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M先生の背中

M先生の背中、というタイトルではあるけれど、おそらく私は、M先生の背中を見たことがない。

M先生とお話するとき、先生はいつも前向きで、ごちゃごちゃと言い訳の多い私にはっぱをかけるように、激励してくださった。大病で手術をされた後でお会いした時でさえ、M先生はいつもと変わらずに接してくださり、やはり私の方が励まされてしまった。

めったにお会いする機会がなかった私には、M先生がどんな思いで、ときどきお会いしたその場所へ来られていたか、どんな思いで、最後となったあの日、私の話を聞いてくださったのか、わからない。

お亡くなりになってから何年もたって、私は、彼女があの日何を考えていたのか想像している。私は今、M先生の背中をみている。今私がみている景色を、あの日見ることができていたなら、たったひとこと言葉をかけるだけでよかったのに。

誤解を解くチャンスは、いまはもう私には与えられていない。この想いを抱えて、この先ずっと生きていくしかないのだ。

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