出札補充券と改札補充券の分類について
はじめに
前回の記事で「特別補充券・一般用(駅用)」について記事にしてみた。
駅用の一般用特別補充券は、「出札補充券」(出補)または「改札補充券」(改補)として発売される。
基本的には「乗車券類の新規発売」をする特別補充券は「出札補充券」で、「区変等の乗車券類の使用開始後の変更」をする特別補充券は「改札補充券」として発売されている。
しかし、昨今SNSで見ると、その区分を誤っている内容があったり、そもそも駅自体の発売が「あやふや」な状況であるケースも見られるので、今回は「出補」と「改補」の違いを見ていこう。
出札補充券と改札補充券の定義
旅客営業規則の定義
まず特別補充券の分類を、「東海旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第8節」で見よう。
第225条において、出札補充券または改札補充券の様式を規定している。
さらに備考において、以下のように記載されている。
上記引用した箇所、実は文言がおかしい。「この様式は出札補充券のものとし、」と、特別補充券・一般用(駅用)の図は「出札補充券」の様式であると定義している様に見える。これは誤りだ。これは国鉄時代の該当部分、例えば、国鉄発行の旅客営業規則本(参考リンク:国会図書館個人配信サービス登録必要)や、「池田和正(2019) 国鉄乗車券図録 成山堂書店)」の様式集などを見ると、国鉄時代の旅客営業規則では、特別補充券・一般用(駅用)の券の発行箇所欄に「東京駅◯出発行」と印刷された券を例示していたが、現在は発行箇所を表示していない図を掲載しているので、このような齟齬が発生しているようだ。
つまり、旅客営業規則では、「特別補充券・一般用(駅用)」は発行箇所の表記で、
出札補充券
改札補充券
出札補充券と改札補充券を兼用したもの
という3パターンに分類できるようだ。
旅客営業取扱基準規定での定義
それでは、社内規定となる旅客営業取扱基準規程での出補と改補の定義(発行内訳で定義づけられるだろうという考え)について、見ていこう。
東日本旅客鉄道 旅客営業取扱基準規程は、デスクトップ鉄さんのページにて、2011年3月12日現行(九州新幹線鹿児島ルート全線開業時点)のものが公開されているので、そちらを参考にしていきたい。
旅客営業取扱基準規程
第236条
(1)出札補充券として発行する場合
(ア)設備のない乗車券類の代用
(イ)他駅発乗車券類の代用
(ウ)複数人一葉発券乗車券の代用
(エ)使用開始前の乗車変更
(オ)誤発行・汚損再発行(当該乗車券の発行駅)
(カ)紛失再発行(=(2)改札補充券(サ))
(キ)誤購入した乗車券類の代用(誤購入した券の発行駅)
(2)改札補充券として発行する場合
(ア)乗車変更(使用開始後)の乗車券類変更(区変等)
(イ)別途乗車
(ウ)無効の乗車券を所持する旅客にたいして乗車券を発行するとき
(エ)誤乗無賃送還中途中下車申告して乗車券を発行する場合
(オ)買替
(カ)引換(下車印多数)
(キ)一葉券の分割
(ク)誤発行・汚損券を発見し、再交付する場合
(ケ)概算車補を精算し、前途用の券を発行する場合
(コ)発駅又は途中駅で不乗・不使用乗車券類の払戻を行い前途用の券を発行する場合
(サ)紛失再発行(=(1)出札補充券(カ))
(シ)再収受証明書
(ス)紛失乗車券を発見し、払戻後前途用乗車券を発行する場合
(セ)乗継取消
(ソ)列車が運行不能になり他経路で連絡会社線をまたがる場合の取扱(過剰額払戻の場合の前途用か?)
(タ)誤購入乗車券類を精算し、前途用の券を発行する場合
(チ)手回り品切符を発行する場合
このように、旅客営業取扱基準規程では出札補充券の発行する内容、改札補充券で発行する内容を具体的に決めており、これで出札補充券であるか、改札補充券であるかという分類ができるだろう。
発行箇所の表記で分類できる例
まずは発行箇所に◯出、◯改と入っている例を挙げよう。
発行箇所からみる出札補充券の例
発行箇所に◯出、(出)などと記載されている券を紹介する。
東武鉄道野州大塚駅はマルチ端末を撤去したが、券売機と窓口で乗車券類を発売していた。複写式の補片(社線用)と、JR連絡用補片と特急券、社内発売用と同じ様式の補充式特急券なども他に設備されていた。
発行箇所のゴム印に◯出とあり、出札専用として設備されていたと思われる。
大井川鐵道では、発行箇所の「駅◯出」が既に印刷されており、出札補充券専用として設備されていると考えられる。別に改札補充券を設備している様ではないが、区変の必要性があれば、この券で代用するのかもしれない。
発行箇所からみる改札補充券の例
同様に発行箇所に(改)と入っている例を挙げる。
発行箇所が(改)で印刷されているというと、近畿日本鉄道が有名だろう。基本的に発行箇所常備ですべて設備されていた。(発行箇所が補充のものは臨時請求券という位置づけだった)
この01松阪駅は、松阪駅の近鉄側で発行されたもので、当時は(出)と印刷されている出札補充券が欠冊のため、改札補充券で代用をしていた。発行事由は、「出札補充券」であるが...。
松本駅精算所では、改札補充券を用いて前途用の券や、自由席特急券を発売していた。窓口には車内補充券発行機(車掌端末)が設備されていたが、レシート券は端末に装填されておらず、改札補充券や車急式自由席特急券を用いて発行を行っていた。この券は車急式券では対応できない他社関連の自由席特急券である。
国鉄時代~JR初期、駅精算所において改札補充券を用い前途用の急行券を発売するケースが見られたが、最後まで行っていたのが松本駅◯改である。
発行箇所からみる出改札補充券兼用の例
しかしながら、現在上記2項の通り、(出)や(改)をはっきりと明示した券は大変少なく、この項の通り、発行箇所が駅名のみの記述になっているケースが最も多い。これは、JRの大きい駅でも同じである。
JR西日本では、POS化以前であれば出補と改補をはっきり区別していたようであるが、近年は出補側は区別して発行箇所を示すことはないようで、見た目は兼用のような券も多くなってきた。西POS端末ではどの箇所でも補充券実績入力の出札補充券入力と改札補充券入力が可能であるため、駅によっては出補用で設備された(この券は間違いなく出補用で設備されたものと思われる)券で改補的な用途で発売する例も見かける。その為ではないだろうが、現代では出補をはっきり区別していないのかもしれない。
発行例で分類できる例
次に、発行箇所に(出)や(改)などの表記がないが、発行例が特徴的で分類できそうな例を挙げる。
発行例からみる出札補充券の例
(出)などの出札補充券である旨の表記はないが、発行内容的に出札補充券であるのが自明な発行例を見てみよう。
基236条(1)(ア)の事由、「設備のない乗車券類の代用」の例を見る。おそらく、特別補充券・一般用(駅用)のうち、発売されるのが最も多い事由ではないだろうか?
天竜浜名湖鉄道では西鹿島駅連絡で遠州鉄道線と連絡運輸を行っているが、往復乗車券に関しては券売機で発売できないため、出札補充券を使用している。なお、天竜浜名湖鉄道の三ヶ日駅には連絡用駅名式補充券が存在するが、現在他の駅にはない(通常発行しない?)模様である。
基236条(1)(ウ)では、複数人同時発券の場合の規定があるが、これは特別補充券類に許された特権であろう。
近江鉄道の出札補充券であるが、小児2名を一葉で発券している。とはいえ、この程度であれば硬券を2枚発行したほうが速いのではあるが。
発行例からみる改札補充券の例
改札補充券で発行した場合を紹介する。
基236条(2)(オ)の事由で、◯改の表示はないが、ラッチ内の精算所で発売されたパターンであり、確実に改札補充券であるパターンだ。
当時名古屋鉄道では瀬戸線各駅と他の名鉄線各駅の乗車券を発売していたが、券売機のみしかない無人駅では発売していなかったため、新(名鉄)名古屋駅や金山駅、栄町駅において「買替」の取扱を行っていた。
基236条(2)(ア)の事由は、現代の改札補充券の中で最も多いパターンではないだろうか。(再収受証明のほうが多いかも?)
現代の制度にはない、周遊きっぷの東海道新幹線への区間変更だ。当時、在来線経由の場合と東海道新幹線経由では割引率が異なったため、変更する場合はJR東海の駅又は車掌が取り扱うこととなっていた。
まとめ
以上、発行箇所と発行例から出補と改補を区分してみた。
基本的には、原券欄がまつ線である場合は基本的に「出補」であり、原券欄に何らかの記載がある場合は「改補」である。
しかしながら、改札補充券で設備されたものの、図4は出札補充券の代用として、図5は旅客営業取扱基準規程の改札補充券の分類で発行されたものではないため、なかなか判断が難しいところではあるが、大体は設備状況で発行が分かれるため、「区変」や精算所などで発売されたもの、されるべきものは「改補」、それ以外は「出補」と見て間違いないだろう。
以上で「出補」「改補」を分類してみたが、みなさんも収集したときは、これは「出補」だろうか、「改補」だろうかということを考えてみるのも面白いだろう。
(終)
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