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米国最高裁判事任命審査公聴会

米国最高裁判事任命公聴会

先日他界したルース ベーダー ギンズバーグの席を埋めるべくトランプ大統領に任命されたエイミー・コーニー・バレット。今日は4日間の審議の二日目でした。

知っておくべき基礎知識(私はそれしか知らない=私の知ってる事全て)

●最高裁判事は9人。今までは保守派5人リベラル派4人でしたが、リベラル派のギンズバーグが亡くなり、今は5(保守)ー3(リベラル)。バレット氏は超保守なので、承認されれば、6−3で保守派の圧倒的優位となる。

●最高裁判事は大統領が任命し、上院議会が過半数で承認する。今上院は保守派共和党53席なので、よほどの事がなければバレット承認は間違いない。一度なっちゃえば、死ぬか自ら退職するまで勤められる。バレットは40代。めっちゃ若いので承認されたらあと40年くらいは席を占拠する。

●過去50年間、共和党は15人の最高裁判事を承認してきた。民主党は4人。特に純得票数では負けていたトランプはこれで3人目の最高裁判事任命。共和党はあの手この手で最高裁から連邦裁判所まで、判事を自分たちの息のかかった保守派で埋め尽くす事(packing the court)を信条としている。現在上院多数党院内総務のマコーネルのお家芸。彼はトランプ政権下51連邦判事、2最高裁判事を含む200もの判事を任命している。因みにオバマ政権下での任命判事の男性率は56%。トランプ政権下では76%

●2016年の3月、次の大統領選の8ヶ月前にオバマ大統領が亡くなったスカリア判事の席にリベラル派ガーランド氏を任命した時、共和党過半数の上院は「大統領選の年に最高裁判事を決めるのはおかしい、国民の新しい声を反映する次の大統領が任命すべき」と、審査会の開催すら拒否。結局260日以上経って時効。次の大統領トランプが保守派ゴーサッチを任命、共和党上院が承認。今回は大統領選挙前1ヶ月だと言うのに、過去の自分たちの意見など全く気にせず、兎に角さっさと審査を終わらせ、彼女を承認したくてしょうがない。

●バレットは女性が人工妊娠中絶をする権利を妨げる州法は違憲だとだとしたroe対wade判決を覆すだろうと言われている。他にも米国皆保険制度Affordable Care Act=ACA=オバマケアを解体するとも言われている。LGBTQ権利、労働者権利、消費者権利なども著しく範囲が狭まると懸念されている。

●バレットは敬虔なクリスチャンで、People of Praiseと言うセクトに在籍。家父長制度を厳守する教え。企業よりの法の解釈をすることでも知られており、保険会社利権問題であるACA、対労働者組合、対消費者裁判でもその傾向を出してくることは間違いない。

●公聴会の議長のノースカロライナ上院議員のリンジー グラームはコロナ検査を拒否。「2週間前に陰性だったんだ。やる必要なし。」とそれ以降陽性と診断された議員と接触していたのにも関わらず、検査を受けず。議会での隣の席のファインスタイン議員は80代。ってかやってる事バイオテロです。

で、今日までで騒がれている彼女の発言を見ていきましょう。

気候危機

「気候変動についてはある程度読みましたけど、確固とした見解はありません」


ノーコメント、って事です。

投票妨害

トランプ大統領が「投票でズルをしている奴らがいるぞ!」と事実無根のメッセージを支持者に垂れ流し、武装したトランプ支持者が「投票所見張り役」などと自称して投票所の周りで待機している現実に関して、ミネソタ州上院議員のクローバシャーの「投票者威嚇は違法ですか?」との問いに

「ケースバイケースなので、そう言うたられば議論には答えられません。」

その後クローバシャー氏は合衆国法典第18編594条を読み上げ、「投票所で投票者を威嚇、脅し、勧誘またはそれを企てる事は違法」、と示した。



憲法原理主義

バレット氏は「判事は意見を述べるものでなく、憲法を読み解く者であるために、書いてある事を書かれた時代背景を含めて理解し、書き手の意図を書かれたままに読み取るべき」と言った原理主義的な感じのoriginalistでありtextualistsであるそうです。

なるほど、主観を絶対に排除するために、書き手の意図のみを考慮する、一理あるような響きです。

しかしこの記事にもあるように、合衆国憲法が書かれた時点ではもちろん奴隷には人権はありませんでしたし、女性だって男性と同等の権利はありませんでした。女は教育も受けず家で子供産んで家事してろ、と言うのが常識だった時代に書かれたものをそのまま現在の判決に使うなら、女性判事なんてとんでもない、と言う話になります。

憲法にあるそう言う時代遅れの観念を補正すべく権利章典含む修正条項があるのです。


Dark Money

もうここで何をやっても、バレット氏が承認されることは自明。なので、ロードアイランド州上院議員ホワイトハウス氏はいかに議会と最高裁がカネに支配されているか、と言うプレゼンをやった。これが凄い。


環境汚染系の企業とみられる団体から多額のカネが議会と最高裁に流れ込んでいる。巧妙に名前を伏せた「寄付者」が多額の寄付金を政治団体(Federalist Society, Judicial Crisis Network, Pacific Legal Foundationなどのリバタリアン司法団体)に託す。それら政治団体は企業に良い判事を選出、PR/キャンペーンを駆使し、組織的にケースを上告(時にはプロセスを早めるため下の法廷でワザと負けたりする)する。

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このような政治団体は横の組織結託が強固で役員が掛け持ちできたり、事務所が同じビルにあったりする。そして寄付者のアイデンティティーを隠すための架空の寄付団体を何個も設立し、違う団体から寄付がきている様に(民主性を内包している)と見せかけて、実は同じ寄付者の金を数個の架空の寄付団体に分けているだけ。

要は、少数の大企業が少数の詐欺の様な機構を使って議会に金をばら撒いている、と言う事だ。

大きなアジェンダは3つ。オバマケア解体、Roe v Wadeの転覆(妊娠人口中絶の違法化)、同性愛結婚違法化。

先述のJudical Crisis Networkと言う団体は企業からの多額の寄付金を受け、保守派最高裁判事候補支持のキャンペーンを運営、オバマケアに反対する共和党司法長官に経済援助し、共和党議員オバマケア反対の声明の下書きをする。

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この下書きに署名した共和党上院議員は以下。

Mitch McConnell
Orrin Hatch
Kelly Ayotte
John Barrasso
Roy Blunt
John Boozman
Richard Burr
Saxby Chambliss
Daniel Coats
Tom Coburn
Thad Cochran
Susan Collins
John Cornyn
Mike Crapo
Michael Enzi
Chuck Grassley
Dean Haller
John Hoeven
Kay Bailey Hutchison
James Inhofe
Johnny Isakson
Mike Johanns
Ron Johnson
Jon Kyl
Mike Lee
Richard Lugar
John McCain
Lisa Murkowski
Rand Paul
James Risch
Pat Roberts
Marco Rubbio
Richard Shelby
Olympia Snowe
John Thune
Patrick Toomey

凄い数です。

そして、現在最高裁判事長であるロバーツ判事の着任後、最高裁判例に確実にこのカネの影響が見られる、と言います。

ロバーツ判事長着任後5−4の判決でかたがついた最高裁ケースは80件。80件全てが保守派の勝利。80−0。そして、その判決は全て企業よりのこのDark Moneyの要求に沿うものとなっている。80件の案件は4カテゴリー。

1。政治への金の流入の規制緩和
2。市民陪審制の無力化
3。環境保護のなどのための規制緩和
4。投票権保護法の停止

1は企業が議会を買える様に。


2は司法で、買収を禁止されている市民陪審の力を弱める様に。「市民陪審員への賄賂は違法なのに議員への寄付は合法」


3カネを突っ込んでるのはほとんどが環境破壊エネルギー系の企業である証。


4、市民の声を政治に届かなくさせる。2013年の最高裁の判決で破棄された投票者保護法。これによって今特に南部で大手を振るって行われているvoter suppressionが可能になった(ゲリマンダーや投票所閉鎖ー10分の1とか。えぐい。)。


多額のカネが政治に企業から投入される今の現状で、バレット氏は先述の企業と議会橋渡しの政治団体の強い支援を受けている。


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