Pre-PGP 2023 R6 作問後記

Pre-PGP 2023 R6 に作問その他で関わらせていただきました。今年に入ってから都合がつかず出せていなかった振り返り記事ですが、可能な限り書いていきたいと思っています。出せていないR1やR4についても、読む人がいるかはともかく埋めるつもりです。


Balance (例題)

最初はもう少し探索に寄った問題を作っていましたが、後でいい感じに易しい理詰めとなったこれに変更しました。意識したのはアンサーキーの説明で、縦軸を無視して左からというのが引っ掛かりやすいかなと思ったのでそこを明示できるように制作しました。
デザインは以前のLetter Weights (Balance)から少し変えています。Puzsq Meetsで開催されているPGP振り返り会のR5の時に無題症候群さんがこんな感じの作図をしていたので参考にさせていただきました。

Snake Pit (例題)

Fillomino成分とSnake成分を両方入れて、さらに○✕の説明も・・・と求められるものが多い例題でしたが、我ながらコンパクトにまとめられたのではないかと思います。大きい数字が自然発生するのも入れられてよかったです。
Snake Pitの胴体記号はトケタやpuzz.linkで使われている灰色マスが好みなのですが、PGPでは✕記号ということで残念でした。初出となるGM Puzzlesでは✕だったらしいですが、✕記号は数字と重ねられないという見栄え以上の短所を抱えているのでやめてほしかったところです。アンサーキーの灰丸表記との兼ね合いなのでしょうか・・・。あるいは、PGPは他にもダブルチョコで邪魔な四角を足してたりするので、印刷で生じうる問題なども考慮して灰色だけに解答上必要な情報を任せないようにしているのかもしれません。知りませんが。

Kissing Polyominoes (例題)

どうとでもなるパズルでしたが、一応左下のようなわかりやすい入り口はマストかなと思って作りました。最上段が完全に空いてしまったのが気がかりでしたが妥協しています。また、実は例題なのに✕記号の説明ができていないのですが、さりとて適当に入れて意味がありそうな場所もなく、見ればわかってくれるだろうと期待してこれも妥協しました。明らかにかけたエネルギーが小さいですが、他にもいろいろやらねばならない運営作業があるのでごめんなさい・・・。

1. Balance

Balanceというパズルは比較的得意だと思っているので、今回最初に担当することを決めました。最近の自分の出題を見返すと低配点が全然なかったのを気にして、易問枠を狙っての作問でした。Balanceの基本は一対一なのでそれを考えれば解ける問題ですが、ちょっとだけ見つけにくくするために支点部分につり合いに影響しないおもりを1個置いています。これが効いたか否か、個人差はありましたがいうほど易問でもないと感じた人もいるようです。テスターにも結局作意に気付くことなく解き切られました。
結果を見ると危惧していたアンサーキー形式の勘違いはありませんでしたが、一対一のおもりを逆にした誤答が非常に多かったです。確かにこれはミスが起きやすく、自分も重点的にチェックする部分ですね。

4. Slitherlink

残った問題を担当することにした結果、自分の不得手な(いつも言ってる)難しめループパズルが回ってきてしまいました。案の定というか結構な難産で、最初に考えた配置ネタ問題を一度捨てています。その時に出てきたナナメ2と偶端のコンビネーションが結構よさそうだったので、それをテーマに押し上げて作ったのがこの問題です。
結果的にですが、この問題は我ながらよくできたんじゃないかなと思っています。一つのテーマに対して四隅で異なる見せ方をできており、対称配置のヒント数字にも無駄がありません。難易度的にも、多少試したり他の部分を触ったりしているうちに気付けた人が多かったのではないでしょうか。中央ではずっと憧れていた小ループ禁主導で線を引いていく展開がついにできました。広めの数字空白帯が勝手に決まっていくのは作っていても気持ちよかったです。
今回は作問過程で一部ソルバーを活用しています。具体的には、「組みあがった盤面から想定ルートにおいて鍵となるヒントを消したときにどの程度決まらなくなるか」の確認に使いました。想定外の入り口で作意が壊れたりするのはなかなか手で確認するコストが高いので、それを防げるのは非常に便利ですね。これのおかげで今回の問題も四隅を全部決めてから中央に行く流れをコントロールできていたのではないかと思います。
ところでスリリンを作問しているとナナメに数字を置いたときに勝手に波及するのがかなり作問上のネックに感じてしまいます。今回だと見た目的にR5C9,R6C2にはヒント数字があった方がきれいかなと思ったのですが、ナナメヒントが辺から辺まで連鎖するとどうしようもなくなるのでここには数字を置けませんでした。ナナメに数字を並べすぎると、最初全然決まらないのにあるタイミングで一気に全部確定するみたいなことになるので展開が作りにくいのですが、世のパズラーはどうやって作っているのでしょうか・・・。

10. Snake Pit

Snake Pitはまあまあ好きなパズルですが、Fillominoのニコリらしい展開をあまりうまく作れたことがなかったりSnakeの感覚問の作り方を全く知らなかったりと作問にあたっては不安要素も様々にありました。そういう「らしさ」が現れるのを外周領域に制限することで、なんとか形にできたのかなと思います。
中央に胴体を並べるのは本家1問目でもありましたが、この問題の直接の着想元はトケタのにょろっぴぃさんの問題です。あれを見てカウンティングできそう・・・と思いつき作問を始めました。一瞬考えたのち「それは自明になるのでは?」と気付き諦めかけますが、サイズを小さくすることで何とか成立させられました。結果として引きやすくなり難しい議論が必須ではなくなったのも良かったと思う点です。
その後の外周の展開は、当初雰囲気を狙いすぎた結果複数解を出してしまい解き直してもらうみなさんにご迷惑をかけました。本当は例題みたいに大きい蛇が勝手に出てきてくれると最高なのですが、実際は細かく刻むパターンの方が小回りが利いて排除しにくいので、追加ヒント2個で成立しただけ御の字と言うべきかなと思います。コンテストでいつも大きい数字ばかりというのも良くないですし。

11. Kissing Polyominoes

目指せ易問枠その2。構成的にテトロミノセットとすることは確実なので、まあ普通に作ればちょうどよい難易度になる点はありがたかったです。外周で押さえることでIL予約を作るのは発想としてはオーソドックスなので、本家に取られていなくてよかったという感じでした。ほんとは✕表出もなしで作るつもりでしたが、出して何かがダメになるわけでもないので結局使いました。

今回のセットは本家の構成のおかげもあって初心者にもおすすめできるかなり良い仕上がりになったのではないかと思います。どの問題種も1問目が易しめで2問目が歯ごたえありという感じに統一されていて、極端な難問や逆に影の薄いジャンルもありませんでしたね。セットによって大きく傾向が変わるのはPGPの面白いところでもありますが、たまにはこういうセットも作りたいものです。

2. Balance: そうそうBalanceといったらこんなのという問題でした。良き。

3. Slitherlink: 詰めの部分はなかなか理詰めしにくい。解説ルートが最短なんでしょうか。

6. Doppelblock: 7と8の絡む部分がDoppelblockらしくていいですね。解きチェックではここに気付けずかなり時間をかけました。

8. Aqre: メインギミックは知らないと難しいかなと思いましたが、パズスクだと割と当たり前のように出てきますよね。

9. Snake Pit: 全体的にこのパズルらしさが出ていて良いですが、特に最後の詰めは気が抜けなくて巧いと思いました。

今回は作っていてかなり楽しいセットでした。ちょっとこの先私生活がどうなっていくか分からないので今後どこまで関われるかは未知数なのですが、Pre-PGPはパズルコンテストの中でも独自の立ち位置を持った大会としてこれからも長く続いていってほしいと思っています。

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