見出し画像

宇宙人は存在する!? BossBトーク#2 林 左絵子さん(天文学者)

「地球が丸い理由とは?」「ブラックホールは黒くない?」など、ユニークな視点から分かりやすく宇宙や物理学を解説する動画で人気のTikTokクリエイター「天文物理学者BossB🌟💫」さん。

信州大学工学部の准教授でもあるBossBさんが、さまざまな分野で「夢・ビジョン・ロマン」を追いかけて活躍する方々を招いて対談する「BossBトーク」が7月も実施されました。

第2回目のゲストは、自然科学研究機構国立天文台と総合研究大学院大学の准教授林 左絵子さん。1990年より「すばる望遠鏡」プロジェクトを支え、星・惑星系形成の研究に取り組んでみえます。2017年からは、口径30メートルの超大型望遠鏡「TMT」を作るプロジェクトに尽力されています。

「星影で宇宙に思いを馳せる」をテーマにした対談は、TikTok LIVEにて2022年7月7日21時から配信されました。星や惑星の誕生、「すばる望遠鏡」の歴史、宇宙人に関する林さんの見解など、ロマンが詰まった七夕の夜になりました。

林さんは、なぜ星と惑星の形成に興味がある?

BossB:皆さんこんばんは、ウェルカムトゥBossBトーク!本日のゲストは、40年以上に渡り日本の天文学を推し上げてきたレジェンド、林 左絵子さんです!

林:アロハ〜。よろしくお願いします。

BossB:さっそくですが、林さんはなぜ星と惑星の形成に興味があるのですか?

林:自分たちはどうしてこの場所に住むようになったのか、どうやって生まれてきたのか、誰でも不思議に思ったことがあると思います。そんな素朴な疑問を持ったまま大人になっちゃったんです。

BossB:子どものようにいつまでも好奇心いっぱいでドキドキされているのですね。

林:惑星が生まれようとしている写真を用意したので、ぜひご覧になってください。

林:卵を溶いているようなこの写真は、すばる望遠鏡が世界で初めて捉えた原始惑星が生まれようとしている様子です。下の白くなっている部分が赤ちゃん(原始)惑星で、周りの物質を食べて(巻き込んで)、徐々に成長している様子がわかります。中心の黄色い点線で囲っている部分が、わたしたちが暮らしている太陽系の大きさなので、広い惑星系になりそうですね。

BossB:素晴らしいですね。これはいつの観測結果ですか?

林:2022年に公開されたのですが、この研究グループはこれについての観測自体を何年も続けていて、過去の写真と比較すると、うず巻き部分について格段に細かいところまで見えてきました。

BossB:すごい!!

林:だいぶ画像がスッキリしたでしょう。皆さんが持っているスマホのカメラ機能がパワーアップしているように、「すばる望遠鏡」のカメラも改良を重ねた結果、より解像度が上がっているんです

宇宙人は存在する?

BossB:わたしはTikTokを中心に天文学や物理学などについて発信をしているのですが、視聴者さんから「宇宙人はいるの?」という質問がよく届きます。星と惑星形成を理解している研究者の立場として、ずばり宇宙人は存在していると思いますか?

林:もちろん。

BossB:もちろん!?皆さん、もちろんですって。もっと詳しく教えてください。

林:だって、わたしたちも宇宙に住んでいるから宇宙人なわけで、わたしたちが存在しているということは、この宇宙のどこかに地球と同じような環境があるかもしれない。自滅しないよう、きちんと環境を大切にして生きていれば、わたしたちと同じかそれ以上に科学技術が発展している宇宙人は絶対にいると思います。

BossB:なるほど。じゃあ、もしほかの惑星に行けるような宇宙人がいるのであれば、なぜわたしたちを見つけてくれないのでしょうか?

林:見つけても、話しかけようと思ってくれないのかも。

BossB:わたしたちは知的レベルが低すぎて、ヤバそうだから?

林:いえいえ、そうではなくて、地球人に話しかけても大丈夫か様子を見ているのかもしれません。

BossB:そうか、観察されているんですね!

林:きちんと環境のことを気遣って、この地球に一緒に暮らしているいろんな生き物を大事にするような生物であるかどうか確かめているんじゃないかな。

BossB:なんだかワクワクしますね、すごいなあ!

企画段階から携わった林さんが語る「すばる望遠鏡」の歴史

BossB:林さんは企画段階から、ハワイにある「すばる望遠鏡」に寄り添って、立派に育て上げてきた母ちゃんのような方ですが、その立場から「すばる望遠鏡」の歴史を教えていただけますか。

林:まず申し上げたいのは、「すばる望遠鏡」はオールジャパンで作られたのです!

BossB:おおおお!

林:4枚の写真が見えていると思いますが、左上が40年前に撮影したもので「すばる望遠鏡」の建設予定地です。ハワイ島のマウナ・ケア山頂近く(標高4,205m)に白い塔が建てられたのですが、これは温度や湿度、風の変化などを調べるための気象タワー。予定地の環境を調べてから「すばる望遠鏡」の建設が始まりました。建物の高さなどを気象タワーの情報から決めたりしたのです。

右上でわたしが指差しているのが、宇宙からの光を集めるために必要な鏡のダミーです。主鏡(しゅきょう)と呼ばれている大きな鏡を作るのはとても大変で、望遠鏡の試験の際にまずはダミーで性能を確かめました。建物自体は大体5年間で完成しましたが、主鏡は6年間かかり、建物より作るのに時間がかかったんです。

そして左下の円筒形ドームが「すばる望遠鏡」の建物です。

そしてこちらが「すばる望遠鏡」の主鏡、物の大きさとしては直径8.3メートルもある大きな鏡です。

BossB:すごい、ピッカピカ!でも主鏡って観測の時には外気にさらされているので、使えば使うほど埃が着いたりして汚れていきますよね。そうすると性能も悪くなると思うんですけど、定期的にピカピカにするんですか?

林:そうですね。だいたい3年に1度お化粧直しをします。光っているのはアルミニウムのメッキで、古くなって汚れたメッキを剥がして(薬品を使うので、左下みたいな格好で作業します)、新しいメッキを着けるんです。

星の光で影ができる、林さんお気に入りの場所

BossB:今回のトークテーマが「星影で宇宙に思いを馳せる」でした。林さんの思い出の場所について教えてください。 

林:「すばる望遠鏡」があるハワイ島のマウナケアの山頂ですね。地上に人工の光がない環境で夜空を見上げると、たくさんの星が見えますね。星の光だけで自分の影が地面に映るほど、マウナケア山頂の星空は明るいんです。

月の光で影が見えることはよくあると思いますが、影ができるほど星の光を浴びる体験をすると、天文学によりハマってしまいますね。

BossB:すごいロマンチックですね。

地球の技術力を結集して、現在は超大型望遠鏡を建設中

BossB:続きまして、星の子クイズです!すばる望遠鏡の次の、林さんの新しい子どもはどれでしょう?
①E-ELT(欧州超大型望遠鏡)、
②DKIST(ダニエルKイノウエ太陽望遠鏡)、
③TMT(30m望遠鏡)、
④SKA(1平方キロアレイ)。 視聴者の皆さんコメントで回答してくださいね。
『スター・ウォーズ』にでてきそう、形がかっこいいなど、3番と回答する方が圧倒的に多いですが、林さん答えをお願いします。

林:3番の「TMT(Thirty Meter Telescope)」が正解です。かっこいいでしょ。

BossB:めっちゃかっこいいです。

林:この口径30mの望遠鏡は、日本、アメリカ、中国、インド、カナダの5つの国で協力して作っています。こんなに大きいと、ひとつの国の技術力だけで作るのは難しいんです。だから各国の技術者を集めて、一緒に作っているわけです。

BossB:素晴らしい!「TMT」の主鏡は畳400枚分を超える広さで、「すばる望遠鏡」よりはるかに大きいと聞いていたのですが、そんな鏡をどうやって作るのですか?

林:「すばる望遠鏡」のように1枚の鏡で作るのは不可能だし、作れたとしても運搬ができません。なので小さい鏡をたくさん作って敷き詰め、機械で制御して全体で良い形にする方法を採用しています。では「TMT」の主鏡の作り方もご紹介したいと思います。

林:左上の写真は、直径約1.5mの円盤を作るためにガラスを溶かしているところです。そんな円盤をたくさん作って、次に右上の写真のようにツルツルに磨く。研磨作業は時間がかかるので、4つの国の機関で作業を分担します。

そして、一つひとつの鏡を6角形に切ってびっちり並べて、最終的にひとつの巨大な鏡になるようにするんです。ちなみに、バスケットボールのコートや「すばる望遠鏡」と比較すると、「TMT」の主鏡はこんなに大きいんです。

BossB:おお、すごいですね!「TMT」はいつごろ完成予定でしょうか?

林:まだ主鏡ができていなくて、そこがいちばん時間がかかるので、おそらく10年以上はかかると思います。

BossB:こんなドデカイ望遠鏡が完成して、何が見えるのかを想像するとドキドキしますね。

自分が不思議に思うことを追求しよう

BossB:お時間が迫ってきました。研究者になるのは若者だけでなく、40歳でも50歳でも60歳でも年齢に関わらず、好きなことがあれば今からでもなれるとわたしは思っています。研究者を目指す、あらゆる世代の方へ助言をお願いします。

林:自分が不思議に思ったことについて、周りの人から「そんなことわかるわけない」「意味がない」と言われるかもしれません。でも言われたらなおさらあきらめずに自分のその疑問を追求していってください。

BossB:素晴らしい!!当たり前や常識を疑う。それこそが研究材料になりますよね。最後に、林さんが科学畑でずっと働いている中で、良かったなと思うことを教えてください。

林:今わたしは日本の外で働いているのですが、どこの国の人にとっても、科学は共通の言葉だと思っています。科学というか、自分たちの世界を知りたいという気持ちですね。誰と話をしても、そう思う気持ちって共通なんだなということを実感して、良かったと思っています。

BossB:ああ、すごく素晴らしいです!林さん本日はありがとうございました!

次回のBossBトークは、9月15日(木)に実施予定。学びが詰まったTikTok LIVEをぜひお見逃しなく!

(すばる望遠鏡についてもっと詳しく知りたい方は、林先生の書籍もおすすめです。)

・配信アカウント:「天文物理学者BossB🌟💫」TikTokアカウント

・視聴方法:アカウントをフォローし、配信開始時間以降、プロフィールページのアイコンをタップするとTikTok LIVE配信をお楽しみいただけます。※無料で視聴可能です。
・スケジュールと出演講師
 - 日時:9月15日(木)21時〜22時
 - 出演:四本 裕子(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
 - 対談テーマ:脳がもたらす世界の歪み

禁無断転載

▼その他のインタビューはこちら


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

Twitterでも、TikTokに関する様々な情報を毎日発信しています。ぜひフォローしてください!