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米国大統領選直前日記 (10/28)

米国大統領選直前日記 (10/28)

スイング州おさらい

何度もここで書いていますが、米国大統領選挙は「各州で勝った方がその州の選挙人全取り」で決まります。「選挙人」とは各州が持つポイントみたいなもんで、その州の上院議員と下院議員の総数です。現在全体で538ポイントあるので、270とった方が勝ちです。

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(2016の選挙人の結果表)

(因みにじゃあ上院議員と下院議員の数は何で決まるのかと言うと、まず上院議員は各州二人と決まっています。人口が1900万人(NY)でも、100万人(モンタナ)でも、二人です。「田舎の人の意見もちゃんと連邦で聞いてもらえる様に」そうなってるそうですが、それで民主主義が正当に実行されるのか、と近年問題になっています。例えば、狩猟などを趣味とする人の多い田舎の人が銃規制に反対している間に、都市部で無差別殺人があったりします。

下院議員の数は10年に一度の国勢調査で決まります。

これは「有権者」の数で決まるのではなく、住んでる人の数で決まります。しかし、都市部に住むちゃんとした書類のない移民などを国勢調査から外そうとトランプ政権は躍起になっています。


これに関する最高裁での審議が来月です。もしトランプ政権の主張が通れば、カリフォルニアやニューヨークなど、移民の多い州から、下院議員の数が減ります。問題は「書類のない移民」とは市民権、グリーンカード、ビザなどが無くアメリカにいる人たちのことですが、彼らは税金を払っています。社会的補償を受けることなく税金を払っている人達です。「書類のない移民が税金を吸い尽くしている」と言うイメージを共和党は人々に植え付けようとしていますが(そしてそれはある程度成功している)、実は全く逆で、そのメッセージに賛同する、老人用国民皆保険の恩恵をがっつりもらっている米国老人こそが、移民達の払う税金を吸っている状態です。


しかし、ここで「じゃあ老人達が悪いのか」と言うことでありません。

高齢者が手厚い健康保険を受けるのは当たり前の人権と言えます。

ここで忘れてならないのは「移民が吸ってる(とされる)税金」も、「高齢者が吸ってる税金」も、「軍事費につぎ込んでる税金」に比べたら笑っちゃう位少ない、と言うことです。

アメリカの軍事費用は次から10カ国を合わせたものより多い。そしてそれは防衛産業に横流しになっており、その政府への癒着は共和党でも民主党でも同じことです。例えば、2019、トランプ政権下で、この膨れ上がった軍事費をさらに増大する法案に「賛成」を投じた民主党下院議員は188名。反対票は40余りです。

要は見えない所で大量に税金を横流ししてる「政府」がどっちにしろ取り分の少ない団体を「あいつらが税金食ってる」と言う目眩し戦法、犬笛政治な訳です。日本でもよく見ますよね。

で、今現在の世論調査の結果を計算すると、

トランプ:259
バイデン:259

そして、最後まで分からないペンシルバニア州の20人をどちらが取るかで決まる、との事です。

だから人気絶大の元大統領オバマも自らペンシルバニア州に出かけて行って選挙活動を手伝っています。

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それ以外にも重要なスイング州、2016にトランプが僅差で取った州6州が、激戦州と呼ばれるものです。

ラストベルト3州
ウィスコンシン
ミシガン
ペンシルベニア

サンベルト3州
フロリダ
ノースカロライナ
アリゾナ

これは絶対覚えてください。

様々なニュースが出てくるのは大抵これらの州の話です。


ウィスコンシン

エーミー・コーニ・バレットが承認されると大騒ぎの間に、最高裁判事8人でウィスコンシンでの選挙についての案件が審議されました。ウィスコンシンで、パンデミックの影響で激増が予想される郵送投票の受け入れ期限を「消印さえ投票日までにされていれば、到着は遅くても良い」と法改正しようとしていたのを、最高裁がブロックしました。

今回の選挙ではパンデミックの影響で郵送投票が増えています。そしてそれをするのはコロナの脅威をしっかり認識している民主党支持者です。より多くの郵送投票をブロックすることがトランプの勝利につながります。

前回2016でトランプはウィスコンシンを取りましたが、そのマージンはたった1%。票数にして2万3000です。


フロリダ

フロリダでは2018の中間選挙で「殺人やレイプなど以外、ドラッグ所持などの前科のある州民に投票権を復活させる」と言う州法改正4条が通りました。これによって、140万人以上に投票権が新たに与えられ、その多数は黒人やラテン系、民主党支持者です。2016年、トランプはフロリダを取りましたが、その票差は113万票です。

しかし、そんな事を共和党が許すはずはありません。その後、共和党知事の働きで、「元囚人が投票する時、裁判費用を完済しないまま投票する事は重罪とする。」と言う新しい州法が通ってしまいました。そしてその「裁判費用」を元囚人それぞれ、幾らかかっていたのか、どこに行けば分かるのか、どこに行って払えるのか、が非常に不鮮明で、分からないまま投票してしまうとまた投獄されてしまうことから、結局はこの人たちは投票できない、と言う事になっています。



この6州の他にも、共和党の牙城であるテキサスまでもしかして青転するか?なんて言われています。

大統領選ではわずかにトランプがリードしているものの、知事、副知事、州司法長官などの現職保守が厳しい選挙戦を強いられています。


アリゾナやテキサスなど「サンベルト」でのデモグラフィーが変わって来ています。詳しくはnoteで書きました。




エイミー・コーニー・バレット承認

月曜日の夜にバレット氏は新しい最高裁判事として承認されました。最高裁のデモグラフィーは6保守、3リベラルとなりました。

ー個人営業歴 2年
ー裁判歴 なし
ー上告・控訴歴 なし
ー最高裁での弁護歴 ゼロ
ー弁護歴の大半は民事。刑事の経験薄
ー15年の教員歴
ー2017以前は判事経験ゼロ(2017にトランプによって連邦判事となりました)

そして150年の米国の歴史で、初めて「ただ一党のみ(共和党)の承認票で承認された」判事です。

上院議員100人の中たった52人の賛成票。(メイン州上院議員共和党コリンズ氏が共和党でたった一人反対票に入れました)

96票の党派を超えた大賛成で承認されたルース・ベーダー・ギンズバーグの後釜として、全く経験も、承認内容も全くみあっていません。

彼女の承認でこれから色々な案件が覆されることが予想されていますが、一番問題になっているのは女性の中絶の権利です。それを政府がとやかく言うこと、それを違憲とした過去の最高裁の判決を覆すだろうと。

アメリカでは過半数60%強がその過去の判決を支持しています。

民主主義が機能していない証拠です。

米国最高裁判事は
ー終身任期
ー国民投票でなく大統領任命・議会承認
ー九人

ですが、最後の「九人」と言うのは憲法では設定されておらず増やしたり減らしたりすることが比較的可能です。民主党大統領候補であったピート・ブッダジェッジは「十五人にすれば良い」と言っていました(*当時私もそれは素晴らしい案だと思いました)。

バイデンも大統領候補者としてその事を良く聞かれます。でもま、「藪坂でもない」位のスラーっとした態度で答えています。今から「判事数増やす!」と大手を振るって言うと共和党に「民主の都合でそうやって司法を操るのか!」(自分たちは散々操っているくせに)言われますから。

もしバイデンが当選したとしても、最高裁判事を増やすのは立法府から立案・承認されなければなりませんから(その後大統領のサインで成立)、このトピックでも上院議会の青転は必須、と言うことになります。


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