映画業界のハラスメント、搾取について

ステートメントと銘打てるほどにまとまった考えは書けていないかもしれませんが、自身が自主映画監督として活動してきた上で改めて記しておきたいと思ったことを、今までにもTwitterなどで断片的に書いていたことも含め、少しだけ記しておかせてください。


映画に限らず、あらゆる活動において、その価値が関わる人の安全に優先されることはありません。

映画業界にまつわり、昨今報道されている出来事の数々に日々、暗澹たる気持ちを抱いています。
映画制作の現場やそれを取り巻く構造だけでなく、ミニシアターの労働問題なども含め、全てのハラスメントや暴力に反対します。
被害を告発された方や、傷を抱えて声を上げられないすべての方にも、連帯の気持ちを表明したいと思います。
また、そうした被害だけでなく、それと地続きになっているような、もっと広い意味での「搾取」の問題についても、いち作り手として常に自戒し、不健全な構造を生まないよう、細心の注意を払っていきます。

これまでも、常に極力、関わってくださる方々がすべてのプロセスに納得してくれた上で進めるような、安全で対等な、誠実な作品づくりを心がけてきたつもりではいます。これからも、より一層意識を強くしていきたいと思っています。自分の立場に優位性があるような振る舞い、そう感じさせるような言動も、絶対にしないようにしています。

ですが一方で、自主映画という、お金で解決しきれないことのいくらかを「気持ち」に甘えてしまうことも多い形で作品を作ってきた身としては、卑劣なセクハラやパワハラ、暴力という形ではなかったとしても、今までに何らかの搾取構造を生んでしまったことが全くなかったとは、私の側からだけでは言い切れません。
意に沿わないことを飲み込ませてしまった、配慮が足りず無理を生じさせてしまった、そうしたことに気づけなかったことも、きっとあったのではないかと思います。

また「全員が納得して、利害関係をこえて作品を作る」というような活動と、ある程度の商業性を帯びたインディーズ映画との境界線は非常に曖昧で、そのグラデーションの中間地点において搾取が生まれてしまう危険も常にあります。

作品作りの主催者たる側として自戒を怠らずにいると同時に、無自覚な部分への指摘にも常に耳を傾けていたいと思います。

いち自主映画作家の端くれである今の私が、「日本の映画業界」と呼ばれるような構造の内側にいると言える立場であるかはわかりませんが、それでも自分の立ち位置から、映画や映像の世界が少しでも良い未来に繋がっていく流れに微力ながら加われるよう、まずは自分の周りの小さな環境を、きちんと安全で健全なものにしていきたいと思います。

堤真矢

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