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活躍している女性リーダーは、なぜ女性活躍推進のために立ち上がってくれないのか?

伝説のジャズシンガー、ビリー・ホリデイとFBIの対決を描く映画「ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ」を観た。

そのなかで「黒人でいる気分はどう?」と白人インタビューアーから聞かれたビリーが「ドリス・デイにも聞く?」と返す。それに対して白人インタビューアーが「彼女は黒人じゃないから」と応じるチグハグなやりとりがある。

こうしたやりとりが、あらゆるマイノリティグループについておきているのでは?





女性活躍を組織的に進めるためには、今いる女性リーダー(組織のヒエラルキーのなかで一番偉い女性)のスポンサーシップが必要なんてことが言われたりします。それなのに、当の女性リーダーにお声がけすると、ほぼほぼ協力が得られない。

なんで?! (モヤモヤ)

シンプルにするために、誤解をおそれず、パターン化してみると、なにか見えてくるかも?!(パターン化すべきでないのは重々承知で)

今いる女性リーダーのパターンその1は、いわゆる「男性並み」に、バリバリ仕事をしてこられたケース。

その2は、周囲のサポートや時短制度などを最大限に活用しながら、それでもなんとかマミートラックに乗らずにやってきたパターン。 

一つの仮説は、いずれの場合も、「謙虚さ」and/or「うしろめたさ」みたいなものがあるというもの。(この考え方を女性にいうと嫌な顔をされることもあるので、一般化はできなさそうなのですが)

パターン1の場合、ある意味で「有利な」条件の中で活躍してきたことに対する、そうでない女性への「うしろめたさ」。そして、その背景にある「謙虚さ」。女性活躍推進のリーダー役をお願いすると「わたしなんて子供もいない中でやってきたので、参考になりませんよ」と、冷たく拒否されたりする。

パターン2は、周囲に助けられてながらやってきたことに対する「謙虚さ」と「うしろめたさ」。女性活躍推進のリーダー役をお願いすると「そういうの、私、嫌いですから」と、やはり冷たく拒否される。

(後日、他の(全)女性からのサポート•信任があるのか?を気にされることもあるというご指摘を、先輩よりいただきました)

これで、女性活躍の推進役を受けることを拒否される理由の説明が、ほんの少しついたのかどうか。(まだモヤモヤ)





もう一つの考え方。

そもそも「女性」と一括りにして議論すること自体が間違いだというもの。「女性」といったら人口の半分。だから一概にマイノリティとは言えない。もっと丁寧に、個々の事情に向き合わないと、そもそも課題提起にすらならない。そうだとしたら「女性活躍についてスポンサーになってくださいませんか?」とか相談されても、「女性とかいうラベリングはしないでください!私は私なのです」「I want to be a good leader, not a good lady leader」と考えて、協力したいと思わないのは、うなづけます。


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逆の立場。私が女性から「男性活躍推進のスポンサーをしてほしい」とリクエストされる状況を想像してみる。たしかに違和感しかない。

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少し解像度が上がって来た?!

2019年の上野千鶴子の東大入学式での祝辞より。

「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」

女性活躍でも、男性活躍でもよいのですが、そうした「活動」には、確かに弱者が強者になりたいというニュアンスがあることを否定できません。多くの「女性」は、弱者から強者になりたいわけでも、立ち上がりたいわけでもなく、そのままの自分を受け入れて尊重してほしいだけだとしたら、どうだろう。「女性」が望むのは、「尊重してほしいだけ」だとしたら。

尊重するのはだれ?!

男性の側、あるいは女性も男性も含めた私たち全員です。そうだとすると、「女性活躍」というある種の重荷を「活躍している女性」に押し付けるのは筋違いかも知れません。

そうだとすると、「謙虚さ」も「うしろめたさ」もあるのかも知れませんが、「私は、いまのままがよいです」「やりたければ、あなたがやったら?」が本音なのかなと思ったのです。

では、どうしたらいいの?!

上野千鶴子の祝辞はこう締めくくります。
「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください」。

これは男女問わずリーダーへのメッセージに聞こえます。性別に関係なく、全てのリーダーのテーマだと考えれば、すこしモヤモヤが晴れます。

結論。女性活躍推進のスポンサーは男性でも女性でもいいけど、ジェンダーに関しておもいやセンシティビティがあるリーダーにお願いするのが良さそう。

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