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半導体製造の国内回帰は可能か


今更日本企業で半導体の垂直統合回帰は無理だと思う。

先端デバイスの開発と生産は、大規模な資金投入と継続的な研究開発が必要。

 一言で、人工知能向けチップが大事だから国内回帰といっても、そのような最新チップを生産するような工場を立ち上げるために、台湾のTSMCは年間2兆5千億円近い投資を行っているのだが、これが可能な日本企業はあるんだろうか。

 一方、半導体材料や製造装置は世界シェアが高い企業も日本にはあるにはあるが、要素技術を買って集めればデバイスが作れるわけではないのは、あれだけ莫大な投資をしても先端プロセス工場が立ち上がらない中国を見ても理解できると思う。
 
 かつて在職していたNでは、年間500億円の開発費用を半導体を知らない新任社長が疑問視して、1年半ほど開発をストップした。これがきっかけで半導体技術が劣後し、半導体事業衰退を加速させてしまった。国際競争が激烈なので、たった1年半のビハインドも致命的なのだ。

 今、ロジック半導体と呼ばれる汎用的な半導体の最先端プロセスは完全に海外委託で、国内のプロセスは10年ほど遅れている。これをどうやってキャッチアップするのだろう。
 
 一言でいえば、日本企業は一度捨て去った垂直統合に回帰することは不可能であり、ファウンダリ委託モデルをどのように回していくかを考えたほうが良いと思う。
 経産省は、TSMCの工場誘致を考えているようだけど、最先端プロセスは日本企業の需要だけでは見合わないので、日本にあるという立地が、グローバルな需要を振り向けるのにどう有利なのかを示す必要がある。
 一方、フラッシュメモリ、CMOSデバイス、高圧用デバイスは、日本企業も垂直統合で競争力を保っているので、こちらの競争力をサポートすることが政府としては良いのではないかな。

 話題はずれるけど、半導体技術というと、よく「海外に技術が流出する!」とか、「日本の優れた技術を守れ!」みたいな論調になるけど、売り上げで見ても、技術的に見ても、ISSCCの論文数のような学術面で見ても、日本はもはや超一流とは言えない存在だということは自覚すべきだと思う。
  国際的にはどんどん存在感が大きくなって、一国の国力をも左右する存在の半導体産業なんだけど、国内的にはどんどん右肩下がりで存在感がなくなっているという危機的状況なのよね。


 なので、技術開発は、とにかくグローバルの優秀な頭脳を集められるような研究拠点を国内に作るのがよいと思う。もう、半導体技術において国粋主義はあまりメリットがない。中国からでも、韓国からでも、とにかく優秀な研究者や技術者が集まって快適に研究できるような拠点を作って、そこで日本のエンジニアも技術を学んだり研究したりしたほうが、長期的にはよいのではないだろうか。

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