40.スラムダンク創作山王でわちゃわちゃする話(???)

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※スピンオフ※

完全自己満、創作なので苦手な方はご遠慮ください。誤字脱字あり。すみません。


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やめてよ。そんな目で見るの。
いつも、私をその目で見る。

私なんて相手にしてないくせに。

「2人でやり返す?」

差し出されたバスケットボール。
私はこのボールを受け取ったら
引き返せなくなる。
ボールを差し出した腕の太さと血管から
今まで気づかなかった男らしい体格に気づく。
一瞬で意識して、黒目が揺れた。

弾けるような笑顔を見て
世界中を敵にまわしても
あなたさえいればいいよ。
そんな気持ちにさせる。



「あいつ誰?」
見慣れないピアス姿の吉原が、校舎のベランダから急に身を乗り出して指を指す。

「さぁ…私に聞かれても」
そんな乱暴な話し方、昔はしなかったのにな。

そんな話題興味がないように
インナーカラーを入れたショートヘアを触る。
別に校則を破りたい訳じゃなくて
昔から一緒にいた吉原が、
高校生になって急にぐれたので
付き合ってるだけ。

チラッと私もベランダから校庭を見下ろす。
パーマをかけた髪型が高校に似合わない。
そこまで身体も大きくないので若く見えた。
先生…?ではないよね。
という風貌。

それが、あいつを見た最初だった。

なんかどうでもいい事を言って
一緒にいる取り巻きと笑う吉原を見つめる。

吉原と私は中学生の時、両思いだった。
彼女的な立ち位置で高3の今までずるずるきた。
でも、付き合ってはいない。
ただ、求められればセックスはする。

余計な事は言わない。
慣れたフリをする。
回数を重ねるごとに乱暴になっていく
吉原のセックスは全然気持ちよくない。
よくないけど、安心する。
まだ、私に興味があるんだと実感できるから。

吉原がクラスにいるおとなしい男子を、
校舎の裏に連れてきてみんなの目の前で小突く。
一緒にいる男子と女子がその様子を見て笑った。
くだらない。
何が面白いのかわからない。
吉原は最近、不良ごっこに精を出している。
遅れた反抗期ってやつだろうか。

小突かれた時に落とした教科書を
横に置いてあるゴミ箱に捨てる。

走って逃げたクラスメイトを吉原達が追いかける。
残された私は冷めた目で、後ろ姿を見送った。

黙ってゴミ箱を漁る。
教科書を見つけて、汚れを払った。


「優しいじゃん。」

後ろから聞き慣れない声がした。
教科書を持って振り向くと、
波巻きのパーマの小柄な男性が立っていた。
切れ長の目をしていて、口角を上げて近づいてくる。

「…誰?」
あ、こないだ校庭を歩いてた人だ。と気づく。

「なんで、あいつらと一緒いるの?」

自分に問いかけるような事を聞かれてドキッとする。
「…関係ないんで。あなたに。」

そう言って、教科書を持って立ち去ろうとする。

「ねぇ、名前は?」
気づかない内に、通せんぼされた。
小柄な身体なのに立ち止まらずにはいられない。
そんな圧があった。
不思議に思って立ち止まりながら
引かずに聞いてくる問いかけに答える。

「ミレイ。」

「ミレイちゃん。またね。」

ポケットに両手を入れたまま、その男の人は名前を呼んだ。
切れ長の目で見つめられて、思わず目をそらす。
体をよけられたので、そのまま通り過ぎる。

なにこいつ。そう思って教室に戻った。



「みっけ。」

同じような時間に、校舎裏でサボってると
そいつは私に話しかけてきた。

トレーナーを着てるから、スポーツをやってる人なのかな?と思う。
「なんで、授業でないの?」
そう言って、同じようにしゃがんで座る。

「…でたくないから。」
「つまんないの?」

吉原もサボるから。
そう心の中で思った。
でも、今日はどこにいるのかわからないから
1人で授業をさぼる。

「あのう…先生なんですか?」

「うーん。先生ではないかな。」
そう言いながら石を投げるので
やっぱり。と思う。
ふーん。と相槌をした。

「何歳?」
「ん?俺?」
自分を指差して、「22」と答えた。

「22…」そう同じく呟く。
18の私からすると、大人だった。

4つ上かぁ。そう思って初めて顔をジロジロ見る。
制服を着る自分と、その人を比べる。

横目で同じく私を見るから
目を逸らした。
何か言いたそうな目。
私を見透かしてそうで、バカにされてるんじゃないかって思う。

その日はそれだけ話して
その人は時間になるとどこかに行く。



体育館の横でまた時間を潰す。
吉原が捨てていった
私が朝あげたペットボトルを拾った。
また弱いものいじめをしてる時に
こづいてた相手にぶつけた。

飛び散った飲料水が、私にもかかった。
濡れた制服の不快な感覚。
それよりも残されたペットボトルを手に
ゴミ箱へ運んだ。

「さっき一緒にいたの彼氏?」

また、あいつだ。
振り向くといつもの目で私を見る。
どこから見られてたんだろう…。
「彼氏…じゃないけど」

けど?なんなんだろう。
あんたに関係ないのに。
「ねぇ、濡れてる。」

あ、これ。そう。吉原にやられた。
吉原は気づいてもいないよ。
バックから白いTシャツを出した。

差し出される。
「なに…」
手に取った。
「俺の高校のだけど、よかったらあげる」

そう言われて顔を見る。
いつもの目。
私の事きっと可哀想。って思ってる。

そう思うと、いても立ってもいられなくなる。
手にとっただけで私が立ち去ろうとするので

あいつが追いかけてくる。
「ねぇ、風邪ひいちゃうよ。」
優しく言われる。
その声のトーンになんだか苛立つ。

無視して歩く。
そんな目で見ないで欲しいから。

校舎の曲がり角まで来ると、
軽い足取りで走って隣に来た。

「今日も、授業でないの?」
そう聞いてくるので、後ろを向きながら
「うるさいなぁ」
と言うと、私の後ろを見てはっとする顔をする。
私が振り返るのを、静止するように
私の目を、想像してるより
大きな手が覆った。

距離がすごく近い。
私の肩を触って、片手で目を隠される。

並んでみると私より背が高い。
思ったより力強い手。
沈黙が続く。
隠された衝撃より、目の前に広がった景色に
頭が殴られるような衝撃が走る。

「ねぇ、隠すの…遅いよ。」
隠す前に見えてた。

体育館の裏で
吉原が他の女の子とキスしてるところ。

夏の気温が暑くて、私の目を隠す手は力強くて。

私は視界を隠す手を濡らした。

本当久しぶりに泣いた。
今まで我慢してたのが一気に涙になって出てくる。

もう私が好きだった吉原はいないから。
似合わないインナーカラーも、吉原も全部嫌い。
吉原に合わせる自分も、全部嫌い。
吉原が好きな女の子になりたかっただけなのに。

世界でひとりぼっちになった気がした。
でも、名前も知らないこの人が唯一私を励ます。

その人は大人のニオイがした。
手首につけられた香水のニオイを嗅いでたら気持ちが落ち着いてくる。

「もう、手いいよ。」
散々泣いた後、恥ずかしくて手を掴んでゆっくり離した。
急に、視界が広くなる。
思ったより近い距離。
心臓が鳴る。
知らないニオイ。知らない男の人。
泣き顔の私をいつもの目で見つめる。

私は18で、この人は22歳。
この人は…。

「ねぇ、名前は?」
制服で涙を拭く。

「俺?一之倉。」

一之倉。名前をもう一度呟く。
「やっと、俺の事見た。」
そう言って切れ長の目を線にして笑う。
泣き止んだ私を見て
「またね。ミレイ。」
そう言って頭にポンと手をのけて、どこかへ行く。

手で頭を触る。
一之倉の手は想像より大きかった。



なんでだろう。
吉原が子供に見える。

キスしてた女と私の前でくだらない話をしてる。
そういう事ね。
最近取り巻きに加わった女と出来てたんだ。

そう思いながら紙パックのジュースを飲んだ。
吉原のキスの衝撃より
私は、心に急に芽生えた気持ちに驚いていた。
なんなのかは気づかないふりをする。


その気持ちを抱えて
いつものようにベランダでたむろする。

私、いつまで吉原達と一緒にいるんだろう。
急に場違いな気がしてくる。

そう思いながらベランダから景色を見た。
その時
校庭を歩く、一之倉を見つける。

目で追う。
きっと、また校舎の裏に行くんだ。

足がそっちに向かう。
吉原が私が立ち去るのを見ていた。



「あれ?珍しいね」
息を切らす私を目の前にして、一之倉が不思議そうな顔をする。

「ミレイが俺の事見つけるなんて。」
そう言って、首を傾げた。

「いいじゃん。たまには。偶然!」
偶然を強調して言った。
顔を見て、一緒に歩き出す。
泣き顔を見られたのを思い出して
急に恥ずかしくなる。
一之倉が歩きだすから、ついていく。

「ねぇ、一之倉は毎日ここにくるの?」

「うーん。毎日じゃないけど、ほぼくるよ。」
歯切れが悪い答え。
それでもよかった。

「いいの?」
ん?何が?と思う。

「吉原君。」
少し茶化すように聞かれる。
「吉原は…いいよ。」
目を合わせないで一緒に歩いた。

なんか、急に一之倉を意識する。
手に目がいく。
また、触られたりするかな。
変な想像をした。

乱暴に触る男の子しか、知らないから。
目を覆った一之倉の手が、
優しくて。
こんなの知らない。

私の知らない世界に来た。

「ねぇ、一之倉。」
後ろに手を組んで、近づいて隣を歩く。
「どうしたの?」

「一之倉がつけてる香水なに?」
少しキョトンとしていた。

「これ?ディオールの、なんだっけかな。黒と紺のやつ。」
そう言って自分の服の匂いを気にした。
「なんで?くさい?」

「いや、いいニオイだなって。」

「へぇ、女子高生もいいニオイって思うんだな。」

大人の女の人が好きな香りなのかな?
そう思って少しむっとする。

私は一之倉に興味を持った。
悔しいから、ディオールに興味を持った。と
言っておこうかな。




学校帰り、足を伸ばして百貨店に行く。
多分このあたりで見たことがある。

私みたいな子はいなくて、ちょっと場違いに感じる。
お目当てのブランドを見つけて
立ち尽くす。
たくさんあるな。どれなんだろう。

「何かお探しですか?」
たくさん人が来るからと、制服の私を見て少しラフに話しかけてくる店員の女性。
「…香水。多分男の人の…。」
そう言った後、メンズはこちらです。と
香水の場所を教えてくれた。

「黒と紺のやつなんですけど。嗅いでみてもいいですか…?」

どうぞ。と嗅がせてもらう。
「そう。これ。」

学生の私には大奮発すぎる。
お母さんに怒られるかも…少しヒヤヒヤしながら
一番小さいサイズを買った。

なんだか気恥ずかしい。
ディオールの袋を持って家に帰る。

部屋に入ると、一之倉にもらったTシャツに着替える。
小柄に見えるけど、私が着ると大きいな。
そう思ってTシャツにかかれた文字を読む。

「…さんのう?」
知らない柔軟剤のニオイに、あのニオイがする。
そのままベッドに倒れた。

一之倉に会わなければ、絶対にこの部屋になかった
ディオールの袋を横目に口角が自然と上がる。



「ミレイ、いいニオイするね。」
教室で友達から話しかけられた。
「え?ほんと?」
少しドキッとする。

「髪も染めたんだね?似合ってるよ。」

吉原のハイライトと一緒の色にしていたインナーカラーを染めて、パーマをかけた。

「うん。もう色抜けるの面倒くさくて。」

「俺、そのニオイ好きじゃない。親父っぽい。」

隣を通りすぎる吉原が、聞いてもいないのにそう話しかけてくる。
私の顔を見てたから、
「そう。私は好き。」
そうそっけなく答えた。

そう言い返されたのが意外だったのか
拍子抜けした顔をして、教室をでていった。

吉原の否定的な言葉。
あまり心に響いてない。
どうせもう死んじゃってた。
私の気持ち。
もう私たちはどうにもならない。

そう思って、なぜか
あの子とキスしてくれててよかった。
そう思った。

新しい自分になれたから。
私はそう思って授業に出た。



「お前最近、付き合い悪くね?」
吉原が、廊下を歩いてる私に後ろから話しかける。
取り巻きの女と一緒にいればいいじゃん。
そう思いながら、私に話しかけてるのを面白くなさそうに見つめる女の視線に気づく。

「…なに、お前って。」
前はお前とか言わなかったのにな。

「ちょっと体育館こいよ。」
次の授業へ移動中だったのに。と思いながら
話すべきなのかも。と思ってついていく。

さすがに2人きりじゃなかったか…。
いつもの面子の顔を見てため息をつく。
吉原の取り巻き達を見て
何をしてるのかと覗く。

吉原がキスしてた女を横に連れて、また
不良ごっこをしていた。

ひ弱なクラスの男の子にバスケットボールをぶつけていた。

なんか凄くむかついてくる。
これを私に見せてどうなるって言うの。
気づいたらボールをぶつけてられてる男の子の前に立ちはだかる。

「いい加減にしなよ。」

自分でも、驚く。
私がこんな事するなんて。
ボールを持って「は?」と声を漏らす吉原。
吉原も驚いていた。

「ガキみたいな事いつまでやんのよ?」
びっくりするくらい大きい声が出る。
私はずっと怒っていたんだ。

怒鳴られた反動で吉原もきれる。
「お前、俺にそんな事言っていいと思ってんのかよ?急にいい子ぶりやがって。」

そう言われて少し怯む。
吉原がきれた事で、横にいた女が威勢よく前に出てきた。
吉原からボールを奪う。
「あんた、何調子のってんの?」
勢いよく私にボールを投げた。

一瞬取り巻き達が、「おい、あれ。」と言った声が聞こえる。
私はボールが飛んでくる痛みに備えて顔を手で覆う。

あれ?何も起きない。
そう思って手を恐る恐る下げると
目の前に一之倉がいて
ボールを片手でキャッチしていた。
え、なんでここに?
そう思ってフリーズして一之倉を見る。

「はいはい。バスケットボールをこんな使い方しない。」
優しく、いつもの表情で投げてきた女子に言う。

その後、私の方を見た。

やめてよ。そんな目で見るの。
いつも、私をその目で見る。
私なんて相手にしてないくせに。

「2人でやり返す?」

差し出されたバスケットボール。
私はこのボールを受け取ったら
引き返せなくなる。
ボールを差し出した腕の太さと血管から
今まで気づかなかった男らしい体格に気づく。
一瞬で意識して、黒目が揺れた。

弾けるような笑顔を見て
世界中を敵にまわしても
あなたさえいればいいよ。
そんな気持ちにさせる。

私達の様子を見て、吉原が近づいてくる。

「あのー、誰すか?しゃしゃり出て来ないでくださいよ。僕たち遊んでただけなんで。」

そう言って、右手を伸ばして一之倉からボールを取ろうとする。
一之倉が片手で遊ぶようにボールを遠ざける。

違和感を感じた。
そういえば、吉原って元バスケ部だったっけ。

キョトンとする吉原。
次は遠ざけられたボールを素早くカットしようとする。
一之倉が動かずに左手に置き換えてボールをまた遠ざけた。

吉原が腰を落とすのを見て
「へぇ吉原君、バスケやってるんだ?」
一之倉が嬉しそうに言った。

「は?」吉原がなんで名前知ってるんだ。と言う感じで声を出した。

足を踏み出してボールを取ろうとするけど
一之倉が軽くドリブルして避ける。

「いいスピードだね。」

吉原がむきになる。
私は呆気に取られてそれを見つめた。

吉原が全然ボールに触れない。
子供扱いされてる様に、遊ぶように避けられる。
「なめやがって。」
吉原が何度も食ってかかる。
そうこうしてるうちに、一之倉がフェイントで引きつけて、吉原が前のめりで派手に転んだ。

その瞬間一之倉がシュートする。
綺麗にボールが宙を描いてリングに入る。

バスケの事はよくわからないけど
すごい。と思った。

「一之倉さん、ここにいましたか。」

ゴールに入ったボールがバウンドする音が響く体育感に、ぞろぞろと人が来る。
「お前ら…何してるんだ」
体育の顧問が私たちの様子を見て大きい声を出す。
その後ろにバスケ部が「なんだ?」と私たちを見ていた。

「ああ、すみません。バスケ教えてました。夢中になっちゃって。」
一之倉がそう言ってにこにこするので、先生達は面食らっていた。

「でも、その子は言いたい事があるみたいです。」
そう言って床にしゃがみ込んでいた
ボールをぶつけられていた男の子を指差す。

ボールを拾って、私に目配せして渡す。
いたずらっぽく私を見つめて口角を上げる。

「さっき、格好よかったね。」

一之倉に褒められて、なんだか泣きそうになる。

体育の顧問がまた怒りながら私たちに
職員室に来るように言う。

一之倉が通り過ぎていって
バスケ部の前に立った。

「あ、どーも。改めてご挨拶を。新しく外部コーチをさせていただくことになりました。一之倉聡です。」

「よろしくお願いします!」
バスケ部の部員が緊張した様子で、大きな声をそろえた。

私の知らない一之倉がそこにいて
ただその背中を見つめた。

心臓の音がうるさくて
手に持った教科書で意味もないのに隠す。
視線がずらせない。

恋だった。

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