探究学習トップランナーインタビュー Vol5雲雀丘学園中学校・高等学校車多厚志先生・森川大伍先生
探究を軸にした新設コースと課外の探究活動
初代理事長でサントリー創業者の鳥井信治郎氏が唱えた「やってみなはれ精神」の下、自立型人間の育成を目指して2019年度に一貫探究コースを新設し、2021年度にはグローバル探究部を発足させた雲雀丘学園中学校・高等学校。
探究科主任の車多厚志先生と、グローバル探究部の森川大伍先生にお話を伺いました。
車多厚志先生のプロフィール
探究科の主任
中学3年生の学年主任
新潟大学大学院で理学博士を取得。東海大学付属大阪仰星中等部・高等学校を経て、雲雀丘学園中学校・高等学校へ。
森川大伍先生プロフィール
グローバル探究部
探究プロジェクト担当
オーストラリアにて学位を取得。留学・ホームステイ・海外研修などの教育旅行専門会社で営業職に従事。2021年より現職。
探究の原点は「本物の学び」
Q.「探究」を軸にコースを再編した背景を教えてください。
「本物の学び」が本校の探究の原点となっています。
本物の学びとは、人間の土台を築く中学・高校の時期に学問の本質に触れ、学ぶことの大切さ、おもしろさを知ることで自ら学びを深める姿勢を養うことだと考えています。
そのため、本校では探究科が始まる10数年前から、外部と連携した学びや教員が主導する課外の学びが行われていました。
外部と連携した学びは、進路指導部が主導し、大学受験や生徒たちの進路指導に活かされていました。
一貫探究コースを始めるに当たり、本校における探究的な学びを3つに分類しました。
大学や企業などの外部と連携した課外の学びは「探究プロジェクト」にまとめました。
教員が主体となって課外で行っていた学びは「探究ゼミ」としました。
そして、正課として「探究の授業」が設置されました。
大学・企業・研究機関と連携した「探究プロジェクト」
Q.雲雀丘学園らしい探究の学びについて教えてください。
取り組みとして目を引くのは「探究プロジェクト」だと思います。
例を挙げると以下のような探究プロジェクトがあります。
サントリー生物有機科学研究所での生命科学の研究
大阪工業大学との都市デザインや建築に関する探究
記憶を研究する(甲南女子大学)
生と死の間(理化学研究所)
ジャイアントパンダからSDGsを考える(アドベンチャーワールド)
など
レクチャーを受けて、実験を行い、考察してまとめるというサイエンスの一連の流れを、一つ一つステップを踏みながら学んでいきます。
有志の教員が主導する「探究ゼミ」
探究ゼミは、有志の教員が昼休みや放課後に行っています。有志の教員が、自分の得意分野や興味関心に基づいて探究テーマを設定しています。
例えば、家庭科の教員は「手作り味噌の商品化」をテーマに探究ゼミをしています。創業100年を超える井戸糀店の天然糀を使い、外部との連携も行っています。
鉄道好きの教員は、鉄道研究部を発足して、阪急電鉄の歴史を調べたり、研修旅行のプランを生徒たちがそれぞれ企画し発表するなどの活動をしています。
現代美術が好きな理科教員は、公共施設での作品展示を行う現代美術の制作に生徒たちとともに取り組んでいます。
教員自身も探究を続けているのが、雲雀丘学園らしいと言えるかもしれません。
教員が掛け持つ正課の「探究科」
探究科に専任の教員を配置している学校もありますが、本校は各教科の教員が掛け持ちで探究の授業を行っています。
教科教育と探究教育で担当する教員を分けずに、教科教育の教員が探究教育を行っているわけです。
そうすることで、色んな視点から様々な意見が出て、教員みんなで探究教育を創るようになっています。風通しの良さも、本校の特徴かもしれません。
一貫探究コースは、中1中2を基礎期、中3高1を展開期、高2高3を発展期と分けています。
中3高1の展開期は、以下の3つのコースに分かれて探究を深めます。
「ヒトを考える」アカデミックチャレンジ
「自然を考える」サイエンスチャレンジ
「世界を考える」グローバルチャレンジ
そして、高校1年生の終わりに探究論文を仕上げます。
探究で学んだことが進路や大学入試につながっていきます。
「探究」と呼ぶ前から行なってきた外部と連携した学びを活かして、推薦で大学に入学したり、研究者として活躍している卒業生もいます。
志望動機として探究を挙げて本校に入学する生徒もいます。探究を深めた結果の一つとして、推薦型選抜や総合型選抜で大学に合格する実績も出していけたらと思います。
外部との連携を行う「グローバル探究部」
Q.新しく発足したグローバル探究部の役割は何でしょうか?
グローバル探究部は、正課の「探究科」、課外の「探究プロジェクト」と「探究ゼミ」の外部連携の部分を担うために新設された部署です。
本校では探究科を教科教員が担当しているため、担任・教科授業・探究科授業と業務が多く、外部連携の部分をグローバル探究部で引き受けています。
課外の「探究プロジェクト」と「探究ゼミ」も、外部連携で行う取り組みが多いことから、外部との窓口をグローバル探究部が担当しています。
海外留学や国内外のプログラムなどもグローバル探究部が主導しています。
コロナの影響で海外渡航ができなかったため、台湾とオンラインでつないで、SDGsのテーマに基づいた「食文化から考えるフードロスの削減」について、日台合同で英語プレゼンテーションを行うプログラムを実施しました。
また、翻訳ボランティアを募集していた企業に協力してもらい、海外のニュース動画に日本語字幕をつけるプロジェクトも行いました。ただ日本語に訳すのではなく、動画の切り替わりや字幕のスペースも考慮して、適切な言葉は何かを考え、アドバイスをもらいながら、翻訳に取り組みました。
英語と教科を同時に学ぶCLIL 型学習に取り組む上でも外部連携は効果的です。
社会で活躍するための「学びの体力」
Q.新しい取り組みを行う上で、気を付けていることはありますか?
探究学習について、色々な手法を使いながら、生徒たちが主体的に学ぶことは実現できていると思います。
ただ、ITツールの導入やユニークなプロジェクトの実施はあくまで手段です。
きっかけとして、学びの入口として興味をひくものを用意することは効果的ですが、それが先行しすぎるとサービスを受けるような受け身な姿勢につながってしまうかもしれません。
大切なことは、生徒たちが自ら学ぶこと、社会で活躍するのに求められる学びの体力を身につけることだと思っています。
これまで大切にされてきた書籍から学ぶこと、じっくりと学びを深めていくことも重要です。
生徒たちが本質的な学びに足を踏み入れ、自ら歩みを進めていくサポートをしていきたいと思います。
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