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「GDP貢献額4741億円、雇用2.6万人を支えるTikTok」

ショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」は2024年5月27日、「TikTok Socio-Economic Impact Report 2024〜日本における経済的・社会的影響〜」*を発表した。これによると、TikTokによって生まれた消費から推計される国内GDP貢献額は4,741億円。支えられる雇用者数は2.6万人にのぼるという。「TikTok売れ」という言葉も定着した感があるが、上記のレポートには「TikTok利用者の30.5%**は、TikTokで動画を見て商品やサービスの購入経験がある」との数字も。このように、TikTokはいまや様々な分野におけるプロモーションの場として確実に存在感が増している。ビジネスシーンにおけるTikTokの影響力をどのようにみているのか、そしてTikTokの成長のカギはどこにあったのか。TikTok Japanゼネラルマネージャー 佐藤陽一氏に話を聞いた。

*マクロミルへ調査委託し作成
**2024年3月に国内の約1万人を対象に行った調査に基づく

TikTok Japanゼネラルマネージャー 佐藤陽一氏

――今回発表された数字は、どのようなインパクトを持つと考えていますか?

佐藤陽一氏(以下、佐藤)
 「TikTok売れ」が一過性のブームではなく、TikTokがビジネスに欠かせないプラットフォームとして定着、拡大していることを示す数字だと思います。またTikTokは「若年層だけが使っているアプリ」と思っている方もいらっしゃると思いますが、今回の数字は、若年層では達成できるものではありません。TikTokがビジネスユーザーを含む幅広い層に利用いただいているという事実を示すうえで、非常に分かりやすい数字になると考えています。

実際に、昨今はユーザーの年齢層がだいぶ高くなってきています。TikTokからはユーザーの年齢層を公表していませんが、「TikTokの日本ユーザーの平均年齢は約36歳」と発表している第三者の調査結果があります***。意外と思われる方も多いのではないかと思いますが、これは、私たちが実感している数字と大きな差はありません。

ここ数年で、TikTokにはグルメや料理、レシピ、旅行、スポーツなど、幅広い年齢層の方に楽しんでいただけるような、よりライフスタイル全般をカバーするようなコンテンツが増えています。メディアでTikTok発の様々なトレンドを取り上げていただく機会も多くなり「トレンドの発信地点」という位置づけが定着した面もあると思います。

*** 「コンテンツファン消費行動調査」博報堂DYホールディングス、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズの共同研究プロジェクトであるコンテンツビジネスラボが発表。23年度の調査にて、TikTokの利用層の平均が35.95歳。22年度調査の34.70歳よりも1.25歳上昇している。

 日経トレンディと日経クロストレンドが毎年発表する「ヒット商品ベスト30」の21年度は、「TikTok売れ」が1位となった。そこから2年以上たち、いまでは様々な分野でTikTokはプロモーションの場として存在感を増している。さらに昨今では、YOASOBIの『アイドル』やCreepy Nutsの『Bling-Bang-Bang-Born』などTikTokをきっかけに世界中で大ヒット現象も多くなってきた。今回発表された数字は、ビジネス面でどのような影響を与えると考えているのだろうか。

――現在、TikTokを利用する企業の業種など変化は起きていますか?

佐藤
 大企業はもちろんですが、街のレストランや菓子店といったスモールミディアムビジネスと言われる中小規模の企業の皆さんに積極的に使っていただいている実例がこの1、2年で急増しています。今回のレポートにも、「TikTokの消費から生まれる中小企業への直接的な影響としては国内名目GDP貢献額のうち、中小企業への直接的貢献額が606億円、雇用者数が5300人だった」という結果も出ています。

 例えば、都内のビストロ「PLUCK AND PLANT」さんは、毎月100万円の赤字から一転、TikTokを開始してわずか3カ月で売り上げが4倍に伸びました。TikTokに寄せられたコメントを参考にメニューや接客方法など様々な改善を図ったことで来客数が増加し、黒字化を達成したと伺っています。

――こうした動きをどのように分析されていますか?

 「TikTok売れ」という言葉が話題となった頃は、例えば本、音楽といったエンターテインメント分野や、もともと販売されていた商品が、TikTokによってマスに広がるという動きが強かったと思います。

 現在はそれに加えて、先程のビストロの事例のように、TikTokをきっかけに中小規模のお店に人が集まるといった、ローカルに根付いたかたちで人気を集める事例も多くなっています。元々興味がある人は、検索などを通じて自分から探しに行くと思うのですが、TikTokの場合は検索するまで至っていないけれど潜在的に興味がある人に広く届いて、「面白そう」と思ってもらえる力が強いのだと思います。

“TikTok売れ”で重要な役割を果たし、TikTokの成長に欠かせないのが「クリエイター」と呼ばれる存在。TikTokではそうしたクリエイターに対するサポート体制を最重要事項と捉える。

――活躍の場を広げているクリエイターさんも多くいらっしゃいますね?

佐藤 多くのクリエイターが動画投稿者という枠や国境を超えて活躍しています。例えば、料理系クリエイターの「バヤシ」さんは、フォロワー数が5420万人を超えています(24年3月25日時点)。彼は日本国内だけでなく、グローバルでも人気です。23年、インドネシアの現地テレビ局が全編生放送し、TikTok LIVE視聴者数が300万人以上を誇る国民的人気イベント「TikTok Awards Indonesia」に国外から唯一のゲストクリエイターとして招待されました。

 また、カンヌ国際映画祭の様子を世界中のトップクリエイターが発信する企画に、23年は「景井ひな」さんが日本から唯一選出されました。彼女はカンヌの会場でレッドカーペットを歩き、現地の様子をTikTokでリポートする大役を果たしました。

 今回のレポートで実施したインタビューでもインタビュー対象のクリエイター全員が、TikTokで認知を拡大したことで企業案件の増加や自身の事業にプラスの影響があったと回答しています。

23年10月、インドネシアで開催された「TikTok Awards Indonesia 2023」に、日本人クリエイターのバヤシさん(写真中央)が出演。プレゼンターとしてステージに登壇した

――TikTokにとってなくてはならないクリエイターに対し、どのようなサポートが必要とお考えですか?

佐藤 大前提として、皆さんが楽しめる動画や、誰かの役に立つようなコンテンツをあげてくれるクリエイターがTikTokにとって全ての起点だと思っています。クリエイターが紹介した商品やサービス、企業・自治体とのコラボ動画を見て、ユーザーが企業・自治体に興味が湧いたり(43.3%)、商品に興味が湧きやすい(47.1%)こともわかっています。****

**** TikTok利用者1025人を対象に調査

 クリエイターの皆さんが安心して活躍できる場としてのTikTokをしっかり維持することが基礎中の基礎です。今活躍しているクリエイターの皆さんに長く活躍していただくのはもちろん、今後クリエイターを目指す方々にも興味を持ってもらえるような開かれた場であるように保っていくことが大事だと考えています。

 そのために、機能面の改良だけでなく、収益面に関しても、様々な施策を展開しています。「クリエイターを本業にしたい」クリエイターだけでなく、「副業で活動したい」クリエイターもいる中で、多様なニーズに合わせて収益を得る仕組みはしっかり実装していかないといけないと思っています。

 クリエイターの皆さんに収益を得ていただく仕組みは、何か1つの方法に特化するのではなく、総合力で様々なサポートを提供する方針です。例えば、ショート動画の制作が得意なクリエイターもいれば、ライブ配信が得意なクリエイターもいます。そうした得意分野に応じて収益化できる仕組みがなければ、クリエイターにとって魅力のないプラットフォームになってしまいます。

 また、いわゆる広告案件で企業とクリエイターをつなぐ仕組みも用意し、クリエイターにより多くのビジネスチャンスを提供しています。こうした収益面でのサポートによって、更に活動のモチベーションが高まったと話すクリエイターも多数います。

 例えば、「Creator Rewards Program」の前身となる収益化プログラムに参加した「100円娯楽(税抜)」さんは、そのわずか数ヶ月後に月収が日本の正社員の平均月収を上回りました。本プログラムで得られた収益は生活費以外にも、より動画制作に集中できる環境づくりや機材に投資し、クリエイターとしてさらなる成長に集中することができています。

 また、「やみちゃん」さんは、TikTokを「人生をポジティブに変えてくれるチャンスが眠っている場所」と表現します。TikTokをはじめてから美容クリエイターとして人気を集め、自身でプロデュースした美容商品は発売から1年余りで100万個近くを販売。さらに、地元愛媛での広告ジャックを皮切りに世界で1万店舗以上展開されるなど、次々に夢を実現してると言います。

 TikTokを始める前と比較すると企業様とのお取り組みは100倍近くまで増えました。

<TikTokの主なマネタイズ施策>

――そのほかにクリエイター向けに取り組んでいる施策は?

佐藤 例えば、人気クリエイターがファンや地元のコミュニティーと交流する各種イベントを全国各地で開催しています。TikTokに投稿される動画の情報は東京など大都市圏のものだけでなく、方言ネタや地方ならではのあるあるネタも人気ジャンルの1つとして確立しています。いまはスマホ1つあれば、誰でもクリエイターになれる時代です。地方でのイベントをきっかけに、地方在住の方々にも、「面白そうだからやってみよう」とクリエイターを目指してもらえればうれしく思います。

 また、次世代のTikTokクリエイターの発掘・支援を目的にした「TikTok Creator Academy」のような、クリエイターの皆さんの制作活動を実践的にサポートする施策も好評です。現役のトップクリエイターが講師役となり、未来のトップクリエイターを目指す受講生に対して、動画制作や収益化のノウハウなど、実践的な内容をレクチャーします。

――このほか、注目している分野や強化していきたいポイントはありますか?

佐藤 特に日本はコンテンツを見て楽しむユーザーが多いので、より面白いと思っていただける動画コンテンツの幅も広げていく必要があります。これから広げていきたいのは、プロのエンターテインメント業界の方々との協業、つまりテレビや映画、出版業界の皆さんがコンテンツを発信する場としてより広く利用してもらうことです。

 16年に発売された小説「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(スターツ出版)」は、発売から4年後にTikTokに投稿された1つの動画をきっかけに、若年層を中心に幅広い世代で大きな話題となり、重版を重ね、シリーズ累計発行部数130万部を突破。23年には映画化されました。

 また、TikTokに写真を投稿できる機能は、漫画との相性も抜群です。漫画出版社のコアミックス(東京都武蔵野市)は、“漫画好き”を増やすための新たな試みとして、この機能を活用した「試し読み投稿」に挑戦しました。人気漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』の公式TikTokアカウントを開設し、「試し読み投稿」を開始したところ、1つの動画だけで570万回以上再生され、漫画の売り上げは約3.5倍アップしました。

 今後は、制作するコンテンツのプロモーションのために利用いただくのはもちろん、TikTokの中での収益化もサポートできるよう機能強化を図っていきます。

 TikTokの利用シーンも「動画を見て楽しむ」という場から、生活の様々なシーンにつながって利便を提供できると、さらに広がりが出ると考えています。一部の市場で開始しているeコマースとの接続などは分かりやすい例かと思います。

 社会課題を解決するためのプラットフォームとしてもTikTokの活用を後押ししていきたいです。例えば、地方で開催される花火大会をTikTok LIVEで配信し、ギフティングで得た収益を寄付することでその地方の課題解決に役立てていただく。こうした施策は、なかなか里帰りできない方が、ふるさととのつながりを感じる仕組みになるのではと考えています。

エンターテインメントで地元を応援する取り組み「Local Love TikTok LIVE」の5回目として、2023年10月に「三陸花火競技大会」とコラボし、その模様をTikTok LIVEで配信した

 TikTokのミッションは、「創造性を刺激し、喜びをもたらす」です。多様なクリエイターが安心安全にTikTokを楽しんでいただける環境作りや収益面のサポートをさらに強化し、彼らの創造性を刺激し続けたい。また、エンターテイメントやプロモーションの場として活用いただくのはもちろん、今後さらに皆さんの生活に寄り添ったプラットフォームになれるよう進化し続けたいと考えています。

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