ずキャッチーなタイトルを伝えています。動画がまずおもしろいか?最後まで見たいと思う内容か?を何より重視する必要があります」

「具体的には、『カワイイ女の子の〜』『イケてるメンズの〜』『かしこい少年の〜』といった主語のあとに、『リンゴのむき方』『道の急ぎ方』『バレンタインチョコのもらい方』など、今まで誰も気にしなかったような馴染みのないテーマを持ってくる。一体何をするのかと、視聴者の頭にクエスチョンマークを浮かべさせることがポイントです」

確かに、一言目からグッと惹きつけられます。

 その先の内容も、テレビとはまったく異なるノウハウを使っているとか。

「たとえば、第一印象を良くする方法を伝えるとき、テレビでは理論を前面に出します。必要に応じて複数のケーススタディを提示しながら、しっかりと説得した上で実演を行うんです」

「ですが、TikTokの場合、理論を伝えるパートはすべてカットします。自分の中にある知識は全部ナシにして、実演だけを見せる。そして、最後に『やってみてね』『やってみろよ』という一言を加えて、視聴者がモノマネをしやすくなるように後押ししています」

 TikTokで見せるべきは、何よりも結論。重太さんは徹底してそのルールを貫いていました。

 また、反響の集まる動画の傾向についても聞いてみると…。

「視聴者にとって身近なものを扱っている動画は伸びますね。マフラーの巻き方やボールペンの渡し方など、身近な行動をすぐに変えられる動画が人気です」

 たとえば、飲食店などでのジャケットの置き方を披露したこちらの動画は、なんと500万回再生を突破しています。

コストも手間もかからないし、何よりカッコいい! つい真似したくなりますね。

 重太さんの動画から気づかされるのは、食事やビジネスのマナー以外にも、所作を美しくできるポイントは無数にあること。

 視聴者に新しい視点を提供するのは、狙いのひとつだったと言います。

「ビジネスマナーって、ビジネスをしている人のものですよね。大切なことではありますが、それよりも笑顔や態度の良さ、行動から滲み出るカッコよさや可愛さを気にしている方のほうが、人口としては多いはずなんです。そして、そういったベーシックな部分はお子さんから年配の方まで、誰でも今すぐ変えられる。TikTokを通じて、それを伝えていきたいと思っています」

大学教授や講演家、評論家がTikTokを活用するには?

 さらに気になるのが、TikTokを始めたことによる本業への影響です。

 大学教授や講演活動、テレビ出演などにポジティブな影響はあったのでしょうか。

「もちろんあります!今までは印象行動学者 として講演やテレビ番組などに呼ばれていましたが、最近はTikTokクリエイターとして声がかかることも増えました。若者の関心を集めたい企業から質問を受けることも多いですし、なんと海外でもその映像がバズって、アジアのアイドルや俳優さんたちが今では私のモノマネを沢山してくれるようになりました。」

 TikTokでの成功がパイプになって、仕事の幅が広がっているのです。

 それに加えて、驚くべきシナジー効果も生まれています。

「現在はコロナ禍で、生徒と長く喋ることができないのです。そもそも対面型の授業には人数制限がかかったり、登校日が限られたりもしています。こういった時代の中で教育者に求められるのは、短いコメントで本質を伝える能力。TikTokを始めたことで、たった一言でストンと腹落ちするアドバイスをできるようになったと思います」

 TikTokで磨いた“短く伝えるスキル”が、ウィズコロナ時代を生き抜くスキルに変換されているとは……!

学生からの反応も良いそうです。

「在校生以外の学生の場合、私をTikTokクリエイターとしては知っていても、大学教授としては知らないケースが多いんですよ。だから、入学式やオープンキャンパスでは『なんでいるの!?』と、とにかく驚かれましたね(笑)」

 一方で、大学教授、講演家、評論家といった立場の人たちがTikTokを活用する事例は、まだ多くありません。

 彼らがTikTokを使う場合、どうしたら本業にうまくフィードバックできるのでしょうか。

「TikTokを活用する上で大切なのは、伝えたい内容の9割をカットすること。話したくなる気持ちを我慢して、最も重要な一言だけに絞り込まないといけません。自分が言いたいことを言うのではなく、相手が知りたいことだけを言いましょう。その上で魅力的な動画を発表し続けられれば、本当に伝えたいことを披露する場を、誰かが必ず作ってくれます」

どの0.5秒を切り取っても、同じ“重太みゆき”でありたい

 大学教授からTikTokクリエイターまで、複数の立場を使い分けるマルチプレイヤーである重太さん。

 最後に、フィールドをまたいで活動する上で心がけているルールも教えてくれました。

「私が大切にしているのは、見られる場所によって印象が変わらないこと。たとえば、大学で授業している姿を見て、『テレビのときと違うね』『TikTokとは別人だね』と言われたらダメなんです」

「大げさかもしれませんが、見てくれた人に夢を与えられる存在でありたいと思っていますから。人間の第一印象は0.5秒で決まると言われていますが、私はどの0.5秒を切り取っても、同じ“重太みゆき”でありたい。どの姿を見ても『笑顔で楽しく生きようとする姿勢はブレないな』と思ってもらうことを、すごく意識しています」

奇抜なテーマにクスリと笑えて、モテ仕草も身につく重太さんのTikTok。

これからも全国各地で、イケてる人たちが増えていきそうです。

クリエイタープロフィール

重太みゆき(@shigetamiyuki

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重太みゆき インプレッションマスター®︎ 亜細亜大学 教授 印象評論家。国際線客室乗務員などを経て、インプレッショントレーニング®︎を開発。アジア各国を中心に各メディアで活躍、多くの著名人やプロアスリートへの印象アドバイスを行う。アメリカ合衆国ニューヨーク州ベスト・オブ・マンハッタン受賞 TikTokオーディション2021受賞。

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