嗚呼ビュッフェ(68日目)

デブなのでビュッフェが好きである。
旅行先でホテルの晩飯がビュッフェだとガッカリする、というような声を聞くことがたまにあるが、おれはわざわざそれを目的にするほどではないにしろそのビュッフェがわりと楽しみだったりする。
ビュッフェは美味い不味いで語るべきものではない。もちろん美味いに越したことはないが、ビュッフェの真の価値は背徳感という枷を外す仕組みだという点にこそある。

かっこよく言ってみたが要するにステーキとカレーと寿司、みたいな頭の悪い小学生が考えた理想の飯っぽい取り合わせがいとも簡単に実現できてしまうのがいいですよね。
そういうのってやろうと思えばファミレスとかでもできるけど、やらないじゃないですか。
費用だとか量だとか羞恥心だとか良識だとかに阻まれて。
でもビュッフェだとそういう障壁が、いかにもナチュラルに、すべてきれいに取り払われるわけですよ。
いくら食べても定額、少量多品種可、多量多品種も可。何周しても誰も見ちゃいない。

嗚呼過食者の楽園、それがビュッフェ。
パスタとカレー、唐揚げにマグロの刺身。欲望のおもむくままに、調和など気にせず好き放題皿に盛り、それを繰り返した3周目くらいに全種類制覇したいけどもう腹いっぱいだわーとか言いながらプチケーキとともに食後のコーヒーをすするのである。
カレーやフライドポテトなどの定番メニューはどこのビュッフェでもありつけるが、地方のホテルならちょくちょく地元の野菜や海産物が出ていたりするのもグッとくる。港町のホテルでマグロに並んでキンメダイの刺身なんかあったり、北海道のホテルでイクラが盛り放題だったりするともうたまらんよね。
「できるだけいろんなものをたくさん食べたいのになんで人間は1日3食分しか食べられないんじゃろかー」などということを四六時中考えている心身共に肥満体質の人間にとっては、ダイレクトアタックでその欲求を満たしにかかってくる、いわば萌え要素の塊なのである。
そこから人件費削減などのコスト意識や繁忙を乗り切るマネジメントが透けて見えることすら一周回って従業員の負担を減らすホワイト企業感にグッとくる雰囲気も若干あり、むしろWIN-WINの関係として受け入れる所存である。

ああもうビュッフェだなんてこまっしゃくれた言い方はやめだ。バイキングだバイキング。
日本初の食べ放題店の名前がバイキングだったのがその由来と聞くが、偶然にしてはなかなかよくできている話ではないか。
なぜならバイキングの本分は思うさま略奪することだからである。(バイキング知識のほぼ全てが『ヴィンランド・サガ』で構成されているおじさんの台頭)
その一方で、おれのような略奪者のみならず、あらゆる人間を受け容れる懐の深さがその真価とも言えるだろう。
子連れに祖父母連れ、肉派魚派パン派どんとこい。だいたい誰と一緒に行っても頼むものや量などで争いが起きないのもいいところであり、個人主義に基づく民主的社会の理想を体現している場と言っても過言ではないのではなかろうか。

とかなんとか熱く語りましたけど、連泊してると2日で飽きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?