デジタルテクノロジーと国際政治の力

遅ればせながら、塩野誠さんのデジタルテクノロジーと国際政治の力学読了。


デジタル技術が加速度的に社会に実装される中で、国家統治の競争力(民主主義vs覇権主義)、多次元化する国家対戦争、国家の概念を超えるデジタルプラットフォーマーやデジタル通貨への国家の向き合い方など、変化していく国際政治や地政学を豊富な文献で語っている。

個人的には、乔良の「超限戦」と野口悠紀雄先生の「中国は世界を攪乱する」を合わせた内容に最近のコロナや米中紛争を取り入れて整理してくれたという感じで、頭の中が整理されてよかった。

やはり、あらゆる意味で、デジタル地政学のカギは中国なんだなあと思った。デジタル通貨、疾病対策、デジタル戦争、デジタル経済、国家統治、色々な意味で米国に挑戦する存在だし、デジタルの利活用だと覇権国家のほうが現時点で優位な点も見られる。

台湾をめぐって、日本は米国と並んで明確に異議を唱える立場になったけど、物理・デジタル双方にこれだけの力を持つ国と本当に対立するのは大きなリスクを持つ。どういう距離感で渡り合っていくのか、本当にチャレンジだと思う。

 一方で、最後の章は日本はどのようにしていくべきか、ということを論じているんだけど、今読むとちょっと日本を上げすぎかなーという気がしなくもない。経済・人口などのファンダメンタルな指標や、国家の立ち位置などには機会があるというのは分かるんだけど、ここに書かれているアジェンダセッティング・ルールメイキングをするような思想的なリーダーシップをとる人材がいないというのが一番の問題だと思うのよね。

 そこに文化や教育など、色々な問題が隠れていると思うのだが...。
 まぁ、僕も、政府のコロナ対応を見て、悲観的になっているだけかもしんないけど。

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