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昔のメモ書きが出てきたので写し書きする

この前、街の呑み屋でに座っているのツレがナンパをした。らしい。というのも、どうやら上手くいったらしく、その女共の小集団を俺がいる喫煙所に連れてきた。女は3人が常にいて、入れ代わり立ち代わりで全体では8人くらいと顔を合わした。

その殆どは俺の横にいる男に好奇の目を向けながら、おそ、く吸い始めたばかりなのであろう細いタバコを吸っている。女がタバコを吸う姿は好きだが、それはあくまで吸い慣れている姿が好きなのであって、不慣れな喫煙を見ると後ろに男の影がチラつき鬱蒼とした気分になる。これは昔からずっとそうだ。

そしてその女たちはとにかくうるさかった。新しいおもちゃを手に入れた子犬のようにつついてみたり、飛び跳ねたり、吠えてみたり、それも相まってとにかく不快であった。寒空の下で吸うタバコは本来、美味いはずなのだ。どうしようもなくアンニュイな気持ちになるからだ。

別に俺が好奇の的でなかったから不快であったのではない。ここは自分自身のプライドの為に言っておく。寒空の下で軽く酔っ払っている時に吸う美味いはずの煙草が、女と、その女が吸う元来大好きなタバコに邪魔されたのがとにかく不快だったのだ。

もちろんその女たちも悪気はないのだろう。ただ、好奇心を抑えれない人間はほとんどその辺の小動物と同じに見える。犬や猫と同じで理性が足りないのだ。そういった人達を下に見ながら楽しむ人間もいるが、俺は違う。そんな人間たちとは関わりたくもないと思う人間だ。

どちらが高潔かとか、どちらが高貴かとかそういう話ではない。とにかくその場から俺は離れたかった。
だが、あまり話さなかった3人目の女が急に口を開いたかと思うと、伏し目がちに、控えめな小声で実はタイプなのだと俺に言う。最初、屋外で風も強い夜だったのもあり、あまり正確に聞き取れなかった。

そのか細い声と、その中身があまりに唐突なことで俺は腹を抱えて笑ってしまった。勇気を振り絞ったようにも見えたので、思い返せば失礼極まりないことだっただろうと思う。ただ、酒の勢いで言ってることは明白だった。そこに関しては不快ではない。勢い余って言ってしまったという雰囲気が心地よかったからだ。

だが、なぜなのか不思議とこの女を抱きたいであるとか、そういった雄らしい感情を抱くことはなかった。なんなら最後は好きだとまで言った目の前の女に面白みこそ感じるものの、それ以上の感情の揺れ動きを、自身の中に見出すことは出来なかった。

そこにはストーリーが無さすぎたのもあると思う。仕事でデリヘルの女をホテルに呼んだ時に似ていると思った。綺麗でプロポーションの良い年上の女。落ち着いていて馬鹿ではない。この上なく自分のタイプだと言って差支えはない。だが、この女にも俺は性的衝動より、どう生きてきたのかの好奇心が勝ったのだ。

冷めきった俺が目の前の女に苦笑いをしていると、連絡先ぐらい交換しなよと周りがはやし立てる。俺が適当な嘘をつくと、女はあからさまに残念そうな顔をして、女の子は苦手ですか?と聞いてきた。ああ、苦手だよとだけあえて素っ気なく振る舞う。

女の子と良い思い出がないんですか?と続けて聞かれる。いや、そんな事は無いはずだけど、今は女のことを考えたくないのだと答えた。
ただ、本音を言うと今この女に全てぶちまけて背負わせてやろうと思ったりもした。
その方がお互いにとって都合がよかったかもしれない。

だが、この手の女は必ずと言っていいほど代わりになれるように努力するだの、それに似たようなことを言うだろう。代わりになんてなれるはずがないのだと現実をたたきつけ、絶望させる未来しか見えなかった。だから、今は女のことを考えたくないと言ったのだ。

まあでも連絡先ぐらい交換してもよかったんだろうな。それから適当なタイミングで消えれば済む話だ。

そうこうしていると、昔の女と立場が逆転してるだけだと気づいた。
そっか、そういう事だったのか。少しだけ、少しだけだけど奴のことが分かった気がした。

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