アリストテレスと心理的安全性の出会い
心理的安全性を一躍有名にしたGoogleのプロジェクト•アリストテレスを紹介したNew York timesの記事を今更ながら読んでみた。
https://www.nytimes.com/2016/02/28/magazine/what-google-learned-from-its-quest-to-build-the-perfect-team.html
(メモ)
•Googleでプロジェクト•アリストテレスを担当したJulia Rozovsky。キャリア迷子になっている時に、Yale School of ManagementのMBAへ。
Yaleには優秀な人だらけ。
でも、MBA特有のグループワークを楽しめない。
間違ったことを言ってしまわないよう必死で、ストレスだらけ。
メンバーは、リーダーシップを取り合ったり、他人の足を引っ張ったり。。
一方で、たまたま紹介されて参加した別のグループ。
こちらはカジュアルで居心地が良さそう!
個々人をみるとどちらのグループにも同じように優秀な学生ばかりなのに、ひとたびグループになると、なぜこんなに違うの?!
1人1人と話すとどちらのメンバーもフレンドリーで居心地がよいのに•••。
•過去20年間で、チーム活動に費やす時間は50%もアップしている。実際のところ、毎朝の仕事はチームミーティングから始まり、メールを送受信して、また会議。1人でやる仕事なんてほとんどない。そうだとすると、個人のパフォーマンスにフォーカスし分析(‘‘employee performance optimization’’ )は十分でなさそう。
そんなことがシリコンバレーで言われはじめる。
そこで、Googleが本格的に研究に乗り出すことになった。「ベストなチームはベストなメンバーからなる」「内向的な人を集めた方がいい」「仲の良いメンバーがいればチームはより機能する」という科学的根拠のない迷信が幅を利かせていた。
•GoogleのPeople AnalyticsチームのマネジャーだったAbeer Dubeyのリードのもと、Yaleを出てGoogleに参画していたJuliaも加わって、プロジェクト•アリストテレスが始まった。
•ところが、良いチームのパターンを見つけようとしても、一向に見つからない。やがてチームは、 ‘‘group norms’’ に注目し始めた。権威が嫌いで、独立して振る舞う1人1人が、ひとたび集まると‘‘group norms’’ が個々人の個性を上書きし、チームとして違いが生まれていくことがわかった。"group norms"は、集まったメンバーの行動に影響を及ぼす。それは、伝統だったり、行動のスタンダードだったり、書き物にならないルールだったりする。そこから"collective intelligence"が生まれていることが分った。
•良いチームでは、チームのメンバーが他のメンバーへ丁寧に心遣いをしていた。特徴的なのは、チームメイトが、常時、別のチームメイトを「通訳」するような言動だった。別のチームでは、リーダーが話す順番をガイドしたり、話を遮ったりしたら順番を待つように丁寧に促したりしていた。誕生日のお祝いをしたり、週末のプランについておしゃべりなんかもしていた。"The right norms"があれば、グループの collective intelligenceがあがる。他方、それが"The wrong norms" の場合には、いくら個人が優秀であっても、チームとして機能しないことがわかった。
•良いチームにもいろんなスタイルがあったが、共通点が2つあった。
•一つ目は、Turn-taking (equality in distribution of conversational turn-taking)。メンバーが話す量がおおよそ均一ということ。
•二つ目は、Average social sensitivity。つまり、非言語のメッセージに敏感であるということ。
•プロジェクトのメンバーの1人であるAnita Woolleyの実験。複数人の目の写真を並べ、何を考えているかを表現させるというもの(Reading the mind in the eyes test)。良いチームのメンバーは、目の表情だけを見て、いろんな観察ができるっぽい。
•Juliaとそのチームは、やがてAmy Edmondsonの心理的安全性という学術的なコンセプトにたどり着く。つまり、心理的安全性ありきではなく、たどり着いた結論が、どうやらAmy Edmondsonの研究により説明できそうだということがわかった。
•次の問題は、みんな忙しいなかで、どうやって心理的安全性を確立するか。でも、Amyの研究が明確にヒントを与えてくれた。Juliaは、自身のYaleでの経験と結びつけた。そう、心理的安全性のあるグループと、そうでないグループとは、"Norms"が違っていた。
•リーダーがいかに自身のエモーションをコントロールして、チームを運営するかも、心理的安全性のためには重要。そうはいっても、メンバーに「話す量を同じにしてくださいね」とか、「他のメンバーの気持ちに敏感になってくださいね」とか言っても、実行に移すのは難しい。そもそもGoogleのエンジニアは、自分の感情を表に出すこと嫌うタイプの人たちばかりだった。"group norms"が大切なことはわかったけど、さて、どんなNormが大切なのかは、まだわからない。
•Juliaとメンバーは、プロジェクト•アリストテレスの途中成果を社内で共有して、意見を聞くことにした。プロジェクトチームにコンタクトしてきたのが、Matt Sakaguchi。理系のバックグラウンドのないなかで、Googleのエンジニアの新任マネジャーをつとめる変わり種。チームを良くしたいと考えていたSakaguchiは、プロジェクトチームに、彼のチームのサーベイを依頼した。その結果を踏まえて、Sakaguchiは話し合いの場をもった。Sakaguchiは、自己開示をはじめた。「自分は癌を患っています。ステージ4です」。その場にいたメンバーは驚き、そして、次々に自己開示をはじめた。健康のこと、離婚のこと。それぞれが自己開示をしていくうちに、やがてサーベイを踏まえたチームの課題に話題が移っていった。そして、新しいNormsを合意した。メンバーの感情をもっと意識しよう!
•心理的安全性とemotional conversationsが密接に関係している。Sakaguchiは、それをなんとなく感じていた。だからこそ、自己開示を始めた。
•それでも、感情を語るのは容易でない。でも、共感や敏感さをデータで表現できれば、話しやすさが増す。
•プロジェクト•アリストテレスでは、心理的安全性の他にも発見があった。クリアなゴールを持つことや、信頼の文化といったこと。でも、心理的安全性がもっとも重要な要素だった。
•プロジェクト•アリストテレスで分かったこと。
本当は、オフィスであっても「仕事の顔」をしたいわけではないということ。
だれもが、オフィスであってもビクビクしたりすることなく、家にいるのと同じようにいたい。気持ちのこもったおしゃべりをしたい。
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