真面目系クズの薬の話

そもそも薬ってなんだろう。いや、薬剤師が言う話じゃないのは承知の上だ。ググると病気や傷を治したり、健康を保持、増進したりするために使うものと出てくる。

この仕事をしていると明らかに「副作用怖いですよね。この薬止めても大丈夫ですよ。」とか「ワクチン、打たなくてもかかりませんよ。新しいものは怖いですもんね。様子見でいいんじゃないですか?」と言ってほしいだろう話の誘導をする人をよくお見掛けする。いや、言うわけないだろう。それは別に薬剤費で稼ごうとか、そんな話ではない。そもそも薬価とその納入価の差なんて微々たるものだ。さらに言うなら私の勤める職場のようなリハビリ病院からすれば同じ金額の中で使う金額が減るのだからその方が利益は上がる。このシステムを包括医療というので知りたい人は調べると良い。ではなぜ言わないか。薬剤師はその言葉に責任があるからだ。もし、その薬をやめたことが原因で病態が悪化したら?最悪、死んでしまったら?今は薬剤師が訴えられることは少なく、医師の責任が重いが、その一言が原因だと断定されれば訴訟沙汰になり、薬剤師として生きていけなくなることは想像に難くない。そもそも、処方を受け取った時点でこの薬変だなというのがあれば医師に確認をする義務がある。石原某さんのドラマで見た人もいるだろう。ランチ中の医師に突撃して「この処方これでよろしいですか!?」と聞いていたあれだ。まぁ、たいていは電話なり看護師経由なりでの確認であり、あんな不躾なことはしないが。まぁ、それでも「これでいいから。」などと言われ納得いかないまま処方に確認はしたと責任逃れのようなことを書きながら渡すこともある。とはいえ確認するのは義務なので確認済みの上で出している。もし、仮に本当におかしな薬を飲んでいたとしても、言えるとするならば「うーん、セカンドオピニオンって手もあるかもですねぇ。」くらいだ。どんな影響があるのか、添付文書と呼ばれる説明書やら適切な所が出した文書を読み込んでいる。よっぽどおかしなことがあればその人に言う前に製薬会社に電話をし回答を得るし、打っている人を見ておやと思う副作用があれば厚労省に申請する。決して、最初に言うのが医薬に詳しくない誰かなんてことはあり得ないのだ。

ここまで、業務時間での話をしてきた。ではプライベートではどうか。あまり変わらない。知識量がプライベートと業務上で変化するわけではないのは言わずもがなだが、そもそもプライベートで薬の話はしたくない。だってよく分からないからだ。その人の疾患はいつから始まって、どんな変化をして、その間に何を飲んで何をやめて、他にはどんな疾患があって、検査値はどのくらいでetc…その薬の話をするにはあまりにも相手のことを知らなすぎる。医師より知っていると自負できるのはその人の性格くらいだろう。それに応じたアドバイスはできるかもしれない。「このクスリは食前になってるけど、食事の影響受けないから食後でも思い出した時に飲んで大丈夫だよ。」とか「一包化にしてもらったら?ちょっと高いけど全部を忘れずに飲めて楽だよ。」とか。それ以上のことは言えない。と、言うより言いたくない。だって言った言葉に対して責任が重すぎる。なぜ賃金ももらわずにそんな重い責任を負わなければならないのか。どうぞ、貴方のかかりつけの医師にご相談ください、彼は診察料をもらっているでしょう?と言った感じだ。

ここまで話せばわかっていただけるだろうか。仮に「ワクチン?いいんじゃない、打たなくて。」「大丈夫よ、その薬は飲まなくて。」という薬剤師がいたらその人は物理化学生物など病気に関与して働くための知識ではない知識で国家試験に合格した猛者か、その後に内心こう思って言うものだろう。

「いいんじゃない?(あなたがコロナで死んでも私に責任も影響もないもの)」

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